必然ラヴァーズ

須藤慎弥

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39☆

39☆ 11・仮装パーティーはお開きへ・・・

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 年末のパーティー同様、売れっ子達の中には成人に満たない女性アイドルや俳優達が居るため、その日は二十一時を目処に帰宅を命じられた。

 先に迎えが来て少し前に帰ってしまった恭也を、会場の外まで出て行ってしょんぼりと見送る後ろ姿が、何だか耳まで萎れているように頼りなげに見えて、アキラはそっと近付いた。


「ハル、ハルは俺ら保護者代わりが居るからもう少し居ても大丈夫だと思うぞ」
「あ、アキラさん……」
「恭也帰って寂しい?」
「はい……。  ダメって分かってるんですけど、どうしても恭也を頼ってしまいますから……。  今日は聖南さん達いるしもう少し居られるのかと思ったら、お迎え来てて……」
「そっか」


 恭也もあと少しは残ってくれるのだろうと期待していたハルは、予想が外れて一人ぼっちになってしまったとしょんぼりしているようだ。

 記者達から逃げた二人は、あの後色んな人から声を掛けられまくり、随分疲弊してテーブル席へと戻ってきた。

 恭也は相変わらずの無表情だったが、ハルの顔にはしっかりと「疲れました」と書かれていて。

 「葉璃をこんな目に遭わせたのはどいつだ!」と息巻いたセナを止めるのが大変だったのだ。

 声を掛けられてもまともに受け答えが出来ず、そのほとんどを恭也に任せっきりにしたハルは自らを責めているようにも見えた。

 頼ってはダメだと分かってる。

 その言葉にすべてが凝縮されていた。


「なぁハル。  人には向き不向きってあるんだ。  恭也は人見知りだけど、全然話せないわけじゃない。  緊張しない質だっていうのも俺達は知ってる。  けどハルは違うだろ?  人前に出ると足が竦むし、知らない人とは目も合わせられない。  なら二人が補い合えば大丈夫じゃん?」
「それ恭也からも言われました。  俺は緊張しぃだし、極度の人見知りだけど、ダンスだけは敵わないからそこは引っ張ってって。  二人で補い合えばいいでしょって」
「じゃあそんな凹む事ねぇよ。  ハルのその人見知りも、歳重ねるうちにだんだん無くなっていくよ。 必ず」
「ほんとですか?  俺克服できる気がまったくしないんですけど……」
「ハルはあのセナを叱り飛ばせるんだぞ?  相当肝は座ってる。  しかも影武者も完璧だった。  どこに不安要素がある?」
「………………」


 よほど不安なのか、まだ「うーん…」と唸るハルのうさ耳はまだ萎れたままだ。


「……夜はまだ冷えるな。  中入ろうや」


 ハルはきっとこの後セナとここに泊まるのだろうから、もうしばらく大人達の中に居なくてはならない。

 セナは現在、社長と副社長に捕まって何やら話し込んでいたし、ケイタは荻蔵とお酒を楽しんでいるしで、ここにはアキラしか居なかった。


「んー……」


 戻るのヤだな、と言葉にしないまでも、ハルはその場から動こうとしない事でそれを望まない意思を示している。


「じゃあロビーでセナを待と。  そんな格好で外居たら風邪引くよ」
「…………はい。 ……アキラさん、ありがとうございます。  励ましてくれたんでしょ?」


 やはり肌寒さを感じていたのか、気持ち密着してきている気がしないでもないハルが間近から見上げてきた。

 ……少しだけ、セナの気持ちが分かった。

 この瞳で見上げられると、ついつい頭を撫でてしまいたくなる衝動に駆られる。

 しかも今ハルは、アキラの大好きな映画のキャラクターに扮しているのだから尚更だ。


「あ、あー、まぁ。  でもハルは俺が今言った事ちゃんと自分で分かってるだろ。  だから凹むんだろうし」
「そうかもしれないです。  ……分かってるんです、ちゃんと」
「…………さ、寒いの?」
「何でですか」
「いや……なんかくっついてくるから」


 ロビーへと入ろうと歩き出したはいいが、ハルはピタリとアキラに擦り寄り同じ速度で進んでいた。

 指摘されたハルは慌てて距離を取り、うさ耳を揺らして謝っている。


「あ、すみません。  無意識でした……。  嫌でしたよね、すみません」
「嫌とかじゃないけど……セナに見られたら誤解されそうで」
「ほんとすみません……。  これ恭也にもよくやっちゃうんですよね」


 ……これを今聞いているのが、自分で良かった。

 セナよりも一緒に居る時間の長い恭也にも無意識に引っ付いてしまうなど、セナが聞いたらまたもや嫉妬の鬼と化しそうだ。


「やめた方がいいよ、勘違いされる」
「勘違い?」
「ハルにそんな気ない奴でも、気を持たせちまうって事。  多分だけど、セナと同じような背格好の奴に無意識にやっちゃうんじゃない?  今季節的にまだ寒いしさ、余計に」


 ハルは人見知りから解けて心を許すと、ジーッと目を見てきたり体を寄せてきたりが出来るようになるらしい。

 これはセナでなくても心配になるはずだ。


「…………??」


 あげく、ハルには自覚症状がなさ気である。

 首を傾げながら「またやっちゃった」と溢している辺り、アキラの言った意味もきっと分かっていない。

 これはケイタと成田とのお節介同盟にもう一人くらい加えておかないといけなさそうだ。

 例えば、ハルにやたらと干渉してくる荻蔵斗真、など適役ではないだろうか。




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