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ばあちゃんのご飯は量が多い
しおりを挟む「……ただいま~」
「あぁ、おかえり……どうしたんだい? そんな夏に干からびたカタツムリみたいな顔して。そんなに今日は熱かったかねぇ?」
「どんな顔だよ……」
家のドアを開ければ、丁度ばあちゃんが玄関近くにいておかえりと言ってくれた。
だけど僕の様子を見て、よくわからない例えを言ってくる。
夏に干からびたカタツムリみたいな顔って何さ、しわくちゃなの? カピカピなの?
「ちょっと筋トレしてただけだよ」
前にばあちゃんの肩もみしてから、僕の力の無さを実感して筋トレをするようにしている。
腕立て、腹筋、背筋、スクワット、走り込みといった簡単なものを30分くらいだけど。
学校でやるのもなんか恥ずかしいし、近場の河川敷辺りを使ってこっそりやっている。
……時々通りすがるおじいさんおばあさんの目が生暖かい気がするけど、学校の知り合いに見られるよりはまし、かな?
「……だけど、全然力付いた気がしないんだよなぁ」
「そりゃ、一朝一夕で簡単にいくもんかい」
グダ―っと鞄を下ろして玄関に寝転がるボクに、ばあちゃんが呆れたように言ってくる。
「こういうのは毎日の積み重ねだよ、勉強と一緒さ。よく動いて、よく食べて、よく寝る。そうして少しずつ体ってのは大きくなっていくんだよ」
「……わかってるよそんなこと」
僕だって流石に1日、2日で簡単に筋肉モリモリになれるとは思ってない。
だけど運動してる人はいつもこんなに疲れて家に帰って来るのかと思うと、あまり長続きしそうになさそうだ。
たった30分程度なのになぁ。
「まぁ、とりあえずそんなに動いた後の飯はさぞ上手いだろうさ。もう少し待ってな、旨い飯作ってやるから。たんと食べて、力付けるんだね」
「……ばあちゃん、前から言おうと思ってたんだけど、もう少しご飯の量減らしてくれてもいいんだよ?」
ばあちゃんの作るご飯は肉じゃがだとか、里芋の煮っころがしだとか、どことなく田舎っぽい料理が多いけど、味付けは結構好きでちゃんと残さずに食べている。
そもそも作ってもらってるだけでも、文句を言う筋合いはないのはわかってるんだ。
……わかってはいるのだけど。
「このまま食べ続けてたら、僕お相撲さんになっちゃうよ」
「そうならないために運動するんだろ? 動いたら食べる、食べたら動く。食べないと体デカくならないよ」
「……だからってご飯は盛りすぎだし、おかずも多過ぎだし」
「あの程度で何言ってんだい! 別に相撲取りみたいになれとは言わないけど、男の子は少し太ってるくらいで丁度良いんだよ! あたしが小さい頃なんて、給食で男の子たちが休んだ人の分まで取り合ってたもんさね」
ばあちゃんはよくそう言って昔の話をする。
でも、ということはばあちゃんが小学生の頃のクラスの男子、皆少し太ってたのかな?
……少し想像できないや。
「とにかく、家に帰ってきたらまず手洗いうがい! ちゃんとやっとくんだよ! あと風呂入って汗も流しときな。そのうちに飯も出来るからさ」
「はーい」
そう言って、ばあちゃんは台所に入っていった。
ばあちゃんの作るご飯はおいしい、だけどその量は絶対他の家より多いと思う。
それをいつも食べてると、いつか間違いなく太るだろうな。
「……運動は少しずつでもいいから続けていこう」
そう小さな決意をした。
力をつけるため、というより太らないために。
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