必然ラヴァーズ

須藤慎弥

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 聖南が眠るにはまだかなり早い時間ではあったが、隣のお子様から放たれるα波によって満ち足りた睡眠が取れそうだ。

 葉璃とのいざこざで眠れぬ日々を送る前から、過去に縛られている聖南は睡眠障害気味だった。

 初夜は逃げられてしまったがあの日でさえもよく眠れた事を思うと、今日はどれほど幸せな夢が見られるのだろうと心がはしゃいでしまう。


「おやすみ、葉璃」
「……おやすみ、なさい……」


 虚ろな返事に笑みを濃くした聖南は、葉璃の髪を撫でてやりながら自らもゆっくり瞳を閉じる。

 ここしばらくは深い眠りに付く事も少なく、先程の食事もそうだが、胃に入れば何でも同じという何とも味気ない生活一色だった。

 すでにスヤスヤと寝息を立て始めた葉璃を抱き枕状態でガッシリと抱くと、葉璃の全身から聖南の香りがして言葉にならないほど嬉しくなる。

 思えば、誰かと一夜を共にはしていても、夜を明かしてまで一緒に居た相手は居なかった。

 場所はいつもホテルで、セックスをしたらシャワーを浴びてさようならだ。

 幼い頃から一人寝が得意になってしまっていて、誰かが横にいて一緒に眠るという状況が考えられなかった。

 熟睡出来ない毎日が積もり積もると、自身の意図しない記憶喪失まで起こる。

 ツラくはなかった。

 独りで居ることも、身の回りのすべてを自分で行なわなければならない事も、何もかもそれが当たり前だったからだ。

 愛された事のない自分は一生誰かを愛す事は出来ない。

 愛し方が分からない。

 聖南は悲観するというよりも、恋愛そのものを諦めていた。

 この腕の中で、一日たりとも頭から離れなかった葉璃の存在を未だにどう愛せばいいか分からないが、一つだけ確かな事がある。


『もう、……離してやれない』


 どれだけ聖南から逃げようと、葉璃も「好き」だと言ってくれたからには二度と離れる事は許さない。

 良い夢を見たくて寝ようと頑張るも、心が落ち着かない聖南は長い足をモゾモゾと動かした。

 我慢出来ずに目を開けた聖南は、誰にも咎められないのをいい事に葉璃をこちらに向かせ、愛おしくてたまらない寝顔をマジマジと見詰める。

 葉璃に「怖い」と言われてしまった、あの凝視だ。


『……ついに手に入った……。 出会ってからまだそんな経ってねぇんだけどなー……色々濃すぎて十年越しくらいの感覚だわ』


 呟いた聖南も、安心しきったように眠る葉璃も、たった数カ月の間にたくさん成長した気がする。

 お互い恋に不器用で、不慣れで、二人で空回りしていた勿体無い期間もあった。

 今こうして腕の中で眠る葉璃を見詰めていられる喜びを噛み締めながら、寝ている葉璃の唇にチュッと一度キスをして、聖南はまた瞳を閉じる。

 今度こそ聖南も、深い深い眠りにつく……などとは到底なれなかった。

 寝顔にキスをしたのがよくない。

 バスルームで抱いたあと、頬を真っ赤に染めてのぼせていた葉璃には手を出すまいと「良い彼氏」を演じていた聖南の内側で、獣がじわじわと目を覚ます。

 おもむろに、寝ている葉璃のパーカーの下からズボッと手を入れた。

 下は下着しか履かせていないので、簡単に素肌に到達する。

 平らな胸や腰、肩、背中、滑らかでスベスベした全身をくまなく撫で回していると、次第に獣の存在感が増す。


『かわいー恋人が隣ですやすや寝てんだ。 手出すなって方が無理だよな、うん』


 自身に言い訳した聖南はフッと口元だけで笑うと、葉璃の見た目通り可愛らしい小さな乳首を探し当て、指の腹で転がしていった。

 寝ている葉璃を叩き起こすような真似だと分かってはいるものの、聖南にとって初恋が実った初夜に大人しくなどしていられなかったのである。

 だんだんと存在感を増してくる乳首を強弱を付けながら摘んでいると、寝ているはずの葉璃が「んっ…」とわずかに甘い声を上げた。

 その声が、昂ぶる聖南のスイッチを押してしまった。

 獣が完全に目覚めた。





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