必然ラヴァーズ

須藤慎弥

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 ヒヤヒヤしながら事の次第を見守っていたというマネージャーの成田に、移動車として借りていたらしいセダンに会議後すぐさま呼び寄せられた。

 運転席に成田、助手席にケイタ、後部座席にアキラと聖南が乗車し、成田はまだハラハラが治まらないようで声を震わせながら振り返ってきた。


「大丈夫かっ? あんな大見得切って」


 すでに落ち着き払っている聖南は、サングラスを掛けながら成田に心配するなと笑い掛ける。


「大丈夫。それよりアキラとケイタ好き放題言ってたけど、怖いもの知らず過ぎ」
「だってあのオヤジ等めちゃくちゃ腹立ったんだよ! な、アキラ」
「あぁ。マジで人生で初めてあんなキレたかも。セナがやってきた事ぜんぶ知ってるくせにあの態度はなんだ? ま、セナが悪いんだけど」
「そうそう、俺がぜーんぶ悪りぃの。だから何も言わなくて良かったのに。……嬉しかったけどな」


 いつもの調子が戻ってきた三人を、成田はホッと胸を撫で下ろし眺めた。

 結局、決定権を持つ社長が聖南の意見を百%受け入れる形で会議は終了した。

 これまでの聖南の事務所への貢献度と、これからの収益拡大を期待し、さらに聖南に特別に目をかけている大塚社長は幹部達に異論を唱えさせなかった。

 すべては聖南の仕事への姿勢が評価された結果であり、さらにはイメージを気にして今まで黙認していた事務所としてのけじめもあっての事だろう。


「セナが背中押してくれなかったら、俺はCROWNと演技の二足のわらじを履こうなんて思わなかったんだから、本当の事言っただけ」


 助手席のケイタは恥ずかしそうに前を向いたままそう呟き、聖南も照れくさくてフッと笑うに留める。

 二人は聖南に感謝している、恩があると言外に言ってくれているが、聖南もそれは同じだった。

 CROWN結成前から共に芸能界で育ってきた二人が傍に居てくれたからこそ、聖南は落ちこぼれず、この場所で頑張れているのだ。


「じゃあひとまず、セナの傷の完治を待って新曲の本録り、それから振付け練習に入ろう。アキラとケイタは通常通りな。今回の件で記者会見や弁明の場を持ったりはしないらしいから、アキラとケイタには現場で色々面倒かけるかもしれないけど、よろしく」
「悪りぃなマジで。俺が直接弁解に行けりゃあいんだけど……」


 聖南は自身も申し出たように、傷が完治するまで謹慎するとそう決めているので、二人にだけ重荷を背負わせることになってしまうのが気掛かりだ。

 現場には出向けなくても、度々掛かってくる各局のお偉いさん方からの電話にはきちんと応対しているので、問題ないと思いたい。


「何言ってんだよ。そんなのセナが怪我した日から追及されてる。交わすの慣れた」
「俺も俺も! でもやっぱ、マジで報道されてるみたいにセナを悪く言う人はこの業界にいないよ? ついに表に出たかってみんな笑ってた」
「俺んとこもだよ。セナの夜遊び知らねぇ人居なかったよな」
「基盤は俺らがしっかり守っとくから、セナはとにかく傷治す事に専念しなって」


 アキラとケイタがそう強く言ってくれるので、今まで独りで抱えていた気がしていたCROWNの看板を、二人に任せなければと意識を改めざるを得なかった。

 聖南は年上で芸歴も長く、そのため独りで何もかもを背負っていた気がしていた。

 目まぐるしいCROWNとしての日々はアキラとケイタの存在あってこそだと、二人にもっともっと頼っても良かったんじゃないかと、今さらながらに気付かされる。

 それは主に精神的な面で、だ。


「あ、ハルにはちゃんと弁解しとけよ? ニュースはある事ない事言ってるみたいだから」


 サングラスの奥で優しく微笑み、安堵していた聖南をふとアキラが見た。


「それヤバイじゃん。そういえばアキラはハルと会ったんだろ? どうだった? ちゃんとしてる子?」
「ちゃんとしてる子ってなんだよ……」


 あの日ケイタは葉璃と会えなかったため、興味津々な発言に引っかかって苦笑してしまう。

 それだけ今までの相手が適当だったという事か。


「ちゃんとしてたぜ、俺が見た限りじゃな。しかもめちゃくちゃ可愛い。何ていうか……うさぎ? ハムスター? そんな感じ」
「マジで!! 良かったな、セナ!」
「おいおい、ちょっと待って。セナ、さっき言ってた心に決めた人がいるって本当だったのか!?」


 ついには成田まで運転席から体を捻って乗り出してくる勢いで食いついてきて、聖南は一瞬たじろいだ。

 しかし葉璃との交際に対し、ここに居る者等にはこれから協力を仰がなくてはならないかもしれないと思い、掻い摘んでだが話しておく事にする。



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