必然ラヴァーズ

須藤慎弥

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 凄かった……。

 しかも俺、少し雑に抱かれた方が感じるんだって気付いてしまった。

 普段聖南はすごく優しいから、今日みたいに余裕のない動き……そのギャップにやられちゃうみたい。

 前に言ってたっけ。

 聖南は見た目が素っ気なさそうでチャラいのに、やたらめったら周囲に気遣いして気配りも出来て優しくするから、それで女の人達がコロッといっちゃう……って。

 分かる気がする。

 今の俺の心境はその真逆なんだけどね。

 いつも優しい聖南があんなに激しく俺を求めてくれたと思うと、まだドキドキが治まらない。

 怒った顔もマジでカッコよかった。

 ダメだな俺……悪い事して怒られても、あの顔されたらキュンキュンしてそれどころじゃなくなりそう。


「また何笑ってんの? マジでおかしいよ、今日の葉璃」
「あ、いや……改めて、聖南さんカッコイイなって思ってた。 やばい、顔がニヤける。 あんま俺を見ないでください」


 エッチの後の聖南は髪が乱れて色気もハンパじゃないから、ジッと見詰められると心臓に悪い。

 ……おかしいなぁ。

 俺、別に聖南の顔を特別カッコイイって意識した事あんまり無かったはずなんだけど。

 客観的に見てカッコイイ、うっとりしそう、綺麗、これくらいは当然思ってたけど、聖南のための大きな内緒事がある今はそれを全部ひっくるめても足りないくらいだ。

 どうしよう、今さらめちゃめちゃ照れるんですけど。

 俺みたいなどこにでもいそうな女顔が、聖南のように非の打ち所のない人に見詰めてもらうとこそばゆくて仕方ない。

 ちょっとエッチが激しかっただけで、聖南の印象がまた少し変わって……彼に二回目の恋をしてるみたいな気になる。


「お、俺シャワー浴びてくる……」


 珍しく一時間とちょっとで終わった行為の後だから、俺は視線から逃れるようにいそいそとベッドを降りようとした。

 聖南が二回とも中で出してこぼれそうだから、転がってだ。

 すると転がる前に聖南の腕に捕まってしまう。


「俺置いて行くの。 ワガママ聞いてやるって言っただろ。 洗ってやるから置いて行くな」
「……あ、ありがと……」


 そういえば二回目に入る前にそんな事を聖南は言ってたっけ。

 ローションがベタベタまとわり付いてるから早くシャワーを浴びたかったけど、獣から甘えん坊にいつの間にか変身してた聖南に力いっぱい抱き締められた。

 そして耳元で俺がまたメロメロになるような事を言う。


「葉璃、好きなんだよ……愛してるんだ。 マジで不安にさせるな。 ……頼むから」


 息が出来なくなるほど俺を抱く腕に力を込めてきた。

 俺、何度この台詞を聖南に言わせてしまってるんだろう。

 いつも俺を追い掛けてくれてる聖南には、こんな思いを抱かせちゃいけなかったのに……忙しさにかまけて、自分の事で精いっぱいになっちゃって……。

 「ごめん」じゃ済まないかもしれないけど、聖南の心を落ち着かせたい一心で俺はゆっくり振り返った。


「ごめんね、聖南さん……。 そんなに寂しかったなんて思わなかった。 ……俺も好き、大好きだよ。 不安にさせてごめんなさい……」
「いいよもう、謝んなくても。 てか謝んの俺の方だ。 ……葉璃、痛くなかった? …今日マジで余裕なくて、その……ちょっと痛くしちまったかも……」
「それは……少しだけ」
「ッッごめん! 痛いのどこだ!?」


 抜き差しの荒さでピリッとしていた痛みの事かと思って正直に言うと、聖南は明らかに焦り始めて俺の体を調べ始めた。

 「ごめん、マジでごめん!」と言いながら全身を撫で回されて、それは全然いやらしさを伴ってないのに気持ち良くて。

 俺の体、どうにかなっちゃったのかな……。


「だ、大丈夫ですよっ。 ……すっごく気持ち良かったです、ほんとに。 聖南さんいっつも我慢してくれてたんだね」


 最後に膝裏を抱えられて穴をまじまじと見られそうになったから、慌てて足を閉じた。

 素面の時にそんな勇気はない。


「我慢なんかしてねぇよ。 ……でも今日は悪かった。 誤解?だったのに。 痛くするつもりなかったんだけど……無我夢中でな」


 聖南が髪をかき上げて、俺の事が心配でしょうがないって顔で見てくる。


「それより痛いってどこが? ちゃんと言ってよ」
「……激しかったから……ちょっとだけ痛かった。 ア、アソコ……」
「マジか……ごめんな。 二度とあんな風に抱かねぇから。 痛かったら言えって言ったじゃん。 我慢してんなよー……」


 俺を抱き起こしてバスルームへ運んでくれた聖南が、シャワーでヌルヌルを落としてくれながら苦笑した。

 聖南をそこまで追い込んだのは俺なのに、しかも最高のエッチだったのに、そんなに責任感じてほしくない。


「……ヤだ。 優しいのも激しいのもどっちも好きでした。 だから二度としないとか言わないでほしいです」
「……は? いや葉璃、痛かったって……」
「それが何かこう……ムズムズしてきて、痛いのにもっとって言っちゃったし……とにかく気持ち良かった……! 聖南さんがしてくれるんなら、俺はどんなでもいいんだなって分かりました」


 精液をかき出すためにお尻の中に指を入れてきたから、咄嗟に聖南の首に両腕を掛けてしがみつく。


「……葉璃、この状況でそういう事言っちゃうってどうよ」
「あ……どうしましょう」


 チラ、と聖南の下腹部を見ると……いつからだったのか、立派に育ってた。


「久しぶりに駅弁やるか。 あれなら葉璃キツくないだろ? ……よいしょ」
「せ、聖南さんっ? ……待って、今日は二回だけって……!」


 そんなつもりなかったのに!

 軽々と俺を抱き上げた聖南は、慌てた俺の言葉にこれ以上ないほど美しく微笑んだ。


「二回も三回も変わんねぇよ♡」
「…………っっ」


 怒った顔も、この麗しい笑顔も、俺の心を鷲掴んで離さないから……流されちゃえと、ソッと聖南の肩に手をやった。

 聖南はほんとに、俺を翻弄するのがうまい。

 さっきまで不安と嫉妬と寂しさで我を忘れて瞳を揺らしてたのに、目の前で八重歯を覗かせて笑うなんて。

 この子どもみたいな大人を、どうやったら攻略できるんだろう。

 ねぇ、聖南。

 いつまで俺に、恋させる気?



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