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受け入れるもの、変わるもの
トレーニングプレイの成果 8
しおりを挟む「…」
吉継が厚木を振り返り、ぽかんとした顔をしている。厚木は片眉を上げて訝しげに吉継を見返す。
「なんだ」
「厚木さんは、…Domは褒めない人たちだと思っていました」
「お前の知っているDomと一緒にするな。俺をなんだと思っている」
そもそも、何度も褒めてやっているだろうと言われても、吉継からすれば、そうだったか?くらいのものだ。
「厚木さんはよくわからない、難しいことばかり言うし、変態です。…でも、さっきは褒めてくれました」
「ふん」
なんとなく今だという気がして、ここぞとばかりに溜まっていた厚木への不満を言う。
「俺は厚木さんしかいないのに、厚木さんはすぐ俺で遊びます。それは嫌です。あとは他のSubとプレイするのも嫌です。あとは変態で、自分だけ脱がないのはズルいです。あとは俺をすぐ放っておくし、俺が足を舐めるの嫌がるし俺は厚木さんのためにしたのに…」
止みそうもない不満の泉に、聞く気が失せたと厚木がうんざりしながら遮る。
「パートナーじゃ不満か」
「厚木さんがプレイするのが俺だけならいいです」
「さっきも言っていたな、俺が他のSubとプレイしていると?」
「言いました。厚木さんはいつでも好きなSubが選べます」
「へぇ…、確かに見かけだけ従順なくせに注文が多くて扱いにくいSubのお前より、俺のプレイを喜ぶSubは多い。なら、そちらを選んでもいいのか。お前とはパートナーを解消することになるが…」
「だ、だめです」
「くだらないことだ」
「む…ぅ」
結局、厚木の良いように丸め込まれ、吉継の知りたかったことは逸らされた。
拗ねてそっぽを向いた吉継の顎を擽る骨ばった手。
今更そんなことをされても、ほだされるつもりはない。
「吉継」
「知りません」
あっさり引いた手に、虚勢をはれなくなり、チラリとうしろを見る。
目が合った厚木は、想像よりも真剣な目をしていた。
「ネジが緩い頭には何を言っても通じないか? お前だけだ」
「…本当ですか」
吉継の念押しに、心底面倒臭いという表情を隠さない厚木だが、「ああ」と言った。
「俺は暇じゃない、暴れ馬のお前だけで手一杯だ。不貞を疑われるのは面白くない」
「あ…、うぅ…ごめん…なさい」
「ああ」
今までDomの言うことなど信じてこなかった。
厚木にしても、吉継を黙らせるために言っているだけで、本心は別のところにあると思っていた。一喜一憂してしまう吉継を腹のなかではせせら笑っているのだと。いわゆる”まとも”がわからず、後にも先にも動けない吉継とは違うのだから。
でも、それは吉継が勝手にそう思っていただけなのかも知れない。厚木は口が悪いし自分勝手だから途轍もなくわかりにくいが。
「自分のSubが俺のためになにかするのを嬉しく思わないわけがない」
「…そうですか」
「ここまで言われないとわからないとは…」
厚木がやれやれと盛大に呆れている。
やはり厚木は全く優しくない。嫌なDomだった。
でも。
「じゃあこれで、厚木さんとはパートナーで信頼関係ができましたか」
「どうしてお前はそう短絡的なんだ。…まあ、少しは…多分な…?」
「ひどいです」
「どこがだ」
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