必然ラヴァーズ

須藤慎弥

文字の大きさ
286 / 541
45♡

45♡

しおりを挟む
─葉璃─



 聖南の交際宣言による騒ぎは、一週間ほど経つと本当に鎮静化しつつあった。

 あまり聖南が多くを語らない事で、マスコミは諦めに似た憶測の報道をするしかなくなってる。

 テレビ番組に出るとその話題ばかりをふられるのにも関わらず、聖南は嫌な顔一つしないで対応していた。

 むしろ幸せいっぱいに「最高っすよ」ってどこででも言うから、報道直後は驚愕と悲鳴の嵐だった世間もだんだんと祝福ムードに変わってきている。

 ファンの人達も一貫して聖南の幸せを望む声が多く、去年スキャンダルがあった事で余計に、聖南が本命だと公表するなんて相当本気なんだと思われているみたいだ。

 「俺の交際宣言で引っ張んのは一週間が限度だろ」と聖南が豪語してた通りになっていて、芸歴が長いと世論や報道の流れも読めるようになるんだ、ってさらに聖南への尊敬が増した。

 そんな聖南から、いよいよツアーのリハーサルに入ったと連絡があったから、今よりもっと会えなくなるのは必至で、少しだけ……寂しい。

 いくらテレビで会えると言っても、寂しいものは寂しい。

 ただ、今の俺もうじうじしてる暇なんて無くて、学校では新しい学年に上がって三年生になったし、大学受験の準備で始業式の翌日から授業も慌ただしい。

 学校終わりのレッスンも同じくバタバタとしていて、CROWNのツアー同行のためのダンスレッスンもプラスされたからこれまで以上に毎日ヘトヘトだ。

 一つ嬉しかったのは、三年に上がったら恭也とまた同じクラスになれたこと。

 嬉しかったのは俺だけじゃなく恭也も同じ気持ちだったみたいで、少し席が離れてるのに休み時間の度にそばに来てくれる。

 以前とは見た目が明らかに変わった恭也は、学校に居る間ずっと誰かの視線を集めてるんだけど……中身は一切変わらない彼は相変わらず俺のことしか見えてない。

「葉璃、次移動だから……行こ」
「うん」


 恭也の鬱陶しかった前髪は、春休み前くらいから自然に後ろに流してあって顔面を晒しているし、背筋がしゃんとなって長身なのも手伝い、やたらと女子に注目されていた。

 俺も恭也もバリケードを張ってるからあんまり話し掛けられはしないけど、以前に比べたらクラスメイトと交流を持つのも苦手じゃなくなってきているし、色々と良い変化はある。

 気持ちを変えるとこんなに楽なんだって分かってからは、俺もなるべく話し掛けられたら対応するようにしていて、孤立するって事が無くなった。

 恭也にも言われた事があるんだけど、聖南との付き合いが俺に多大な影響を与えてくれてる。

 直接教わったわけじゃないのに、聖南を見ているだけで前向きにならなきゃとお尻を叩かれる。 そして、今まで逃げてきた事にも向き合えるように努力しなきゃって、一年前の俺だったらあり得ない、そんな心境。


「葉璃、今日のレッスン終わりに事務所寄って下さい、だって」


 化学実験室で班毎に別れて着席する中、出席番号の関係で違う班だった恭也が俺の元へやって来てコソコソと耳打ちしてきた。

 俺達がデビューするという事を周りに悟らせないようにって言われてるからだ。


「え? 林さんから?」
「そう。 葉璃にも連絡いってると思うけど」
「今電源落としてるから分かんなかった。 何だろ?」


 レッスン終わりに事務所へ寄れだなんて、初めてかもしれない。

 恭也と顔を見合わせて頷き合うと、ちょうどそこに先生が入ってきたからとりあえずは授業に集中する事にした。



しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

すべてはあなたを守るため

高菜あやめ
BL
【天然超絶美形な王太子×妾のフリした護衛】 Y国の次期国王セレスタン王太子殿下の妾になるため、はるばるX国からやってきたロキ。だが妾とは表向きの姿で、その正体はY国政府の依頼で派遣された『雇われ』護衛だ。戴冠式を一か月後に控え、殿下をあらゆる刺客から守りぬかなくてはならない。しかしこの任務、殿下に素性を知られないことが条件で、そのため武器も取り上げられ、丸腰で護衛をするとか無茶な注文をされる。ロキははたして殿下を守りぬけるのか……愛情深い王太子殿下とポンコツ護衛のほのぼの切ないラブコメディです

隣の席のイケメンに懐かれた

しょうがやき
BL
隣の席のイケメンに懐かれた平凡男子の話

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

甘々彼氏

すずかけあおい
BL
15歳の年の差のせいか、敦朗さんは俺をやたら甘やかす。 攻めに甘やかされる受けの話です。 〔攻め〕敦朗(あつろう)34歳・社会人 〔受け〕多希(たき)19歳・大学一年

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

処理中です...