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39☆
39☆ 10・大塚事務所主催、仮装パーティー♡
しおりを挟む会中盤、社長が壇上にて「来年度もよろしく」とその場に居た者達にそう手短な挨拶をすると、新聞社二社のみの出入りが許された。
毎年パーティー終盤にこの二社だけがこの場を取材する事を許されていて、テレビ局はシャットアウトされている。
懇意にしている新聞社なのか社長との癒着なのか、そこは大人の事情なのだろうと、アキラは入り口から腕章を付けて入ってきた数名の記者とカメラマンを遠くから眺めていた。
ここぞとばかりに仮装した売れっ子達を撮りまくっているカメラマンが、セナ達が座るテーブルを見つけるや否や大慌てで走ってきた。
「わ、きたきた! 荻蔵さん居るから悪目立ちしたんだ」
ケイタがそう言って笑っているが、そもそもここにCROWN三人が固まり、二股報道が過熱気味の荻蔵も居れば目立たないはずが無かった。
「CROWNと荻蔵さん! 撮っていいですか!」
「ダメ」
「セナさん~そこを何とか!」
「撮るなら荻蔵とは切り離して撮ってよ。 こいつ悪いイメージしかないじゃん」
「あっひでぇ! そんな事ないですって、一応色々賞も貰ってるし!」
「色々ってのが怪しい!」
「それ荻蔵の妄想なんじゃないの?」
普段はクールで近寄りがたい印象で売っている荻蔵を、CROWNの三人がけちょんけちょんに言うので、記者側もその謎の関係性に戸惑いながら構わず写真を撮り続けている。
ハルと恭也は揃ってそのテーブルから空気のごとく逃げようとしていたのを、セナではなくカメラマンが見付けて引き止めた。
「あ! そこの二人はもしかして、夏にデビューするっていう?」
「よく分かったな。 もしかしてもう情報流れてんの?」
ハルと恭也を見てすぐさまデビューと結び付いた事にセナは驚いた。
「若干ですけどね。 年末のパーティーに出席した者がいて、そこから」
「なるほどな」
まだそーっと逃げようとしていた二人は、違いますと背中で匂わせて向こうを向いたまま何やらヒソヒソと喋っている。
「おーい、数枚でいいから撮らせてくれないかなぁ? ……あっ!」
カメラマンが声を掛けた瞬間、恭也の手を取ったハルは脱兎のごとく駆けて行った。
それはまさにうさぎのように俊敏だった。
「あ~ぁ、逃げられちゃった」
「まだ二人はデビュー前なんだから勘弁してあげて下さいよ」
「そうですよ、特にあの二人は人見知りの塊なんだから」
カメラマンは残念そうに、駆けてゆく後ろ姿を数枚それに納めてカメラを下ろした。
二人の姿は仮装した者達に紛れて見えなくなってしまい、心配でしょうがないセナは立ち上がってハルのうさ耳を探す。
アキラとケイタは、記者達が入って来るなり二人の顔が引き攣ったのを見逃さなかったので、すかさずフォローを入れてやった。
すでに記者とカメラマンの存在など忘れてハル探しに余念がないセナは頼りにならない。
「え、そうなの? CROWNのバックアップだって聞いてたからすごく派手な子達なのかと思ったよ」
「二人はCROWNとはちょっと毛色が違いますよ」
ふっと知ったような顔で言いながらハルの席に腰掛けた荻蔵に、セナがまたも嫌そうな顔をして「立てよ」と不機嫌丸出しで声を掛けた。
「なんでお前がそこ座るんだよ。 もう用は無いだろ、あっち行け」
「はいはい……。 ハル戻ってきたらまた俺も戻ってきますよー?」
「戻ってこなくていい!」
「……荻蔵ってハート強いね」
「だな。 セナがあれだけ敵意剥き出しなのに」
セナの怪訝な態度も意に介さない荻蔵の強心臓は、そりゃあ二股報道でバッシングを浴びたくらいへっちゃらだよな、と二人は荻蔵とセナのやり取りを見ていて思った。
そしてハルも決して荻蔵に懐いているわけではない、むしろ邪険に扱っているのだが、それすら面白がっているように見えた。
荻蔵はなぜあんなにハルハル言うのだろう。
セナと付き合っている事も承知で、しかもハルを手に入れたいと瞳をギラギラさせているわけでもない。
アキラとケイタはもちろん、セナすらもその答えは知らないままであった。
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