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27話 予期せぬ突発的事故
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リノアの評価が始まった時、ハウス入口のある方向から奇妙な違和感を感じた。距離的にここから近いことを考慮すると、おそらく発生源は薬学棟の中だ。
魔力と魔力が混ざり合い、何かが生まれてくるような感覚だ。
誰かが、特殊薬品の調合でもしているのか?
まあ、薬学棟内だから、気にすることもないだろう。
2人の選別方法を見ていたけど、僕の視点から見た限り、試験評価はリノアの方が上だろう。リノアは自分の魔力を繊細に扱い、時間をかけてヨモギ草の動きを注意深く観察していた。ルティナの方は途中までは良かったけど、ヨモギ草の品質を見極める際、観察力が足りなかったせいで、動きの違いを見極められなかった。
まあ、勝負しているわけでもないし、優劣はともかくとして、僕の見立てでは2人ともCランク以上を選んでいるから、文句なしの合格だろう。
ディムエさんの評価結果は、僕の予想通り2人ともCランク以上を選別していた。褒めようと思った時、さっき感じた場所から急に莫大なエネルギーを感知した。これは、複数の何かが反応して、新規のものが生まれる際に発せられる現象だ。前世、陰陽師の術開発や術具開発においても、似たような現象と遭遇している。
おいおい、まずいぞ。
尋常じゃない程の強い魔力を感じる。
風船の中に空気をどんどん流入させていき、今は臨界点に近い状態だ。
このままだと、大爆発……やばい!!
「全員、伏せろ~~~~~」
僕はありったけの声で言うと、急いで2人を捕まえて地面へと伏せさせた。その瞬間、薬学棟のある方向から大音量の爆発音が聞こえ、爆風がビニールハウスの入口を通して、僕達に襲いかかる。
僕は、急いで高熱を帯びた爆風の力を左右に分かれるよう、魔術[風壁]を展開する。
ここでのイメージは、三角錐だ。
三角錐の頂点を入口に向けることで、爆風の威力を最小限へと軽減させる。
咄嗟のことで、僕らはともかく、ディムエさんへの展開が遅れた。
「な…なにこれ~~~」
「なにが起きたの!?」
風速、何メートルあるんだ?
ビニールハウスが、爆風で吹っ飛んでいく。
収まるまで、魔法を維持させないと!!
爆風自体は5秒程で収まったので、僕たちは立ち上がり、周囲を見渡す。ディムエさんは少し飛ばされたようで、彼のもとへ向かい容体を確認すると、衝撃で気絶しているだけだ。
「お兄ちゃん…ビニールハウスが全部なくなってる。みんな、さっきの爆風で吹き飛んだんだ」
この近辺には、幾つかビニールハウスがあり、それらを管理する人々も少数いたけど、全てが風で吹き飛んでいて、誰もいなくなっている。全員が突然の出来事で対応できず、風で飛ばされたか。
「リョウトさん、薬学棟が…何か変だよ」
リノアが絶句しているので、薬学棟を確認すると、建物の被害が軽微だ。
「なるほど、おかしいね」
「何処がおかしいの? ひび割れだけで済んでいるよ」
こらこらルティナ、そんな不思議そうな顔をしてはいけないよ。
「ルティナ、周囲を見渡してごらん。爆風の被害が、薬学棟入口から僕たちのいるビニールハウス区画のある方向だけとなっているだろ? つまり、薬学棟の中で爆発が起きて、理由は不明だけど、その爆風が一方向にだけ吹いたんだ。その肝心の建物の全ての窓が無傷で、外壁だけひび割れ、おかしいと思わない?」
あの爆風の威力を考慮すると、建物内にいた人々の生存は絶望的かもしれない。
「確かに、おかしい。あ!! それなら、建物内にいる人たちを助けにいこうよ!!」
ルティナが慌てて薬学棟に向かおうとしたので、僕は彼女の襟首を掴む。
「ふぎゃ!? お兄ちゃん、なんで止めるの?」
「そのまま建物内に入ったら、君が死ぬかもしれないからだよ」
「え!?」
リノアは建物をじっと見つめているから、内部の危険性を漠然と見抜いているのかもしれない。
「いいかい、薬学棟の中には、世界中に存在するあらゆる薬剤が集められた保管庫とかがある。そこには、人に有用なものもあれば、害をもたらすものもある。建物内の爆発事故なら、そういった試薬が風で散乱しているから、中に入った者はそれらを吸い込んで死ぬ恐れもあるってこと」
ルティナとリノアの顔色が、どんどん悪くなっていく。毒物劇物が何処に保管されているのか、爆発が何処で起きたのかが不明な以上、舞い上がったものが何処に集積されているのかもわからないので迂闊に入れない。
「そんな…それじゃあ建物内にいた人たちは?」
「死んでいる可能性が高いね」
相当強力だったのか、爆風の範囲は分かりやすく扇形状になっている。
その始点となる場所が、薬学棟の1階正面入口だ。
ここから見える範囲だと、窓という窓が全て閉ざされている。恐らく、建物全体に物理と魔法の両面からの耐爆構造が施されていたから、さっきの爆発にも耐えられた。しかし、爆発で生じた衝撃波や爆風のエネルギーが消えたわけじゃない。それらは内部を通って1点に集約され、逃げ道となっている正面玄関から一気に放出されたんだ。
敷地内にいる人々が、薬学棟へと走ってきている。これ程の大爆発は前代未聞の事態、ここから大騒ぎになるだろうから、僕たちも次の行動を考えないといけない。ただ、ルティナの性格を考えると…
「お兄ちゃん、私は元巫女だけど、それでも私の魔法で怪我人を治療したい」
言うと思った。
魔力と魔力が混ざり合い、何かが生まれてくるような感覚だ。
誰かが、特殊薬品の調合でもしているのか?
まあ、薬学棟内だから、気にすることもないだろう。
2人の選別方法を見ていたけど、僕の視点から見た限り、試験評価はリノアの方が上だろう。リノアは自分の魔力を繊細に扱い、時間をかけてヨモギ草の動きを注意深く観察していた。ルティナの方は途中までは良かったけど、ヨモギ草の品質を見極める際、観察力が足りなかったせいで、動きの違いを見極められなかった。
まあ、勝負しているわけでもないし、優劣はともかくとして、僕の見立てでは2人ともCランク以上を選んでいるから、文句なしの合格だろう。
ディムエさんの評価結果は、僕の予想通り2人ともCランク以上を選別していた。褒めようと思った時、さっき感じた場所から急に莫大なエネルギーを感知した。これは、複数の何かが反応して、新規のものが生まれる際に発せられる現象だ。前世、陰陽師の術開発や術具開発においても、似たような現象と遭遇している。
おいおい、まずいぞ。
尋常じゃない程の強い魔力を感じる。
風船の中に空気をどんどん流入させていき、今は臨界点に近い状態だ。
このままだと、大爆発……やばい!!
「全員、伏せろ~~~~~」
僕はありったけの声で言うと、急いで2人を捕まえて地面へと伏せさせた。その瞬間、薬学棟のある方向から大音量の爆発音が聞こえ、爆風がビニールハウスの入口を通して、僕達に襲いかかる。
僕は、急いで高熱を帯びた爆風の力を左右に分かれるよう、魔術[風壁]を展開する。
ここでのイメージは、三角錐だ。
三角錐の頂点を入口に向けることで、爆風の威力を最小限へと軽減させる。
咄嗟のことで、僕らはともかく、ディムエさんへの展開が遅れた。
「な…なにこれ~~~」
「なにが起きたの!?」
風速、何メートルあるんだ?
ビニールハウスが、爆風で吹っ飛んでいく。
収まるまで、魔法を維持させないと!!
爆風自体は5秒程で収まったので、僕たちは立ち上がり、周囲を見渡す。ディムエさんは少し飛ばされたようで、彼のもとへ向かい容体を確認すると、衝撃で気絶しているだけだ。
「お兄ちゃん…ビニールハウスが全部なくなってる。みんな、さっきの爆風で吹き飛んだんだ」
この近辺には、幾つかビニールハウスがあり、それらを管理する人々も少数いたけど、全てが風で吹き飛んでいて、誰もいなくなっている。全員が突然の出来事で対応できず、風で飛ばされたか。
「リョウトさん、薬学棟が…何か変だよ」
リノアが絶句しているので、薬学棟を確認すると、建物の被害が軽微だ。
「なるほど、おかしいね」
「何処がおかしいの? ひび割れだけで済んでいるよ」
こらこらルティナ、そんな不思議そうな顔をしてはいけないよ。
「ルティナ、周囲を見渡してごらん。爆風の被害が、薬学棟入口から僕たちのいるビニールハウス区画のある方向だけとなっているだろ? つまり、薬学棟の中で爆発が起きて、理由は不明だけど、その爆風が一方向にだけ吹いたんだ。その肝心の建物の全ての窓が無傷で、外壁だけひび割れ、おかしいと思わない?」
あの爆風の威力を考慮すると、建物内にいた人々の生存は絶望的かもしれない。
「確かに、おかしい。あ!! それなら、建物内にいる人たちを助けにいこうよ!!」
ルティナが慌てて薬学棟に向かおうとしたので、僕は彼女の襟首を掴む。
「ふぎゃ!? お兄ちゃん、なんで止めるの?」
「そのまま建物内に入ったら、君が死ぬかもしれないからだよ」
「え!?」
リノアは建物をじっと見つめているから、内部の危険性を漠然と見抜いているのかもしれない。
「いいかい、薬学棟の中には、世界中に存在するあらゆる薬剤が集められた保管庫とかがある。そこには、人に有用なものもあれば、害をもたらすものもある。建物内の爆発事故なら、そういった試薬が風で散乱しているから、中に入った者はそれらを吸い込んで死ぬ恐れもあるってこと」
ルティナとリノアの顔色が、どんどん悪くなっていく。毒物劇物が何処に保管されているのか、爆発が何処で起きたのかが不明な以上、舞い上がったものが何処に集積されているのかもわからないので迂闊に入れない。
「そんな…それじゃあ建物内にいた人たちは?」
「死んでいる可能性が高いね」
相当強力だったのか、爆風の範囲は分かりやすく扇形状になっている。
その始点となる場所が、薬学棟の1階正面入口だ。
ここから見える範囲だと、窓という窓が全て閉ざされている。恐らく、建物全体に物理と魔法の両面からの耐爆構造が施されていたから、さっきの爆発にも耐えられた。しかし、爆発で生じた衝撃波や爆風のエネルギーが消えたわけじゃない。それらは内部を通って1点に集約され、逃げ道となっている正面玄関から一気に放出されたんだ。
敷地内にいる人々が、薬学棟へと走ってきている。これ程の大爆発は前代未聞の事態、ここから大騒ぎになるだろうから、僕たちも次の行動を考えないといけない。ただ、ルティナの性格を考えると…
「お兄ちゃん、私は元巫女だけど、それでも私の魔法で怪我人を治療したい」
言うと思った。
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