必然ラヴァーズ

須藤慎弥

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 昼は学校、夕方はレッスン、土日は午前午後のカリキュラムをみっちりと作られて、まさに休みなしで俺はデビューに向けて奮闘中だった。

 CROWNのツアー同行の件は春から動くらしくて、目下 俺と恭也はデビューのための基礎を構築している最中だ。

 レコーディングした自分達の曲を聴かされた時は顔から火が出そうなほど照れ臭かったけど、サビで遠くに聖南の声を見つけて、恭也と顔を見合わせて微笑み合った。

 聖南の声を乗せるかどうかをプロデューサー二人と話していた事を思い出して、乗せる事にしたんだとそこで初めて知って嬉しかった。

 電撃的なデビュー話からトントン拍子にここまで来てるけど、聖南の曲で世間に出る事、アキラさんとケイタさんも交えたCROWNのバックアップもある事で、今の俺にはそんなに大きな不安はない。

 俺には分不相応だと思ってた。

 世に出て、大勢の人の前で歌って踊るなんて、俺には絶対に出来るはずないって。

 でも、大塚事務所のレッスンを受けてて、少しは自信を持ってもいいかもって思った。

 歌はまだまだだけど、ダンスに関しては誰にも負ける気がしない。

 他のレッスン生と同じメニューをこなす事があって、講師から課題の振り付けを一時間でマスターするようにって言われても何ら難しいとは思わなかった。

 聖南が言ってくれたように、講師からも、俺は振り付けを覚えるのが早くて動きも周りに比べて飛び抜けてると言ってもらえた。

 決して世に出たくてダンスを習ってたわけじゃないけど、中学二年からなんの気無しに始めた事が才能の開花に繋がるなんて思ってもみなくて。

 信じられないほどに周りも優しく接してくれているし、それに甘んじないように今は着々と自信を付けて、恭也と並んでも平気になるくらい、頑張らなきゃいけない。

 短い冬休み明けから毎日クタクタで、聖南との連絡も疎かになるほど忙しなく過ごしていた。

 今日は学校が休みだから、午前と午後のレッスンをこなして帰宅したのは七時頃だったと思う。

 疲れ果てて、長々とお風呂に入ってたら眠くてたまらなくなってベッドに直行した。

 そして気が付いたら聖南と電話で話してて、夢だったらどうしようと不安を覚えつつ外で待ってると、本当に迎えに来てくれた。

 久しぶりに会うと恥ずかしくて直視出来ない聖南が、俺のスマホで春香と会話してるのを聞いてやっと、夢じゃないと実感出来たところだ。


「葉璃? どした、腹痛てぇの?」


 俺の動きに敏感な聖南がチラと視線を寄越してきた。

 晩ごはんを抜いたままで薬も飲めてない事に気付いて、左手でそっとお腹を擦ってたのを見られていたらしい。

 どうしよう……痛いんじゃなくて、お腹空いただけなんだ。

 もう聖南の家まで目前で、俺はそれを言おうかどうしようか迷った。

 でも一度空腹を感じると待ってましたとばかりにお腹がグーグー鳴り始めるしで、このまま何も食べないで眠れる気はしない。


「あの……今日晩ごはん抜いててですね……お腹空いちゃった……」
「は!?  メシ抜くとかダメじゃん!  何か食お、何食いたい?」
「お腹に入れば何でもいいです、ほんとに」


 打ち明けた俺も驚くほどギョッとされた。

 聖南が自宅方面から街の方へウインカーを出したのを見て、思い出したように俺は「何でもいい」発言を取り消す。


「あ! ごめんなさい、こないだの場違いレストランみたいなとこは嫌です!」
「場違いレストラン?  あー、年越しのな。  あそこでもいいけど」
「嫌ですってば!  今日なんか俺パジャマですよ!」
「いいじゃん、逆に最先端っぽくて」
「ま、またからかってる……!」


 聖南は俺をからかうのもすごく好きみたいで、たまにこうしてニコニコしながら意地悪を言う。

 あの緊張感たっぷりな空間で食べるのは俺にはまだ早過ぎる。 美味しそうな料理が無味だった事を思うと、すごく損をした気持ちにもなるし、聖南にも申し訳ない。


「あはは、ウソウソ。  店入んのが嫌なら、またテイクアウトしよっか。  和洋中どれがいい?」
「ん~和食かなぁ」
「おっけー」


 この間テイクアウトして来てくれた料理がとても美味しくて、あの店がいいなぁと思ってたから良かった。

 どこかお店に入るにしても、俺はパジャマ姿にダッフル羽織っただけだから、聖南の気使いはすごくありがたかった。

 寝ぼけながら、電話越しに「会いたい」なんて言っちゃって鬱陶しがられたらどうしようかと思った。

 ……ダメ元でワガママ言って良かった。





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