必然ラヴァーズ

須藤慎弥

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39☆

39☆ 14・仮装パーティーはお開きへ・・・

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 アキラが早くも二杯目のモスコミュールを取りに行こうとしたので、ケイタは自分の分のウーロンハイも一緒に持って来てと告げると、腰から短剣を抜いてテーブルに置いた。

 どうもさっきから、作り物とはいえ先端が脇腹に食い込んで痛かった。


「セナさん、ひとつ聞いていっすか? なんでそんなに夢中になれんの?  ぶっちゃけ、ついこの間まで俺より遊んでたじゃないっすか」


 突然の荻蔵のマジな問い掛けに、セナは危うくカルーアミルクを吹き出すところであった。

 ウーロンハイが届くまで手持ち無沙汰なケイタも、作り物の短剣を観察していた手を止めて興味深そうな話題に前のめりになる。


「お前それ絶対葉璃の前で言うなよ」
「言わねっすよ。  ハルを傷付けたいわけじゃないんで」


 アキラがモスコミュールとウーロンハイを手に戻ってきたが、セナと荻蔵の様子を見て黙って着席した。

 ウーロンハイを受け取ったケイタが小さく「ありがと」と言うと、アキラと再びセナの表情を窺う。

 いつものヘラヘラした態度を消した荻蔵と真剣な瞳がぶつかった事で、セナはゆっくりとグラスを置いた。


「…………惚れたからだよ」
「…………へぇ」
「一目惚れした。  そっから葉璃の人柄とか仕草とか表情とか、そんなの知っていくうちにもっと好きになった。  なんつーの?  甘ったるいラブソングあるじゃん。  あんな感じ」


 真顔で言うセナの前で、まだまだ遊び足りない荻蔵が不思議そうな顔で足を組んだ。

 セナが真剣にハルと付き合っている事は誰が見ても疑いようの無い事実で、実際にセナは人目があろうとハルを構い倒している。

 荻蔵の比にならないほど綺麗どころと遊びまくっていたセナの事は、部門の違う荻蔵にさえその情報は入ってきていた。

 なぜそれだけ無茶苦茶して公にならないのだろうと不思議だったが、セナが仕事関係では絶大な信頼を得ている事は去年のスキャンダルで思い知った。

 そんな女好きだったセナへ、荻蔵は最大の疑問をぶつける。


「ハル、あんなだけど、男……っすよね?」
「あ?  バカにしてんの?」
「してねーっす。  マジで。  俺、男抱けって言われても自信ないっつーか。  抵抗無かったんすか?」
「……荻蔵すごいな。  俺らでも聞けなかった事を」


 二人を見守っていたケイタは頬を引き攣らせ、同じような表情を浮かべたアキラをチラと見た。

 ウーロンハイに口を付け、改めて荻蔵の強心臓に感心する。 デリケートかつプライベートな質問を、敵対心を向けられている相手によく聞けるな、と。


「……抵抗なぁ。  無かったっつったら嘘になるけどな。  女にあるもんは無ぇし、女に無いもんはあるし」
「でしょ?」
「だから何って感じだけどな。  初めてヤッた時は死んでもいいと思うくらい良かった。  今もずっとそうだ。  好きな奴相手だとこんなすげぇんだって毎回思ってる」
「マジっすか?  やっぱ全然違う?」


 セナの隣に居る荻蔵は、さらにセナへと近寄った。

 いよいよ鬱陶しくなったのか、セナが眼帯を外しながら冷めた目で荻蔵をチラと見ると、カルーアミルクを飲み干した。


「何なんだよ、しつこいな」
「聞きたいんすよー!  あんだけ派手に遊んでたセナさんがって思ったら興味津々で!  ハルと付き合ってるって知ってからずっと聞きたかったんす!」
「そりゃ違うって。  気持ち入ってヤんのと、そうじゃないのは」
「そうなんだー……」


 そんな最高のセックスしてみてぇな~とぼやく荻蔵を、まずは私生活を改めてから言えよとその場の三人は同時に思ってしまった。

 荻蔵は三ヶ月おきほどの早いスパンでスキャンダルが暴露されているので、どれだけ脇が甘いのだろうとセナは笑った。


「お前は手当り次第過ぎなんだよ」
「セナさんにだけは言われたくねぇっす!」
「俺はあんな誰が見てるか分かんねぇとこでメシ食ったりなんか、一回もした事ねぇよ」
「いや、セナ。  今ここにハル君いないから言うけど、マスコミずっとセナ張ってたから全部バレてると思う」
「あーまぁ……それは世に出てねぇから闇に葬っとけ」


 ケイタの指摘に苦笑するセナは、もういいだろと過去の話をほじくり返される事を嫌った。

 荻蔵が遊びまくっている事を、セナも過去が過去なだけに多少なりとも擁護したい気持ちはあっても、今がとても幸せなのでそんな事は出来ないようだった。


「てかさ、なんでお前葉璃に構うわけ?  俺の前でも平気で」




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