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ばあちゃんは意地悪だ
しおりを挟む「……あぁ、中々いいよ。もう少し力を入れてくれたら言うことなしだね」
「それ、全然、よく、ないんじゃないの!?」
ばあちゃんとそろばん勝負して負けて、罰ゲームで肩もみしている。
毎度、ばあちゃんの物言いには腹が立って、その度につい勝負を仕掛けてるんだけど、ハンデ付けてもらってるのにいつもあっさり負ける。
そしてその度に罰ゲームが待っている。
前は庭の草むしり、その前は食器洗い、更にその前は野菜の皮むき……罰ゲームの内容はいつもいろいろだ。
で、今回は肩もみというわけ。
負けたのが地味に悔しくて、痛いくらい力を入れて揉んでるのに、ばあちゃんにとっては全然痛くないらしい。
むしろ全然足りないみたいだ。
滅茶苦茶悔しい。
「はぁ、はぁ……もう、いいでしょ?」
「なんだい、もうお終いかい? まだ10分くらいじゃないか、男の子なのにだらしないねぇ」
「うぐぅ……」
そう言われても、僕にとってはかなり力入れて揉んでいたから指か痛いんだ。
指だけじゃない、腕全体も使ってたから両腕が怠い。
腕をブランブランして疲れをとっていると、ばあちゃんはため息をして仕方ないねぇと終わらせてくれた。
「あぁ、そうだ。ほら、100円やるよ」
「……ありがと」
僕の掌の上に100円玉が置かれる。
いつも罰ゲームを受けてはいるけど、なぜかその度にこうしてお小遣いを貰っていたりする。
お手伝いの内容ごとに、貰うお小遣いの値段は変わる。
前に庭の草むしりをした時は、300円くらいだっけ。
実は僕もお小遣いを貰うために、わざと勝負を仕掛けてる所があったり。
……それでも、やっぱり負けるのは悔しいけど。
「まぁ、あんたにしちゃ、そろばんも頑張ったみたいだからね。それでお菓子でも買ってきな」
「今時、100円でお菓子って……駄菓子屋って近くにあったかなぁ」
コンビニでも多分何かしら買えるかもしれないけど、小さいチョコとか飴玉を何個かくらいだろう。
そんなの腹の足しにもならない。
まぁ、おやつ感覚なら丁度良いのかな?
「あぁ、そうそう。ちょっと問題だ」
「え、なに?」
「今、10分で100円の駄賃をやったねぇ。じゃぁ、1時間肩揉んだらいくら貰える?」
「そんなの600円じゃん」
考えるまでもない。
そう答えると、ばあちゃんはいつもの魔女みたいな笑い声をあげて僕の頭を撫でてくる。
「正解だ。よく出来たじゃないか」
「こ、こんなの、いつもの計算問題に比べたら大したことないよ」
そう言いつつも、褒められて悪い気はしない。
内心嬉しくなりながらも、どうってことないという表情を浮かべる。
だけど途端にばあちゃんはにやりと、よくする意地悪そうな笑みを浮かべて僕を見てくる。
「1時間で600円。つまり時給600円ってことだね」
「え?」
「ひぇっひぇっひぇっ。大抵の所は1時間で1000円以上するってのに、600円とは安い按摩屋もいたもんだよ」
「……え、え?」
「もっと上手くなって、いつかあたしに按摩やっとくれよ。600円でね!」
「……」
ばあちゃんが言ってることはよくわからないけど、多分いいことじゃないんだろうってことはわかる。
せっかく喜んでいたのに、これだ。
「……いつか絶対、ばあちゃんに痛いって言わせてやる」
「ひぇっひぇっひぇっ。そいつは楽しみだけど、もう少し力を付けてからにするんだね」
意地悪に笑うばあちゃんに、ムスッと頬が膨れる。
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