神様はいない Dom/Subユニバース

np03999

文字の大きさ
上 下
19 / 114
小話系

フェティッシュ 4

しおりを挟む

 厚木からのご褒美にまんまと釣られた吉継は、厚木に言われるまま変なポーズを取っていた。「こっちにこい」と言われて、隣に座る。「こっちだ」と厚木の膝に乗り上げた時も、素直だった。
 腰に手がかかり、下着の上から尻や足を撫でられてようやく、あれ?と思った。
 「すごいな」
 「え…なにがですか」
 「これだけ動いてもレースがずれない」
 言われてみれば、確かに。吉継が穿くボクサーパンツは、座ると一分丈が股の付け根でわだかまって、ブリーフと同じになる。
 吉継としては、パンツとはそういうものだ。厚木がレースの形状に感心していても、ふぅんと思っただけだ。
 「あっ、厚木さん」
 「どうした」
 指が裾を割って入り、つけ根を撫でていき、反対の手は腰から下りて尻の肉を揉んでいる。
 「どうした…って…」
 厚木は手を止めることもなく平然として吉継の胸に吸い付く。
 びっくりして固くなった体を、ソファに押し倒され、足の先から指の股まで撫でられた。
 「んん…」
 「感じるのか」
 「…わかりません…」
 性感を煽るような触り方でも、直接的な場所でもない。下着の中に侵入してきた手も、
 その手に性の匂いはなく、ふくらはぎに太もも、足のつけ根…と体を撫でられて、気まぐれに唇があたる。気持ちいいが、身の置きどころはない。プレイでもない、興奮もなく、緩やかに優しく、唇と手に撫でられるだけ。そういうものには慣れていない。そうして頭の先まで全身に骨ばった手が辿り終える。
 「もういい」
 手を引かれて体を起こす。
 「厚木さん…なに…」
 「ブラッシングだ」
 「なにそれ…」
 よくわからない。
 でも。
 「癒やされましたか」
 「ああ、ありがとう」
 もう着替えていいと言われて、早速レースに手をかけ、いち早く脱ごうとした吉継に、「それはおまえのだ。穿いておけ」と声がかかる。
 「いらないです」
 「なぜ、穿き心地は悪くないはずだ」
 「見た目が嫌です」
 「どんなものがいい」
 「どんな…普通の…」
 下着にこだわりがないので、なにも浮かばない。
 体を動かすときには、動きやすそうなサポーター、普段は3枚セットで綿素材のどこにでもあるやつだ。体が大きいので、サイズさえ合えばなんでもいい。そういえば、厚木が無理やり押し付けてくる下着はいつもサイズがぴったりだ。
 「普通の、か…」
 厚木は少し考えるような素振りをみせ、スマホを取り出して誰かと話をはじめた。英語なのかそれ以外なのか、日本語ではなかったので、何語で何を話しているのかわからない。
 その隙にさっさとレースを脱いでしまった。脱いだレースは、持て余して元の箱に入れた。捨てなかっただけ大躍進と言えた。
 厚木も見ていたが、なにも言われなかった。
 ご褒美は決めていた。
 仕事している隣に座り、ついでにゴロリと膝に頭を乗せる。
 すると骨ばった手が頭を撫でてくれる。
 そういえば、さっき厚木は、吉継の体を撫でることをブラッシングと言っていた。癒やされたとも。
 さっきは全くピンとこなかったが、あれのことか。飼い犬とかの毛をブラシで梳いてコミュニケーションを取るという。
 吉継は厚木とコミュニケーションを取っていたのだろうか。厚木は機嫌がよさそうに見えた。厚木の嗜好は本当に意味不明だ。ただセクハラが好きなだけにも思える。
 それより、吉継の”いい”ところをもう少し掘り下げてくれてもいいと思った。
 「いいって言ったのに…」
 「言ったが、なにが不満だ」
 「…」
 スマホで誰かと話をしているのに、吉継の独り言を聞いていたうえに、返事まで返してきた。またスマホで通話を始める。
 不満とまではっきりしたものではない。厚木に”いい”と言われたら、”好き”と言われたのと同じではないかと思ったのだ。そう言って欲しかった。それなら吉継にもわかるし、厚木に好きだと言われたら嬉しい。単純に、好きだと言ってほしかっただけだ。しかし、厚木はわけのわからないことしか言わなかった。厚木は偏屈で、変態でいけ好かないし、ちょっと普通じゃない。変な男を好きになってしまったと思っている。とはいえ、吉継は困ったことに厚木以外を受け付けない。
 でも、ご褒美で言ってもらうのは違う気がする。
 「厚木さんは変だと思って…」
 変態と言わなかったのは吉継の気遣いだ。
 「お前がいうな」
 「む…」
 
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

こども病院の日常

moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。 18歳以下の子供が通う病院、 診療科はたくさんあります。 内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc… ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。 恋愛要素などは一切ありません。 密着病院24時!的な感じです。 人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。 ※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。 歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

処理中です...