252 / 541
41★
41★ 7・葉璃の周りは賑やかです。
しおりを挟む「で? 何事なわけ? 俺に黙って病院とか」
個室に入るなり、セナさんは葉璃を捕まえて両頬を取り、上向かせて、不機嫌をあらわにしている。
アキラさんとケイタさんはベッドに腰掛けたから、俺は傍らの丸椅子に座って二人のやり取りを見ていた。
「え、いや……黙ってるつもりはなかったですよ? 聖南さん忙しそうだから、後から言おうと思ってただけで……」
「俺はてっきり、葉璃の方が忙しくてあんま連絡こねぇのかと思ったんだけど。 俺に遠慮なんかすんなよ。 分かった?」
「はい……」
葉璃はセナさんの手にゆっくり自身のも重ねて瞳を閉じ、それを降ろした。
触れないでと語っているかのような動作に、セナさんは葉璃の様子がおかしい事に気が付いたようだ。
「葉璃? ……どした?」
「……なんでもないです」
「?」
セナさんの表情が一転して無表情になり凝視するも、葉璃は俯いて肩を震わせた。
どうしよう。
葉璃のこのしょんぼりが俺のせいかもしれないって分かったら、セナさんに怒られてしまうかもしれない。
でも何故葉璃がこんな状態なのか俺さえも分からないから、何の言い訳も出来ないし困った。
アキラさんとケイタさんも不穏な空気を察知して葉璃を見詰めていると、ガラガラっと引き戸が開いて医師が顔を覗かせる。
「事情を聞いたんでここで診察するよ。 倉田葉璃くんはその椅子に掛けて」
「はい」
前の人の診察が終わって看護師さんに事情を聞いた医師が、葉璃を丸椅子に腰掛けさせ
てカルテを見ながらその前に立つ。
「調子はどう? 痛みは?」
「あ、あの……痛み、減ってきたんです。 最近忙しくて薬飲むの忘れたり多々あったんですけど、ここ二週間くらいほとんど薬飲まなくても大丈夫になってきてて」
葉璃がそう医師に説明しているのを、セナさんは腕を組んでジッと聞いていた。
アキラさんとケイタさんも、葉璃の成長痛が回復傾向にある気配に胸を撫で下ろしている。
三人とも、葉璃の事がよっぽど心配だったらしい。
仕事の合間を縫って、揃ってやって来た事が何よりの証拠だ。
「そう。 ……君の場合は稀な症状だったからね。 今落ち着いているからと言って、今後もないとは限らないし、このまま落ち着くかもしれない。 現状はなんとも言えないから、今日はお薬出さずにいこうか。 一ヶ月後にまた来てもらえる?」
「分かりました」
「その前に何か変わった事があったらすぐに来てね。 あ、ちなみに身長は測ってみた?」
「いえ……」
「ここ身長計あったはずだから、君、測って記録しておいて」
医師は付いていた看護師さんに託し、お大事に、と葉璃に微笑んで去って行った。
ベッドの奥、壁際の身長計へ看護師さんが葉璃を誘導する。
「緊張しちゃうわぁ、CROWNが居るんだもん……」
ベテランそうな看護師さんがそう苦笑して、緊張気味の葉璃へ笑いかけた。
じわ…と身長計に乗る葉璃の顔が、いつも以上に強張ってる気がする。
「あ、俺らの事は気にしないでいいっすよ」
「ハル君のが終わったら俺らのも測ってもらえません?」
「おいケイタ、仕事の邪魔すんな」
ベッドに腰掛けてマジマジと葉璃を見ていたケイタさんが、そんなお願いをしているのをセナさんが嗜めたけど、看護師さんは「いいですよ」と笑った。
「CROWNのみんなの身長測れるなんて、一生の自慢ですから」
意外にも乗り気な看護師さんは、ニコニコしながら何度も「ラッキーだわぁ」と呟き、カルテに葉璃の身長を書き込んだ。
11
お気に入りに追加
319
あなたにおすすめの小説
ハンターがマッサージ?で堕とされちゃう話
あずき
BL
【登場人物】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ハンター ライト(17)
???? アル(20)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
後半のキャラ崩壊は許してください;;

ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。

好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。

なんか金髪超絶美形の御曹司を抱くことになったんだが
なずとず
BL
タイトル通りの軽いノリの話です
酔った勢いで知らないハーフと将来を約束してしまった勇気君視点のお話になります
攻
井之上 勇気
まだまだ若手のサラリーマン
元ヤンの過去を隠しているが、酒が入ると本性が出てしまうらしい
でも翌朝には完全に記憶がない
受
牧野・ハロルド・エリス
天才・イケメン・天然ボケなカタコトハーフの御曹司
金髪ロング、勇気より背が高い
勇気にベタ惚れの仔犬ちゃん
ユウキにオヨメサンにしてもらいたい
同作者作品の「一夜の関係」の登場人物も絡んできます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる