5 / 38
第1章 誘拐騒動ともふもふとの出会い
5話 囚われたアキトとリリアナ
しおりを挟む
う…ここ何処?
僕は、お父さんの職場の見学会に行っていたはずなのに。
目を開けると、リリアナが心配そうな目で、僕を見てる。
「よかった、目が覚めたのね」
「ここは?」
手足を動かそうとしたら、縄で縛られていて、動けそうにない。ここは物置部屋なのか、荷物があちこちに置かれていて、周囲は窓のない壁に覆われている。
出入り口は、1つの扉だけか。
「多分、何処かの空家だと思うわ。私も目覚めたばかりで、よくわからないの。誰かが、私たちを誘拐したようね」
茂みから出てきた4つの手か!?
「大人の男たちの声が、外から複数聞こえてきたわ。奴等は身代金目的で、私を誘拐したのよ。あなたは、それに巻き込まれただけ」
誘拐!? あの時に見た手は、そういう事だったのか。少し離れた場所には、大人たちだっているのに、大胆な行動をとる人たちだ。
「リリアナ、怪我は?」
「大丈夫よ。それより、巻き込んでしまってごめんね」
「そんな悲しそうな顔をしないで。僕は怒ってなんかいないから」
「でも、私のせいで…」
僕は込み上げてくる恐怖を必死に抑えつけ、リリアナを安心させる。ここにいるのは僕たちだけ、ここで僕が泣き叫べば、彼女もおかしくなってしまう。こういう時こそ、男の僕がしっかりしないといけないんだ。今、僕たちは手足を縛られ、逃げられない状態だから、せめて外にいる大人たちの声を聞いて、ここが何処かだけでも把握したい。
僕は芋虫のような動きをしながら、入口のある扉に行き、耳を澄ませると、言い争っているかのような声が聞こえてくる。
「ここ、俺らの休憩場所ってこと理解してくれたか?」
「わかったから待ってくれ!! 仲間の慇懃な対応には謝る!! 今すぐに、荷物を持って家から出て…」
「その必要はねえ」
え? 何、どういうこと?
会話が途切れたと思ったら、そこから何も聞こえなくなった。
会話の内容が気になったから、耳を扉につけようとした瞬間、扉が開く。
黒い覆面を被る2人の男たちと、目が合う。
どう考えても、僕たちを助けにきてくれた騎士や冒険者じゃない。
「ち、今度はガキか。無事にミントスに入れて、ようやく休めると思ったのに、肝心の休憩場所が占領されてるってありえねえだろ。こいつらも、さっさと殺してその鞄に入れるぞ」
1人の男が、僕に剣を振りかぶる。
僕は怖くて動けず、咄嗟に目を閉じる。
「ちょい待ち」
「なんで止める?」
ふと目を開けると、もう1人の仲間の左腕が僕の目の前にあり、何故か止めていた。
「よく見ろ。奥にいる女の子は、どう見ても貴族令嬢だ。何かあった時のために、人質として連れていくべきだ。取り引きが終わり次第、始末すればいい」
「たしかに…目的地までまだかなりあるし、連れていくべきか。リーダーと相談してくる」
助かったの? 1人が出ていくと、残った男が僕に話しかけてきた。
「お前ら、もしかして誘拐されたくちか?」
素直に答えた方が無難だよね。
「はい」
「あちゃああ~~、これは想定外。俺らは、その現場に遭遇したのか。お前は……巻き込まれただけの平民?」
う、服装だけで、そこまでわかるものなんだ。
「はい。あ…あの僕たちを誘拐した人たちは?」
「ああ、ここ」
ここと言った覆面の男性は、自分の鞄の中を指す。
「子供が、この意味を知る必要はない。俺の任務に支障が出ないよう、君らをどうにかしないとな」
ちらっとリリアナを見ると、彼女は全身を震わせており、話せる状況じゃないと一目でわかる。ここは、僕がしっかりしないと。
「おじさん、僕たちを助けてよ。なんでもするから」
「そうしたいのは山々なんだが、君らの存在が他の連中にバレている以上、俺も下手に動けない。俺の任務が終わるまで、殺されないよう仕向けるから大人しくしていろ」
助けてくれるってこと?
さっきの人と違って、この人は信用できるのかな?
この人たちの抱えている任務って何だろう?
覆面の男性は外に戻り、仲間の人と何か相談し合い、話し合いを終えると、またここに入ってきた。
「なんとか生かす方向にまとまったが、当分の間は目隠しをさせてもらう」
「え?」
彼は、僕の目に何かを巻き付けていく。視界が真っ暗闇になって、不安感が急速に増していく。
「目隠しをとるなよ。俺らの素顔を見た瞬間、殺されると思え」
死にたくないので、僕は慌てて首を縦に振る。
「今からお前たちを持ち上げて、馬車内へ移動させるから、大きな声をたてるな。奴らは任務のせいで、神経を尖らせてるからな」
僕は死にたくないので、馬車に入れられるまでは黙り込むことにした。優しく抱き上げられると、そのまま移動していき、馬の声が聞こえたと思ったら、そっと何処かに置かれた。その後、何かを持ってきて、僕の横にそっと置かれる。
多分、これはリリアナだ。
「アキト…私たち…これからどうなるの?」
「わからない。誘拐犯たちが消えたと思ったら、今度は別の人たちに誘拐されたようだけど」
「安心しろ。俺の任務が終わり次第、解放してやる。予定通り進めば、あと3日で終わるはずだ。それまでの間、不安で窮屈と思うが我慢してくれ」
なんか変だ。
あの人たちの任務と、この人の任務って同じなのかな? 近くに仲間がいるからなのか、必要なことしか言わないので、イマイチ信用できない。
「おっと、忘れるところだった。長時間不安に晒されると、精神に異常をきたすかもしれないから、2日程眠っていてくれ。食事やトイレを必要としない分、奴らの意識を逸らせる」
「あ…」
男がそう言うと、リリアナの声が聞こえ、何かが倒れるような音がした。
「リリアナに、何かしたの?」
「安心しろ、クロロっていう眠り粉を軽く吸わせただけだ。人を強制的に長期間睡眠させる効果がある。ほら」
「あ…」
「出来れば、俺の任務が終わるまで、眠っていてほしいね。まあ、目覚めても、あいつがいるからフォローしてくれるだろ」
鼻と口に何かつけられると、僕はそのまま意識を失った。
僕は、お父さんの職場の見学会に行っていたはずなのに。
目を開けると、リリアナが心配そうな目で、僕を見てる。
「よかった、目が覚めたのね」
「ここは?」
手足を動かそうとしたら、縄で縛られていて、動けそうにない。ここは物置部屋なのか、荷物があちこちに置かれていて、周囲は窓のない壁に覆われている。
出入り口は、1つの扉だけか。
「多分、何処かの空家だと思うわ。私も目覚めたばかりで、よくわからないの。誰かが、私たちを誘拐したようね」
茂みから出てきた4つの手か!?
「大人の男たちの声が、外から複数聞こえてきたわ。奴等は身代金目的で、私を誘拐したのよ。あなたは、それに巻き込まれただけ」
誘拐!? あの時に見た手は、そういう事だったのか。少し離れた場所には、大人たちだっているのに、大胆な行動をとる人たちだ。
「リリアナ、怪我は?」
「大丈夫よ。それより、巻き込んでしまってごめんね」
「そんな悲しそうな顔をしないで。僕は怒ってなんかいないから」
「でも、私のせいで…」
僕は込み上げてくる恐怖を必死に抑えつけ、リリアナを安心させる。ここにいるのは僕たちだけ、ここで僕が泣き叫べば、彼女もおかしくなってしまう。こういう時こそ、男の僕がしっかりしないといけないんだ。今、僕たちは手足を縛られ、逃げられない状態だから、せめて外にいる大人たちの声を聞いて、ここが何処かだけでも把握したい。
僕は芋虫のような動きをしながら、入口のある扉に行き、耳を澄ませると、言い争っているかのような声が聞こえてくる。
「ここ、俺らの休憩場所ってこと理解してくれたか?」
「わかったから待ってくれ!! 仲間の慇懃な対応には謝る!! 今すぐに、荷物を持って家から出て…」
「その必要はねえ」
え? 何、どういうこと?
会話が途切れたと思ったら、そこから何も聞こえなくなった。
会話の内容が気になったから、耳を扉につけようとした瞬間、扉が開く。
黒い覆面を被る2人の男たちと、目が合う。
どう考えても、僕たちを助けにきてくれた騎士や冒険者じゃない。
「ち、今度はガキか。無事にミントスに入れて、ようやく休めると思ったのに、肝心の休憩場所が占領されてるってありえねえだろ。こいつらも、さっさと殺してその鞄に入れるぞ」
1人の男が、僕に剣を振りかぶる。
僕は怖くて動けず、咄嗟に目を閉じる。
「ちょい待ち」
「なんで止める?」
ふと目を開けると、もう1人の仲間の左腕が僕の目の前にあり、何故か止めていた。
「よく見ろ。奥にいる女の子は、どう見ても貴族令嬢だ。何かあった時のために、人質として連れていくべきだ。取り引きが終わり次第、始末すればいい」
「たしかに…目的地までまだかなりあるし、連れていくべきか。リーダーと相談してくる」
助かったの? 1人が出ていくと、残った男が僕に話しかけてきた。
「お前ら、もしかして誘拐されたくちか?」
素直に答えた方が無難だよね。
「はい」
「あちゃああ~~、これは想定外。俺らは、その現場に遭遇したのか。お前は……巻き込まれただけの平民?」
う、服装だけで、そこまでわかるものなんだ。
「はい。あ…あの僕たちを誘拐した人たちは?」
「ああ、ここ」
ここと言った覆面の男性は、自分の鞄の中を指す。
「子供が、この意味を知る必要はない。俺の任務に支障が出ないよう、君らをどうにかしないとな」
ちらっとリリアナを見ると、彼女は全身を震わせており、話せる状況じゃないと一目でわかる。ここは、僕がしっかりしないと。
「おじさん、僕たちを助けてよ。なんでもするから」
「そうしたいのは山々なんだが、君らの存在が他の連中にバレている以上、俺も下手に動けない。俺の任務が終わるまで、殺されないよう仕向けるから大人しくしていろ」
助けてくれるってこと?
さっきの人と違って、この人は信用できるのかな?
この人たちの抱えている任務って何だろう?
覆面の男性は外に戻り、仲間の人と何か相談し合い、話し合いを終えると、またここに入ってきた。
「なんとか生かす方向にまとまったが、当分の間は目隠しをさせてもらう」
「え?」
彼は、僕の目に何かを巻き付けていく。視界が真っ暗闇になって、不安感が急速に増していく。
「目隠しをとるなよ。俺らの素顔を見た瞬間、殺されると思え」
死にたくないので、僕は慌てて首を縦に振る。
「今からお前たちを持ち上げて、馬車内へ移動させるから、大きな声をたてるな。奴らは任務のせいで、神経を尖らせてるからな」
僕は死にたくないので、馬車に入れられるまでは黙り込むことにした。優しく抱き上げられると、そのまま移動していき、馬の声が聞こえたと思ったら、そっと何処かに置かれた。その後、何かを持ってきて、僕の横にそっと置かれる。
多分、これはリリアナだ。
「アキト…私たち…これからどうなるの?」
「わからない。誘拐犯たちが消えたと思ったら、今度は別の人たちに誘拐されたようだけど」
「安心しろ。俺の任務が終わり次第、解放してやる。予定通り進めば、あと3日で終わるはずだ。それまでの間、不安で窮屈と思うが我慢してくれ」
なんか変だ。
あの人たちの任務と、この人の任務って同じなのかな? 近くに仲間がいるからなのか、必要なことしか言わないので、イマイチ信用できない。
「おっと、忘れるところだった。長時間不安に晒されると、精神に異常をきたすかもしれないから、2日程眠っていてくれ。食事やトイレを必要としない分、奴らの意識を逸らせる」
「あ…」
男がそう言うと、リリアナの声が聞こえ、何かが倒れるような音がした。
「リリアナに、何かしたの?」
「安心しろ、クロロっていう眠り粉を軽く吸わせただけだ。人を強制的に長期間睡眠させる効果がある。ほら」
「あ…」
「出来れば、俺の任務が終わるまで、眠っていてほしいね。まあ、目覚めても、あいつがいるからフォローしてくれるだろ」
鼻と口に何かつけられると、僕はそのまま意識を失った。
277
あなたにおすすめの小説
【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい
寿明結未(旧・うどん五段)
ファンタジー
昔やっていたゲームに、大型アップデートで追加されたソレは、小さな箱庭の様だった。
ビーチがあって、畑があって、釣り堀があって、伐採も出来れば採掘も出来る。
ビーチには人が軽く住めるくらいの広さがあって、畑は枯れず、釣りも伐採も発掘もレベルが上がれば上がる程、レアリティの高いものが取れる仕組みだった。
時折、海から流れつくアイテムは、ハズレだったり当たりだったり、クジを引いてる気分で楽しかった。
だから――。
「リディア・マルシャン様のスキルは――箱庭師です」
異世界転生したわたくし、リディアは――そんな箱庭を目指しますわ!
============
小説家になろうにも上げています。
一気に更新させて頂きました。
中国でコピーされていたので自衛です。
「天安門事件」
荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました
夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。
スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。
ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。
驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。
※カクヨムで先行配信をしています。
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
異世界人生を楽しみたい そのためにも赤ん坊から努力する
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は朝霧 雷斗(アサギリ ライト)
前世の記憶を持ったまま僕は別の世界に転生した
生まれてからすぐに両親の持っていた本を読み魔法があることを学ぶ
魔力は筋力と同じ、訓練をすれば上達する
ということで努力していくことにしました
【完結】奪われたものを取り戻せ!〜転生王子の奪還〜
伽羅
ファンタジー
事故で死んだはずの僕は、気がついたら異世界に転生していた。
しかも王子だって!?
けれど5歳になる頃、宰相の謀反にあい、両親は殺され、僕自身も傷を負い、命からがら逃げ出した。
助けてくれた騎士団長達と共に生き延びて奪還の機会をうかがうが…。
以前、投稿していた作品を加筆修正しています。
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
ダンジョンに捨てられた私 奇跡的に不老不死になれたので村を捨てます
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
私の名前はファム
前世は日本人、とても幸せな最期を迎えてこの世界に転生した
記憶を持っていた私はいいように使われて5歳を迎えた
村の代表だった私を拾ったおじさんはダンジョンが枯渇していることに気が付く
ダンジョンには栄養、マナが必要。人もそのマナを持っていた
そう、おじさんは私を栄養としてダンジョンに捨てた
私は捨てられたので村をすてる
石しか生成出来ないと追放されましたが、それでOKです!
寿明結未(旧・うどん五段)
ファンタジー
夏祭り中に異世界召喚に巻き込まれた、ただの一般人の桜木ユリ。
皆がそれぞれ素晴らしいスキルを持っている中、桜木の持つスキルは【石を出す程度の力】しかなく、余りにも貧相なそれは皆に笑われて城から金だけ受け取り追い出される。
この国ではもう直ぐ戦争が始まるらしい……。
召喚された3人は戦うスキルを持っていて、桜木だけが【石を出す程度の能力】……。
確かに貧相だけれど――と思っていたが、意外と強いスキルだったようで!?
「こうなったらこの国を抜け出して平和な国で就職よ!」
気合いを入れ直した桜木は、商業ギルド相手に提案し、国を出て違う場所で新生活を送る事になるのだが、辿り着いた国にて、とある家族と出会う事となる――。
★暫く書き溜めが結構あるので、一日三回更新していきます! 応援よろしくお願いします!
★カクヨム・小説家になろう・アルファポリスで連載中です。
中国でコピーされていたので自衛です。
「天安門事件」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる