必然ラヴァーズ

須藤慎弥

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 アキラが動いてくれようとしていた葉璃の件だが、どうしても直接葉璃との会話を聞きたくて、聖南は仕事終わりのアキラを半ば強引に自宅に招いた。

 ここに引っ越してくるまでは、事務所が用意したこじんまりとしたワンルームマンションだった。

 あの独りで居過ぎた自宅から一刻も早く出たかった聖南は、立地や広さなど何も気に留めず、むしろワンルームの方が居心地が良かった。

 さすがにセキュリティや体面もあって色々探したあげく気に入ってここに決めたものの、未だ広さにはまったく慣れない。


「このセナん家来るの初めてだなー。 こんな広いとこ住んでたら寂しくならねぇ?」
「寂しい」
「ハルが居なくて、だろ? もうそうやって凹むのやめろって。 連絡もしない、会いにも行かないって、セナが言ったんだろーが。 とりあえず弁当食お、セナマジで痩せてきてる」


 葉璃との別離から十日ほどが経つ。

 聖南は明らかに生気がなくなってきていて、同時に食欲もなく、何もする気が起きないので運動もほとんどしていない。

 あまり食べていないせいか顔色も悪い気がして、アキラは買ってきた弁当を強引に持たせてダイニングテーブルの椅子に座り、先に食べ始めた。


「食欲ねぇもん」
「いいから食え。 食わないとハルに電話しないからな」
「……分かった、食うよ」


 アキラの言葉に肩を竦め、聖南は渋々と弁当を胃に流し込んだ。

 味などしない。

 最近は起きていても色を感じなくなっている気がして、ヤバイかもと自分では分かってはいるが、このまま葉璃と元に戻れなかったらどうしようとそればかり考えている。

 まだまだ幼い葉璃の心情は理解しているつもりだけれど、時間をくれと言われたその ″時間″ とはどのくらいの期間なのかも分からないので、途方に暮れていた。


「よし、食ったな? じゃ早速電話してみっか。 今日土曜だからこの時間でも平気だよな」
「おー。 あ、イヤホンして」


 そこまでする?と苦笑しながら、アキラは鞄からコードレスのBluetoothイヤホンを取り出した。


「一から説明すんの面倒だろ、俺も直接聞いた方が話早い」
「……はいはい。 ほら、左」


 実際は葉璃の声が聞きたいというのが本音だが、アキラもそれを承知の上だった。

 前々から聖南の心が不安定なのは知っていたけれど、これほどまで落ち込み、落胆する聖南を一度も見た事がなかったせいで、アキラも何とか協力してやりたい一心だ。


『もしもし?』


 呼び出し音の後に続いた葉璃の声を聞くや、聖南は瞬時に両手で顔を覆って、あふれ出る愛しさに悶えた。


「あ、俺。 アキラだけど」
『あ……はい、お疲れ様です』
「突然ごめんね。 あーっと、どっから話せばいいかな。 ハル、デビューするって話聞いたんだけど、本当?」
『……なんだ、……てっきり聖南さんの話かと思いました』
「それは当人同士の問題だろ? 俺が口出す事じゃないからな」


 葉璃の口から聖南の名前が出た事でビクッと体が揺れたが、それよりも何よりも、聖南が知っている頃より電話口にいる葉璃は口調が少しだけ明るいような気がした。


『て事は、アキラさん全部知ってるんですね』
「全部ではないよ。 聖南は大事なとこ話さないし」
『そっか……。 すみません、話脱線して。 俺がデビューする話、ですよね? それなら、俺もついこの間聞いたところで、正直何が何だか……』
「そうなの? あ、ハルってmemoryの事務所に入ってるんだっけ?」
『いえ、入ってないです。 以前からそういう話を事務所の方からされてはいましたけど、断ってました』
「そうなんだ。 じゃあそのデビューの話は誰から聞いたの?」
『それは友達の恭也から聞きました。 これ、秘密ですよ? その……恭也がデビューするらしいって聞いて、ユニットのもう一人が俺だって事が分かったんです』
「友達の、……恭也……?」


 聞き覚えのある名前に、聖南とアキラは示し合わせたかのように顔を見合わせた。



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