必然ラヴァーズ

須藤慎弥

文字の大きさ
上 下
287 / 541
45♡

45♡2

しおりを挟む



… … …


 CROWNのダンスは、いかにも三人が簡単そうに踊るから勘違いされやすいけど、実はかなり複雑に練られている。

 デビュー時からすべての曲でケイタさんが振り付けを考えてるらしいけど、これは短期間でサラッとなんてとても覚えられない。

 memoryみたいな女の子グループのダンスはメリハリがあって同じ動きも多いから、俺が春香の影武者をした時は何とか短時間で覚えられたけど、CROWNのダンスはまたちょっと違う。

 リリカルヒップホップだって聖南が言ってたっけ……正直、それを初めて耳にした俺には何のこっちゃ分からない。

 ただただ一つ一つの動きを正確に体に叩き込んでいくしかなくて、体が覚えてしまった後でもスムーズに踊れるようにまでめちゃくちゃ時間がかかりそうだ。


「葉璃が苦戦してるのに、俺がすんなり踊れるわけないよね……」


 レッスン終わりに制服へ着替えをしていた恭也が、しょんぼりと肩を落とした。

 このダンスレッスンが始まってもう一週間が経つけど、センスがいいって褒められてた俺ですらまだ四苦八苦中だ。

 恭也が受けていたレッスンでは、ボイストレーニングと芝居が主だったらしいから当然だし、何よりCROWNのダンスはほんとに難しい。


「だって難しいもん。 しょうがないよ。 恭也は背が高いからこのダンスの見栄えいいよね、いいなぁ」
「また、そんなこと言ってる。 ……葉璃、成長痛は、もうないの?」


 しつこいまでに俺が恭也との身長差を気にしてるから、恭也はちょっとだけ笑顔に戻って鞄を肩に掛けた。


「ないよ、ない。 たった三センチのための成長痛だったんだって思ったらムカつくよぉ~」


 俺も鞄を手に恭也の隣に並んで、レッスン講師に「お疲れ様でした」と挨拶をした。

 スクールと併設された事務所へは、一度外に出なくても中から行き来出来る。


「いいじゃない。 伸びた事に、変わりはないんだから。 葉璃が、セナさんくらい伸びちゃったら、俺も困るよ」
「何で困るんだよー」


 せっかくあんなに痛くて大変だったんだから、もっとガッツリ伸びても良さそうなもんなのに……何なの、三センチって。

 恭也が言うように伸びてる事に違いないけど、全然喜べない。


「葉璃を、見上げる事になるなんて、嫌だよ。 この感じが、いいのに」
「俺は見下ろしてみたいんだ! 俺の周りの大人達みんな大きいから、囲まれたら俺の姿見えなくなるんだよ? あれすごく変な感じなんだもんっ」
「それがいい。 囲まれて、ドキドキしてる葉璃、好き」


 男として長身が良いって思うのは当然なのに、恭也が真っ直ぐな瞳でそんな事を言うから俺が単に駄々こねてるだけみたいだ。

 俺はせめて、恭也くらいは背が欲しかったよ。

 聖南とキスしてたあのHottiのモデルさんは、スラッとしてて背も高そうだったから余計にお似合いに見えた気がした。

 それだけで、勝手な敗北感を味わったんだ。

 俺を抱き締めてくれる時、聖南は背中を丸めるようにすっぽり包んでくるから、やりにくそうだなっていつも思ってる。

 俺があと少し……十センチは高ければ、聖南といい感じで並べそうなのに。

 いや、……ていうか聖南が高過ぎるんだよね。 百八十六センチなんて、俺と何センチ差なんだって話だ。


「うーー……」
「何唸ってんの?」




しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

【完結】嘘はBLの始まり

紫紺
BL
現在売り出し中の若手俳優、三條伊織。 突然のオファーは、話題のBL小説『最初で最後のボーイズラブ』の主演!しかもW主演の相手役は彼がずっと憧れていたイケメン俳優の越前享祐だった! 衝撃のBLドラマと現実が同時進行! 俳優同士、秘密のBLストーリーが始まった♡ ※番外編を追加しました!(1/3)  4話追加しますのでよろしくお願いします。

Sweet☆Sweet~蜂蜜よりも甘い彼氏ができました

葉月めいこ
BL
紳士系ヤクザ×ツンデレ大学生の年の差ラブストーリー 最悪な展開からの運命的な出会い 年の瀬――あとひと月もすれば今年も終わる。 そんな時、新庄天希(しんじょうあまき)はなぜかヤクザの車に乗せられていた。 人生最悪の展開、と思ったけれど。 思いがけずに運命的な出会いをしました。

幸せの温度

本郷アキ
BL
※ラブ度高めです。直接的な表現もありますので、苦手な方はご注意ください。 まだ産まれたばかりの葉月を置いて、両親は天国の門を叩いた。 俺がしっかりしなきゃ──そう思っていた兄、睦月《むつき》17歳の前に表れたのは、両親の親友だという浅黄陽《あさぎよう》33歳。 陽は本当の家族のように接してくれるけれど、血の繋がりのない偽物の家族は終わりにしなければならない、だってずっと家族じゃいられないでしょ? そんなのただの言い訳。 俺にあんまり触らないで。 俺の気持ちに気付かないで。 ……陽の手で触れられるとおかしくなってしまうから。 俺のこと好きでもないのに、どうしてあんなことをしたの? 少しずつ育っていった恋心は、告白前に失恋決定。 家事に育児に翻弄されながら、少しずつ家族の形が出来上がっていく。 そんな中、睦月をストーキングする男が現れて──!?

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

無自覚両片想いの鈍感アイドルが、ラブラブになるまでの話

タタミ
BL
アイドルグループ・ORCAに属する一原優成はある日、リーダーの藤守高嶺から衝撃的な指摘を受ける。 「優成、お前明樹のこと好きだろ」 高嶺曰く、優成は同じグループの中城明樹に恋をしているらしい。 メンバー全員に指摘されても到底受け入れられない優成だったが、ひょんなことから明樹とキスしたことでドキドキが止まらなくなり──!?

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

雪を溶かすように

春野ひつじ
BL
人間と獣人の争いが終わった。 和平の条件で人間の国へ人質としていった獣人国の第八王子、薫(ゆき)。そして、薫を助けた人間国の第一王子、悠(はる)。二人の距離は次第に近づいていくが、実は薫が人間国に行くことになったのには理由があった……。 溺愛・甘々です。 *物語の進み方がゆっくりです。エブリスタにも掲載しています

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

処理中です...