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波紋
#1
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妖しいネオンがいくつも瞬く歓楽街。
その中ほどにある小さな店に、強引に引っ張り込まれて梶川は顔をしかめた。
「そんな顔するもんじゃないわよ、色男が」
サチ姐はそう言いながら、梶川の腕をとってカウンターにいる店のママに紹介した。
「ほら見てぇ~ママ。この子よ、例の新入り君」
「この子って……」
眉間を寄せて、心底迷惑顔をする梶川などお構いなしに、サチ姐は言った。
「ねぇ?言った通りの色男でしょう?」
すると、キツネのように痩せた店のママが、「やぁだホント」と口に手を当てて大袈裟に喜ぶ仕草をしてみせた。
どう見ても男だが、ウィッグとメイクと衣装で何とか女に見せている。
美人と言えなくもないが……肉付きが良くて愛嬌のあるサチ姐とは対照的な感じだ。
店にはそれ以外にも、4人ほど若い女性スタッフがいたが、恐らくどの女性も皆、男だろう。
ここはそういう店なのだ。
店内は男性客が多いが、女性の客もいる。
サチ姐たちの様な、オネェと話すのが好きな女性も結構いるのだ。
「女の入店拒否してる店もあるけど、ここはOKなのよ」
サチ姐はカウンターの隅に座る梶川の横に来ると、嬉しそうに言った。
「また会えて嬉しいわぁ。ねぇ何飲む?」
梶川は苦笑すると、仕方なくブランデーの水割りを一杯注文した。
「あの子たちも全員男なの?」
その言葉にサチ姐は笑った。
「アンタはどの子が好み?ちなみに……ミサキ以外はみんな竿アリよ」
そう言って、長い髪のスレンダーな女性を指差した。
「ミサキは全身工事済み。身も心も女になりたいって子なの」
ふぅん……と、梶川は素っ気ない返事を返した。
オネェには興味がない――どうせなら、本物の女が相手をしてくれる店がいい。
ノーマルな男ならそう思うだろう。
キツネの様なママがカウンター越しに口説いてくる。梶川は辟易した。
そこへ、どう見ても女性にしか見えないミサキが楽しそうにやってきた。
「見つけちゃったぁ~サチ姐さんのお気に入りぃ」
そう言って、擦り寄るように梶川の隣に立つ。ピッタリと足に張り付く細身のデニムに、露出の強いトップスを着ている。大きく開いた胸元から豊満な乳房を覗かせていた。
甘い香水の匂い。長い髪は地毛のようだ。
「マジでデカなの?」
声まで女性のようだった。
「そうよ。勿体ないでしょう」
サチ姐はそう言うと、「言っとくけど。アタシが先に見つけたのよ」と言って梶川の体を抱き寄せた。
「おい……」
水割りを溢しそうになり慌てる梶川を、奪い取るようにミサキがその腕を掴んだ。
「そんなババァより若い方がいいわよ。ね?ね?オマワリさん」
「ちょっとぉ、失礼しちゃうわ。誰がババァよ」
決して本気ではないおどけた調子で、2人は左右から梶川の腕を掴んだ。
「おい、ちょっと――」
困惑する梶川をよそに、2人は腕を引っ張り合う。
その反動で、梶川の腕が思い切りミサキの胸に当たってしまった。
「あ、すみません」
「いやぁん。触られちゃったぁ」
咄嗟に腕を引っ込めて頭を下げる梶川を見て、ミサキは「ヤダぁ~オマワリさん、可愛い~」と笑って体を寄せてきた。
「……」
「イイのよ、触っても」
顔をそむける梶川の耳元で、ミサキが囁いた。
「―――」
サチ姐はその様子を黙って見つめていた。
その中ほどにある小さな店に、強引に引っ張り込まれて梶川は顔をしかめた。
「そんな顔するもんじゃないわよ、色男が」
サチ姐はそう言いながら、梶川の腕をとってカウンターにいる店のママに紹介した。
「ほら見てぇ~ママ。この子よ、例の新入り君」
「この子って……」
眉間を寄せて、心底迷惑顔をする梶川などお構いなしに、サチ姐は言った。
「ねぇ?言った通りの色男でしょう?」
すると、キツネのように痩せた店のママが、「やぁだホント」と口に手を当てて大袈裟に喜ぶ仕草をしてみせた。
どう見ても男だが、ウィッグとメイクと衣装で何とか女に見せている。
美人と言えなくもないが……肉付きが良くて愛嬌のあるサチ姐とは対照的な感じだ。
店にはそれ以外にも、4人ほど若い女性スタッフがいたが、恐らくどの女性も皆、男だろう。
ここはそういう店なのだ。
店内は男性客が多いが、女性の客もいる。
サチ姐たちの様な、オネェと話すのが好きな女性も結構いるのだ。
「女の入店拒否してる店もあるけど、ここはOKなのよ」
サチ姐はカウンターの隅に座る梶川の横に来ると、嬉しそうに言った。
「また会えて嬉しいわぁ。ねぇ何飲む?」
梶川は苦笑すると、仕方なくブランデーの水割りを一杯注文した。
「あの子たちも全員男なの?」
その言葉にサチ姐は笑った。
「アンタはどの子が好み?ちなみに……ミサキ以外はみんな竿アリよ」
そう言って、長い髪のスレンダーな女性を指差した。
「ミサキは全身工事済み。身も心も女になりたいって子なの」
ふぅん……と、梶川は素っ気ない返事を返した。
オネェには興味がない――どうせなら、本物の女が相手をしてくれる店がいい。
ノーマルな男ならそう思うだろう。
キツネの様なママがカウンター越しに口説いてくる。梶川は辟易した。
そこへ、どう見ても女性にしか見えないミサキが楽しそうにやってきた。
「見つけちゃったぁ~サチ姐さんのお気に入りぃ」
そう言って、擦り寄るように梶川の隣に立つ。ピッタリと足に張り付く細身のデニムに、露出の強いトップスを着ている。大きく開いた胸元から豊満な乳房を覗かせていた。
甘い香水の匂い。長い髪は地毛のようだ。
「マジでデカなの?」
声まで女性のようだった。
「そうよ。勿体ないでしょう」
サチ姐はそう言うと、「言っとくけど。アタシが先に見つけたのよ」と言って梶川の体を抱き寄せた。
「おい……」
水割りを溢しそうになり慌てる梶川を、奪い取るようにミサキがその腕を掴んだ。
「そんなババァより若い方がいいわよ。ね?ね?オマワリさん」
「ちょっとぉ、失礼しちゃうわ。誰がババァよ」
決して本気ではないおどけた調子で、2人は左右から梶川の腕を掴んだ。
「おい、ちょっと――」
困惑する梶川をよそに、2人は腕を引っ張り合う。
その反動で、梶川の腕が思い切りミサキの胸に当たってしまった。
「あ、すみません」
「いやぁん。触られちゃったぁ」
咄嗟に腕を引っ込めて頭を下げる梶川を見て、ミサキは「ヤダぁ~オマワリさん、可愛い~」と笑って体を寄せてきた。
「……」
「イイのよ、触っても」
顔をそむける梶川の耳元で、ミサキが囁いた。
「―――」
サチ姐はその様子を黙って見つめていた。
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