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26話 実習の厳しさ② *リノア視点
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タルパと化した私を従属化し、主人となってくれたリョウトさん。
彼がいてくれたおかげで、ルティナは生きているし、私は私でいられている。
リョウトさんは私の目標、色々と謎多き人だけど、あの魔力制御能力とギフトの力は本物だ。
聖女様より上手な人を、初めて見た。
でも、ずっと頼っていくつもりはない。
もっと強くなって、私がルティナを守るんだ。
あの子は、魔力量もギフトも恵まれていて、まさに聖女となるべき存在だ。
巫女として選ばれた私自身、あの子のことを親友だと思っているけど、同時に嫉妬の対象でもあった。いつも負けたくないと思い、必死に魔力制御訓練を重ねた事で、制御だけはルティナより優れていると思う。
多分、マクレミーサもルティナの才能に気づいてる。
だから、私たちを囮にしたんだ。
タルパになった私は付近を見渡すと、ルティナがいないことを知り一安心したけど、すぐ近くに自分の遺体があったことで、自分自身の不甲斐なさに情けなくなって泣いた。それと同時に、マクレミーサへの恨みが急速に膨れ上がってきたけど、ルティナの安否の方が気になったから、恨み自体を無理矢理抑え込んだ。
庭にいないからと言って、無事だとは限らない。
私は邸内に入り彼女を探したけど、何処にもいないとわかり、生きているんだと実感したところで、侵入者が邸内に入ってきた。奴らは、『庭で死んだガキのタルパが必ず邸内にいる。探し出して、討伐するぞ』という言葉を聞いて、咄嗟に隠れたけど、結局見つかってしまい絶望に囚われたけど、ルティナがリョウトさんを連れて助けに来てくれた。
ルティナがマクレミーサに罪を背負わされ破門になったと聞いた時、怒りが湧いてきたけど、リョウトさんが今後どうしたいのか、マクレミーサを殺したいのか、包み隠さずハッキリ言ってくれたお陰で、私は自分の心を見つめ直すことができた。
タルパになった以上、私は聖女になれない。
これからどうするか、私の心は決まっている。
【私はルティナの護衛騎士になる】
彼女は、これからどんどん目立つ存在になる。
リョウトさんだって、いつか私たちから離れる。
そうなった時、ルティナを守る存在が必要だ。
私は、もう嫉妬なんてしない。
ルティナが死んだ時、私も一緒に成仏すればいい。
そのためにも、こんな試験なんて1発で合格したいところだけど、今の私はタルパで、闇属性しか扱えない。闇属性は光と違い、謎が多い。闇自体を扱える人が、光よりも非常に少ないからだ。嫌われているわけじゃないけど、謎が多い分、どうしたらいいのかがわからない。それをリョウトさんに相談すると、意外な答えが返ってきた。
『僕の知る限り、闇魔法や闇関係のスキルは、超絶便利だよ。物質だけでなく、思念体すら燃やせる闇魔法[ダークフレイム]、影から影へ移動するスキル[シャドウムーブ]や、闇にアイテムを保管できるスキル[シャドウボックス]とかが良いね。善人の先輩タルパが見つかるまで、君が自身の望むスキルや魔法を取得できるよう、色々と試していけばいいのさ』
自分の望むものを求めるのなら、それを得られるよう自分で色々と試していく、そう言われて納得できた。
ただ、今の時点ではここで役立てられるスキルや魔法もないから、闇の魔力だけでなんとかしたい。そういえば、ヨモギ草は光属性を持っているから、ここで闇の魔力を散布すれば、他の薬草や雑草類とは違う変化を示すかもしれない。リョウトさんのように、まだ自在には扱えないけど、散布するくらいなら出来る。
「やってみよう」
私の周囲にだけ散布すると、色んな草たちがおかしな動きを見せるけど、1種類だけ魔力を仄かに発光して避けているような動きを示した。形から言って、これがヨモギ草だ。周囲には、同じ動きをするものが何個もあるけど、よくよく観察すれば、《か弱い光を輝かせながら華麗に私の魔力を回避する草》《光を発しながら、必死で闇を避けていく草》《闇に力負けして枯れていく草》などがある。
これなら、Cランク以上を選別して採取できる。
焦らず時間をかけて10本を採取して、ディムエさんのもとへ行くと、ルティナの評価が終わっていた。全てヨモギ草ということは、私と似た方法で選別したんだ。
「次、私の採取した草を評価して下さい」
ディムエさんが私の選別したものを観察していくと、何故か身体を震わせていく。何か、間違えた? ううん、私の見立てでは完璧のはずだ。
「こんな事が…Sが3本、Aが4本、Bが3本、全てがヨモギ草…ありえない、初回の合格率は20%程なのに……全く、君たちは期待の大型新人ですね。全員、合格です」
やった!!
1発合格だ!!
「ルティナ」
「リノア」
「「やったね!!」」
私たちは笑顔で顔を見合わせ、ハイタッチを交わす。リョウトさんにもやりたいから、そっちに顔を向けると、何故かハウス入口の方をじっと見つめている。顔も真剣そのもの、何かあるのと思った瞬間、リョウトさんが何かに驚き慌てて、こっちを向く。
「全員ふせろーーーーー!!」
「「え?」」
リョウトさんが私とルティナを捕まえて、地面に伏せた途端、大きな爆発音が聞こえてきて、入口から全身が吹っ飛ぶくらいの暴風が私たちを襲ってきた。
彼がいてくれたおかげで、ルティナは生きているし、私は私でいられている。
リョウトさんは私の目標、色々と謎多き人だけど、あの魔力制御能力とギフトの力は本物だ。
聖女様より上手な人を、初めて見た。
でも、ずっと頼っていくつもりはない。
もっと強くなって、私がルティナを守るんだ。
あの子は、魔力量もギフトも恵まれていて、まさに聖女となるべき存在だ。
巫女として選ばれた私自身、あの子のことを親友だと思っているけど、同時に嫉妬の対象でもあった。いつも負けたくないと思い、必死に魔力制御訓練を重ねた事で、制御だけはルティナより優れていると思う。
多分、マクレミーサもルティナの才能に気づいてる。
だから、私たちを囮にしたんだ。
タルパになった私は付近を見渡すと、ルティナがいないことを知り一安心したけど、すぐ近くに自分の遺体があったことで、自分自身の不甲斐なさに情けなくなって泣いた。それと同時に、マクレミーサへの恨みが急速に膨れ上がってきたけど、ルティナの安否の方が気になったから、恨み自体を無理矢理抑え込んだ。
庭にいないからと言って、無事だとは限らない。
私は邸内に入り彼女を探したけど、何処にもいないとわかり、生きているんだと実感したところで、侵入者が邸内に入ってきた。奴らは、『庭で死んだガキのタルパが必ず邸内にいる。探し出して、討伐するぞ』という言葉を聞いて、咄嗟に隠れたけど、結局見つかってしまい絶望に囚われたけど、ルティナがリョウトさんを連れて助けに来てくれた。
ルティナがマクレミーサに罪を背負わされ破門になったと聞いた時、怒りが湧いてきたけど、リョウトさんが今後どうしたいのか、マクレミーサを殺したいのか、包み隠さずハッキリ言ってくれたお陰で、私は自分の心を見つめ直すことができた。
タルパになった以上、私は聖女になれない。
これからどうするか、私の心は決まっている。
【私はルティナの護衛騎士になる】
彼女は、これからどんどん目立つ存在になる。
リョウトさんだって、いつか私たちから離れる。
そうなった時、ルティナを守る存在が必要だ。
私は、もう嫉妬なんてしない。
ルティナが死んだ時、私も一緒に成仏すればいい。
そのためにも、こんな試験なんて1発で合格したいところだけど、今の私はタルパで、闇属性しか扱えない。闇属性は光と違い、謎が多い。闇自体を扱える人が、光よりも非常に少ないからだ。嫌われているわけじゃないけど、謎が多い分、どうしたらいいのかがわからない。それをリョウトさんに相談すると、意外な答えが返ってきた。
『僕の知る限り、闇魔法や闇関係のスキルは、超絶便利だよ。物質だけでなく、思念体すら燃やせる闇魔法[ダークフレイム]、影から影へ移動するスキル[シャドウムーブ]や、闇にアイテムを保管できるスキル[シャドウボックス]とかが良いね。善人の先輩タルパが見つかるまで、君が自身の望むスキルや魔法を取得できるよう、色々と試していけばいいのさ』
自分の望むものを求めるのなら、それを得られるよう自分で色々と試していく、そう言われて納得できた。
ただ、今の時点ではここで役立てられるスキルや魔法もないから、闇の魔力だけでなんとかしたい。そういえば、ヨモギ草は光属性を持っているから、ここで闇の魔力を散布すれば、他の薬草や雑草類とは違う変化を示すかもしれない。リョウトさんのように、まだ自在には扱えないけど、散布するくらいなら出来る。
「やってみよう」
私の周囲にだけ散布すると、色んな草たちがおかしな動きを見せるけど、1種類だけ魔力を仄かに発光して避けているような動きを示した。形から言って、これがヨモギ草だ。周囲には、同じ動きをするものが何個もあるけど、よくよく観察すれば、《か弱い光を輝かせながら華麗に私の魔力を回避する草》《光を発しながら、必死で闇を避けていく草》《闇に力負けして枯れていく草》などがある。
これなら、Cランク以上を選別して採取できる。
焦らず時間をかけて10本を採取して、ディムエさんのもとへ行くと、ルティナの評価が終わっていた。全てヨモギ草ということは、私と似た方法で選別したんだ。
「次、私の採取した草を評価して下さい」
ディムエさんが私の選別したものを観察していくと、何故か身体を震わせていく。何か、間違えた? ううん、私の見立てでは完璧のはずだ。
「こんな事が…Sが3本、Aが4本、Bが3本、全てがヨモギ草…ありえない、初回の合格率は20%程なのに……全く、君たちは期待の大型新人ですね。全員、合格です」
やった!!
1発合格だ!!
「ルティナ」
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「「やったね!!」」
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「全員ふせろーーーーー!!」
「「え?」」
リョウトさんが私とルティナを捕まえて、地面に伏せた途端、大きな爆発音が聞こえてきて、入口から全身が吹っ飛ぶくらいの暴風が私たちを襲ってきた。
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