哀歌ーelegy-

sorarion914

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秘密

インターバル【現在】

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 懐から電子タバコを取り出すと、佐倉は口にくわえた。
 それを見たサチ姐が笑いながら言った。
「健康に気を遣う年になったのねぇ、サクちゃん」
「姐さんは相変わらずヘビースモーカーだな。肺ガンになるぞ」
「今更もう手遅れよ」
 サチ姐はそう言うと、開き直ったように紫煙を吐き出した。
「副流煙でこっちがヤバいわよ」
 煙を手で仰ぎながら、スーちゃんは「ねぇ……」というように綾瀬とテツを見た。2人は顔を見合わせて苦笑いをする。

「にしても……今のところエージさんがそんなに問題アリの刑事だったようには見えないんだけど」
 そう言ってスーちゃんが新しい水割りを作り、佐倉の横に置く。
 佐倉は礼を言ってグラスを手に取ると、「そうだな……俺もそう感じてた」と頷く。
「もしかしたらアイツ自身、今度こそ問題起こさない様に気をつけてたのかもしれんな。仲間同士の突っ込んだ付き合いを避けていたのも、敢えて距離を置くことで無用なトラブルを避けていたんだろう。ただ、不思議なもんで、アイツ自身がどんなに周囲を遠ざけようとしても、周りがそれを放っておかないんだ」
 そう言って、佐倉は電子タバコを吸いこんだ。

「エージにはカリスマ性みたいなものがあって、黙ってても自然と人が寄ってくる。配属当初は煙たがってた連中も、いつの間にかアイツの雰囲気に飲みこまれていった。ヤクザの連中もそうだ。新入りだと鼻で笑ってた連中が、いつの間にか襟を正して挨拶するようになっていく」
 来るべき所へ来た――最初に感じたその感覚は、決して気のせいではなかったのだ。
 次第に大きな影響力を見せてくる梶川に、当時の佐倉は不安を感じていた。

 気を付けて見ていなければ……
 良い方へ転べばいいが、悪い方へ転んだらとんでもないことになる――と。

「もともと面倒見のいい男で、本気で助けを求めているなら例え相手がチンピラでも真剣に話を聞いてやるし、手を貸すことも厭わない。その代わり、悪い連中には容赦なかったけどな。頼りになる兄貴って感じだった」
「それは今も変わらないね」
 綾瀬はそう言って笑った。テツも頷く。
「アイツには人に知られたくない秘密があった――職場の人間と距離を置いていた、もう一つの理由だ。今ならそれが何かわかるけど、当時の俺がそれを知るのはまだずっと先だ」
 そう言って佐倉はサチ姐を見た。
「姐さんはいつ気づいたんだ?その事に。エージが――」
「ゲイだってこと?」
 サチ姐はタバコを灰皿でもみ消すと、俯いて笑った。

「実を言うとねぇ、サクちゃん……アタシは初めて取調室でエージを見た時に、なんとなくピンときたのよ」
「……」
「あぁ……この男は何か隠してるわ。ひょっとして、の人間じゃないかしら?って」
 そう言って小さく笑う。


「夜の街で偶然エージの姿を見かけてさ。強引に店に引っ張り込んで確信したのよ。この男、女がダメなんだって――」




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