234 / 541
39☆
39☆ 14・仮装パーティーはお開きへ・・・
しおりを挟むアキラが早くも二杯目のモスコミュールを取りに行こうとしたので、ケイタは自分の分のウーロンハイも一緒に持って来てと告げると、腰から短剣を抜いてテーブルに置いた。
どうもさっきから、作り物とはいえ先端が脇腹に食い込んで痛かった。
「セナさん、ひとつ聞いていっすか? なんでそんなに夢中になれんの? ぶっちゃけ、ついこの間まで俺より遊んでたじゃないっすか」
突然の荻蔵のマジな問い掛けに、セナは危うくカルーアミルクを吹き出すところであった。
ウーロンハイが届くまで手持ち無沙汰なケイタも、作り物の短剣を観察していた手を止めて興味深そうな話題に前のめりになる。
「お前それ絶対葉璃の前で言うなよ」
「言わねっすよ。 ハルを傷付けたいわけじゃないんで」
アキラがモスコミュールとウーロンハイを手に戻ってきたが、セナと荻蔵の様子を見て黙って着席した。
ウーロンハイを受け取ったケイタが小さく「ありがと」と言うと、アキラと再びセナの表情を窺う。
いつものヘラヘラした態度を消した荻蔵と真剣な瞳がぶつかった事で、セナはゆっくりとグラスを置いた。
「…………惚れたからだよ」
「…………へぇ」
「一目惚れした。 そっから葉璃の人柄とか仕草とか表情とか、そんなの知っていくうちにもっと好きになった。 なんつーの? 甘ったるいラブソングあるじゃん。 あんな感じ」
真顔で言うセナの前で、まだまだ遊び足りない荻蔵が不思議そうな顔で足を組んだ。
セナが真剣にハルと付き合っている事は誰が見ても疑いようの無い事実で、実際にセナは人目があろうとハルを構い倒している。
荻蔵の比にならないほど綺麗どころと遊びまくっていたセナの事は、部門の違う荻蔵にさえその情報は入ってきていた。
なぜそれだけ無茶苦茶して公にならないのだろうと不思議だったが、セナが仕事関係では絶大な信頼を得ている事は去年のスキャンダルで思い知った。
そんな女好きだったセナへ、荻蔵は最大の疑問をぶつける。
「ハル、あんなだけど、男……っすよね?」
「あ? バカにしてんの?」
「してねーっす。 マジで。 俺、男抱けって言われても自信ないっつーか。 抵抗無かったんすか?」
「……荻蔵すごいな。 俺らでも聞けなかった事を」
二人を見守っていたケイタは頬を引き攣らせ、同じような表情を浮かべたアキラをチラと見た。
ウーロンハイに口を付け、改めて荻蔵の強心臓に感心する。 デリケートかつプライベートな質問を、敵対心を向けられている相手によく聞けるな、と。
「……抵抗なぁ。 無かったっつったら嘘になるけどな。 女にあるもんは無ぇし、女に無いもんはあるし」
「でしょ?」
「だから何って感じだけどな。 初めてヤッた時は死んでもいいと思うくらい良かった。 今もずっとそうだ。 好きな奴相手だとこんなすげぇんだって毎回思ってる」
「マジっすか? やっぱ全然違う?」
セナの隣に居る荻蔵は、さらにセナへと近寄った。
いよいよ鬱陶しくなったのか、セナが眼帯を外しながら冷めた目で荻蔵をチラと見ると、カルーアミルクを飲み干した。
「何なんだよ、しつこいな」
「聞きたいんすよー! あんだけ派手に遊んでたセナさんがって思ったら興味津々で! ハルと付き合ってるって知ってからずっと聞きたかったんす!」
「そりゃ違うって。 気持ち入ってヤんのと、そうじゃないのは」
「そうなんだー……」
そんな最高のセックスしてみてぇな~とぼやく荻蔵を、まずは私生活を改めてから言えよとその場の三人は同時に思ってしまった。
荻蔵は三ヶ月おきほどの早いスパンでスキャンダルが暴露されているので、どれだけ脇が甘いのだろうとセナは笑った。
「お前は手当り次第過ぎなんだよ」
「セナさんにだけは言われたくねぇっす!」
「俺はあんな誰が見てるか分かんねぇとこでメシ食ったりなんか、一回もした事ねぇよ」
「いや、セナ。 今ここにハル君いないから言うけど、マスコミずっとセナ張ってたから全部バレてると思う」
「あーまぁ……それは世に出てねぇから闇に葬っとけ」
ケイタの指摘に苦笑するセナは、もういいだろと過去の話をほじくり返される事を嫌った。
荻蔵が遊びまくっている事を、セナも過去が過去なだけに多少なりとも擁護したい気持ちはあっても、今がとても幸せなのでそんな事は出来ないようだった。
「てかさ、なんでお前葉璃に構うわけ? 俺の前でも平気で」
12
お気に入りに追加
314
あなたにおすすめの小説
【完結】嘘はBLの始まり
紫紺
BL
現在売り出し中の若手俳優、三條伊織。
突然のオファーは、話題のBL小説『最初で最後のボーイズラブ』の主演!しかもW主演の相手役は彼がずっと憧れていたイケメン俳優の越前享祐だった!
衝撃のBLドラマと現実が同時進行!
俳優同士、秘密のBLストーリーが始まった♡
※番外編を追加しました!(1/3)
4話追加しますのでよろしくお願いします。
Sweet☆Sweet~蜂蜜よりも甘い彼氏ができました
葉月めいこ
BL
紳士系ヤクザ×ツンデレ大学生の年の差ラブストーリー
最悪な展開からの運命的な出会い
年の瀬――あとひと月もすれば今年も終わる。
そんな時、新庄天希(しんじょうあまき)はなぜかヤクザの車に乗せられていた。
人生最悪の展開、と思ったけれど。
思いがけずに運命的な出会いをしました。
幸せの温度
本郷アキ
BL
※ラブ度高めです。直接的な表現もありますので、苦手な方はご注意ください。
まだ産まれたばかりの葉月を置いて、両親は天国の門を叩いた。
俺がしっかりしなきゃ──そう思っていた兄、睦月《むつき》17歳の前に表れたのは、両親の親友だという浅黄陽《あさぎよう》33歳。
陽は本当の家族のように接してくれるけれど、血の繋がりのない偽物の家族は終わりにしなければならない、だってずっと家族じゃいられないでしょ? そんなのただの言い訳。
俺にあんまり触らないで。
俺の気持ちに気付かないで。
……陽の手で触れられるとおかしくなってしまうから。
俺のこと好きでもないのに、どうしてあんなことをしたの? 少しずつ育っていった恋心は、告白前に失恋決定。
家事に育児に翻弄されながら、少しずつ家族の形が出来上がっていく。
そんな中、睦月をストーキングする男が現れて──!?
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
無自覚両片想いの鈍感アイドルが、ラブラブになるまでの話
タタミ
BL
アイドルグループ・ORCAに属する一原優成はある日、リーダーの藤守高嶺から衝撃的な指摘を受ける。
「優成、お前明樹のこと好きだろ」
高嶺曰く、優成は同じグループの中城明樹に恋をしているらしい。
メンバー全員に指摘されても到底受け入れられない優成だったが、ひょんなことから明樹とキスしたことでドキドキが止まらなくなり──!?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる