神様はいない Dom/Subユニバース

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レベルアップを目指して

羞恥を越えて… 5

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 「仕事頑張って行って来い」
 笑顔で厚木に追い出されるまま、職場に着いた。


 職場に向かう車に揺られながら、生地が擦れるので気になって仕方なかった。
 吉継はポロシャツにスラックスという、クールビズスタイルだ。
 スラックスの生地が冬に比べて薄い。
 薄いのに、下着よりも固い布でゴワゴワする。
 あと、変にスースーする。
 
 歩き方も変な気がする。

 厚木に早く下着を返してもらわないと。
 恨み言の一つや二つでは足りない。絶対に言ってやる。
 


 「おはようございます」
 「おはよう蘭くん」
 相変わらず大きいねえと店長が言う。
 のんびりした店舗らしい、のんびりとした話し方である。
 店長のほかに社員は二人。推定五十代前半の男女である。
 吉継は、二人に挨拶して荷物をロッカーに入れる。

 店舗の営業時間は、十時から十八時。
 一人が九時から出勤し、開店準備をする。一人が営業時間勤務で、もう一人が閉店後の事務をして帰る。
 これをローテーションで行っている。
 吉継は、厚木の送迎をしてから十時すぎに出勤して、十六時半に勤務を終える。


 厚木の送迎は拘束時間の関係で、行きだけで良くなった。
 店長だけでなく社員二人も、吉継の身の上を知っていると思うのだが、根掘り葉掘り聞かれることはない。

 この変則な勤務形態でローテーションに入られない吉継だが、なにも言われない。
 箝口令が敷かれているのか、年の功なのか、根っから吉継に興味がないのか、かといって腫れ物に触れるようなものでもなく。吉継には判別がつかない。

 開店してそこそこ時間は経っているが、お客様がいらっしゃる気配がない。

 厚木の会社はこんなことで大丈夫なのかと不安になる。

 各々、書類の整理や、店の前の掃き掃除などしながら時間を過ごす。
 吉継は窓拭きだ。
 窓に映る自分の姿をさり気なく確認しながら、下着を履いていないことがバレないかと気になった。
 濃い色なので大丈夫だとは思うのだが、この会社の体制だと、知っていてもなにも言われない可能性がある。

 社会復帰したばかりで死にたくないので、”今日はノーパンだねえ”と天気の話をするみたいに言われても嫌だが、心の中で”今日はノーパンかあ”と思われながら仕事の話を平然とされても嫌である。
 どちらに転んでも精神衛生上よくない。

 あ、あれ?
 どちらに転んでもこれでは…。


 電話が鳴ると取り合いになり、今回は店長が勝利した。
 少し話を聞き、「すぐに確認しにいきます」といって電話を切る。

 「蘭くん、この住所に行ってくれるかな」
 「はい」
 「収集日外のゴミ投棄があるみたいだから回収して、この貼り紙をお願い」
 「はい、粗大ですか」
 「いやプラと缶の混合」
 「わかりました」
 
 
 社用車で現地へ。
 言われた通りにハイツのゴミ捨て場へ行き、プラと缶の混合袋を二袋回収する。

 ゴミ袋を取るために屈んだときに、ズボンが軽く食い込んで、思わず声を出してしまった。

 慌てて周りを確認する。
 誰もいなくてホッとした。

 掲示板に、分別を促す内容のプリントを貼る。

 通行人が後ろを通り、ビクッとする。
 通行人は、吉継の過剰な反応に「?」といった表情をしたが、通り過ぎていった。

 小さくなる後ろ姿に、力が抜ける。
 

 だめだ。
 少しでも意識してしまうと、気になって仕方ない。
 
 バレたらどうしよう…。




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