迅雷上等♡─無欠版─

須藤慎弥

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⑭彼氏がキレました……

─雷─

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 ヤりてぇって。

 コトを急ぎたくねぇけどヤりてぇって。

 もし我慢の限界がきて性欲爆発しそうになったら、元祖達に頼るって。

 そういうキープが居るんだって。

 じゃあ俺……いらないじゃん。

 ヤり捨てポイの手前でポイされちまうかもって、全然笑えねぇんだけども。

 迅と翼の会話を聞いちまった俺は、腹の不快感をごまかすように裏門から逃げ帰った。

 気付いたら駅に居て、いつの間にかホームに突っ立って電車を待ってる。 ちなみに、どうやってここまでたどり着いたのかまったく覚えてねぇ。


「あー……っ、うるせぇ……」


 何も考えたくねぇのに、さっきからガンガン着信音が鳴ってる。

 初期設定のままの、どこで流れててもおかしくないメロディーがずーっとずーっと鳴ってんだ。

 賑やかというかうるさい人混みのなか、それは鳴り止む気配がない。

 会社帰りのリーマンやら部活で疲れきった学生連中やらが、みんな揃って自分のスマホを確認してんのを見ても……ちっとも笑えねぇ。

 着信音を響かせてる犯人は俺だ。 俺のポケットから、鳴ってる。

 いよいよみんなに申し訳なくなってきて、スマホを手に取った。

 犯人の犯人は、〝藤堂迅〟。

 畜生……ッ、いい加減にしろってんだ。

 俺はなぁ、今めちゃめちゃ気分が悪いんだぞ!


「なんだよ! うるせぇな!」
『やっと出た』
「──ッッ!!」


 呑気なのにイケボって卑怯すぎんだろ。

 ブチギレてソッコー通話切ってやりてぇのに、コイツは反則技を仕掛けてきやがるから厄介だ。

 でもキュンッとしたのは一瞬。

 すぐまた腹が気持ち悪くなった。

 せっかく……せっかく、久しぶりに迅と帰れるってウキウキルンルンだったのに。

 俺の気持ちが急降下したのは、ヤリチン伝説保持者とエロピアスヤリチンが重大なモラル違反しやがったせいだ。


『お前まだ教室いんの?』
「も、もう駅だっつの!」
『はっ!? 俺ずっと待ってたんだけど。 何してんの?』
「知るか! ヤリチン!」


 急降下を続ける気持ちに任せて、売り言葉に買い言葉だった。

 イジったり揶揄ったりじゃなく、ほんとの悪い意味で〝ヤリチン〟って言ったのは初めてかもしれない。

 だってムカついたんだもん。

 めちゃめちゃ頭にきてるし、腹と胸が気持ち悪りぃんだもん。

 だから、俺がキレるならまだしも、迅が少しずつヒートアップしてく意味が分かんねぇ。


『はぁっ!? なんでそんなキレてんだよ! てか勝手に帰るとかあり得なくねぇ!?』
「あり得んだよ! 俺は気まぐれなんだ! 雷にゃんだぞ! 気まぐれの申し子だ!」
『意味分かんねぇ……っ。 ったく……! 何なんだよ、マジで……!』
「俺はお前が分かんねぇよ!」
『あぁ!?』


 電話越しに、口喧嘩勃発。

 自分のスマホが鳴ってると勘違いしてた周りの人達は、通話中の俺が怒鳴り散らかしてんのを遠巻きに見てる。

 てかだんだん俺の周りに人が居なくなっていった。

 激ギレ時の迅の「あぁ!?」にビクついても、俺の怒りはそんなもんじゃ治まらねぇよ。

 俺はまだ、高待遇なセフレよりほんのちょっと迅に近付けただけの、(仮)カノジョだったのかもって思わされたんだぞ。

 イライラ通り越して泣けてくるわ……ッ。


『……そこに居ろ。 すぐ行く』
「イヤだ!! あっ、もう電車きたし! じゃあな!」
『おいっ、雷にゃ……っ』
「フンッ」


 気まぐれ雷にゃんは、迅の言葉を遮って切ってやった。

 スマホを雑にポケットにしまう。

 震える唇を噛み締めた。

 熱くなる目頭から見えるレールが歪んでく。

 あんな……あんな……ッ。

 あんなの、俺が戻ってくんの分かってて繰り広げる会話じゃねぇだろ……?


「……どうしたらいいんだよぉ……」


 大好きになった人が言い放った、いかにも〝物足りねえ〟と言わんばかりの発言は心臓にグサッときた。

 男同士だからじっくり慣らすって言ってくれてたし、俺に〝好き〟〝付き合って〟と言ったのも迅じゃん……。

 結局、迅を筆頭に野郎はみーーんな脳ミソがチン○で出来てんだ。

 彼女がいても浮気する男が決まって言うのは、〝彼女とセフレは違う〟。

 いや、それってどう違うんだよ。

 心と体は別もの……とかそういう話? 本能ってワードを使うのは都合良すぎだからな?

 マジで意味不。

 好きでもない人とエッチ出来るって、そんなのもはや一種の才能じゃん?

 ……どうせヤるなら、やっぱ女の方がいいとか言われんのかな。

 迅の野郎、慣らすのめんどい、とも言ってたし。 その辺あんまり聞こえなかったけど。


「ふ、ふぇッ……」


 俺はとにかく、ほっぺたがびしょ濡れになる前に帰るんだ。 すでにブレザーの袖が汚れてて、母さんにキレられるのは確定。

 それを振り切って布団みのむしになって、俺の気持ちをまんま表した真っ黒な夢を見てうなされるんだ。

 だからな、迅。

 そんなにしつこく電話してきても無駄なんだからな。

 俺が何に怒って、気持ち悪くなって、時間差で出てきた汗でほっぺたが濡れてんのか、ちゃんと気付いてくれよ。

 俺のことバカバカ言うけど、ほんとに大バカ野郎なのは迅、お前なんだぞ……!




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