必然ラヴァーズ

須藤慎弥

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39☆

39☆ 13・仮装パーティーはお開きへ・・・

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 会場内へ戻ってきたアキラとセナを、ケイタは喜び勇んで出迎え、ほろ酔いも手伝い二人に酒をグイグイ勧めている。

 ケイタと一緒に飲んでいた荻蔵も少しばかり頬が赤くなっていて、テーブルの上は空のグラスがいくつも並んでいた。


「二人でこんな飲んだのか?」
「うん。  アキラも持ってきたら?  あの人に頼めばモスコミュール作ってくれるよ」
「お、じゃあ行ってこよ。  セナは?」
「いらね。  ……あー、やっぱもらお。  一緒行くわ」


 酒が嫌いなセナの心変わりの理由を知るアキラとケイタは苦笑し、心の中でハルに合掌しておいた。

 きっとハルは、今夜も寝かせてもらえないだろう。


「あれ、ハルは?  戻ってこないんすか?」


 アキラはモスコミュール、セナはカルーアミルクを持って席へ戻ると、荻蔵はスパークリングワインを飲む手を止めた。


「葉璃ならもう部屋行った」
「薬の時間だから、って言ってたよな。  何の薬なんだ?  ハル、何か持病でもあんの?」
「えっハル君が薬飲んでる?  知らなかったー」


 ケイタも寝耳に水の話で、チーズを口に運ぼうとしていた手が止まる。

 あまり吹聴するとハルが嫌がるだろうとこれまで黙っていたセナも、先程ハル本人がアキラに話そうとしていたと聞いた事で口を開いた。


「成長痛で、痛み止め切れたら足痛くなんだよ」
「成長痛?」
「成長痛!?」
「あ~まだ継続中なんすね、成長痛」


 ハルが成長痛だと知って声を上げたアキラとケイタは、荻蔵がその事を知っているのにも驚いた。


「なんで荻蔵は知ってんの?」
「俺ら知らなかったのに」


 二人同時に、荻蔵とセナを交互に見て顔を曇らせる。

 一番身近に居る自分達が知らず、たまーにしか会わない荻蔵が知っていた事が何となく面白くなくて、不満を顕にした。


「年末のパーティーの時、葉璃寝てたろ? あっちのロビーで。 あの時痛みがピークだったみたいでな。  たまたまそこに居た荻蔵に薬調達してもらったから、事情話さないわけにいかなかったんだよ」


 甘いカルーアミルクを口に含んで飲み下すと、じんわりと優しいアルコール分がセナの体内に染み込み始める。

 この感覚がどうしても好きになれない。

 唯一美味しいと思えるカルーアミルクでさえ、この一杯にしておこうと思ってしまう。

 半分まで飲み干したところで、アキラとケイタにジッと見られていた事に気付いて苦笑した。


「あのな、お前らに隠しときたくて隠してたんじゃないからな?  葉璃が成長痛は恥ずかしいって言ってたから、あんまり外に漏らさねぇ方がいいかと思って……」
「それにしてもヒドイよね」
「あぁ、教えといてほしかった」
「まぁまぁ、アキラさん、ケイタさん。  抑えて抑えて。  ハルの恥ずかしいって気持ちは分かるじゃないっすか。  あんな可愛いサイズのハルが成長痛って、やっぱ言いふらしたくはないと思うけどな~」


 余計な一言も付いてはいたが、荻蔵のフォローにアキラとケイタの不満はいくらか消えた。

 ハルの性格上、そう言いそうだと思ったからだ。


「成長痛ってハルの歳でもなんの?」
「俺は中学ん時がヤバかったけどなぁ」
「葉璃の歳では稀らしい。  俺も中学がピークだったかな。  葉璃も俺らが味わったのと同じで痛みとだるさが同時に襲ってきてるんだろ。 痛々しいから早めに薬飲めって言ってあんだよ」


 そうなんだ、とアキラはそれでようやく納得した。

 先程くっついてきていたのも、足のだるさで無意識に寄りかかっていただけなのかもしれない。

 恭也にも無意識にくっついてしまうと言っていたが、あれも同じ理由ではなかろうか。


「成長痛かぁ。  ハル君、来年くらいには身長めちゃめちゃ伸びてたりして」
「えぇー、ハルはあのサイズが可愛いっすよね?」
「まぁあのサイズでかわいーとは思うけど、俺は葉璃なら何でもいい。  デカくなろうが巨漢になろうが、葉璃は葉璃だし」
「……お熱いっすね」


 セナの迷いのない惚気に、荻蔵はニヤニヤしながらグラスに口を付けた。



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