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三内まで歩いていく当日、僕たちは飲食物の他に、漆などの小さな交易品を携えた。これは二ツ森と、三内で飲食物と交換するものだ。
「よ、久しぶりだな」
背中に大きな籠を背負ったラドさんが、軽い口調で僕たちに挨拶をした。僕以外の人は去年からの顔見知りらしく、僕は少しばかり、身の置き場がないように感じた。
「お前がカラか。バクのやつとはまた違った匂いがするな」
ラドさんは笑いつつ、僕の頭をぐりぐりと乱暴に撫でた。
「バクさんとは仲が良いんですか?」
ラドさんの手から逃げる様にしながら、僕は尋ねた。
「何を言っているんだ。最大の被害者さ」
ラドさんは苦笑しつつ、大きな籠に入った荷物を降ろした。中身は、鳥を燻製にしたものだった。
「あいつ『みんなのお腹が空かないように』って言って、こんなに鳥を射落としたんだ。重いったらありゃしないさ」
ラドさんは文句を言いつつも、どこか嬉しそうな顔をしていた。
「じゃあ、俺とラドさんが先導をするので、ウドさんとアラは後ろを、カラとイケが真ん中に入って進みましょう」
ロウさんが口火を切り、僕たちの山越えが始まった。
二ツ森までの道のりは一度、往復したことがあったので苦にはならないと思ったのだが、いくつか崖が崩れており、遠回りをしなくてはいけなかった。
「去年、ここでがけ崩れが起きたんだ。大風が吹いた時にな」
ラドさんが指を向け、切り立った崖を見下ろした。
「落ちたら、死んじゃうよね?」
イケが座りながら、恐々と崖下を見下ろしている。
「ここの岩肌は、ずいぶん脆いみたいですね」
僕が手頃な石を拾い、崖下の隆起している部分に投げると、投げた石と同時に隆起している部分も割れた。
「そうだな。カラの石器にも使えない石みたいだな」
お兄ちゃんがそう言って、ここを迂回する形で進むことになった。何よりも、安全が第一だからだ。
太陽が海に沈む寸前に、砂浜に辿り着いた。
「確かここって、潮の満ち引きで、朝になったら海になっていることがある場所ですよね?」
僕が思い出したように言うと、ウドさんは「ああ、初めて来た時は驚いたさ」と、言葉を濁した。
「朝起きたら、目の前に白波が立っていたんだ。あと少し目が覚めるのが遅かったら、鼻に海水が入っていたよ」
ウドさんはそう言って、砂浜からかなり離れた場所まで歩き、そこに荷物を降ろした。
「ウド、そこはカニの巣がある場所だぞ?」
ラドさんが言うと、ウドさんは飛び上がるようにして起き上がり、自分のお尻を撫でた。僕がウドさんのいる場所まで行くと、土にいくつかの穴が空いていた。
「ここに、カニが巣を造っているんですね」
僕は近くにあった木の枝で穴の中を突くと、中から小さなカニが現れた。
「おいおい、じゃあ何処で寝れば安全なんだよ?」
ウドさんが困惑したような顔で、ラドさんに尋ねた。
「いっそのこと、木の上で寝ますか?」
僕が冗談を言うと、コシさんが「それはいいかもしれない」と言い出した。
「木の枝でいかだを造るようにすれば、潮が満ちても濡れず、カニが襲って来ても大丈夫かもしれません」
コシさんの言葉に、ウドさんは「造る時間がもうないな」と、残念な口調で言いつつ、火を点けてカニのいない場所を探し始めた。
「ウドさんに、何かあったの?」
僕がお兄ちゃんに尋ねると、お兄ちゃんは「去年、ウドさんはカニに海まで運ばれそうになっていたんだ」と嘯いた。
イケはそれを聞いて、「カニに運ばれるようにですか?」とお兄ちゃんに尋ね、お兄ちゃんは首を縦に振った。
「おい、早く夕食の準備をするぞ」
少し機嫌の悪めなウドさんの言葉で、僕たちは夕飯の準備をし始めた。
三内まで歩いていく当日、僕たちは飲食物の他に、漆などの小さな交易品を携えた。これは二ツ森と、三内で飲食物と交換するものだ。
「よ、久しぶりだな」
背中に大きな籠を背負ったラドさんが、軽い口調で僕たちに挨拶をした。僕以外の人は去年からの顔見知りらしく、僕は少しばかり、身の置き場がないように感じた。
「お前がカラか。バクのやつとはまた違った匂いがするな」
ラドさんは笑いつつ、僕の頭をぐりぐりと乱暴に撫でた。
「バクさんとは仲が良いんですか?」
ラドさんの手から逃げる様にしながら、僕は尋ねた。
「何を言っているんだ。最大の被害者さ」
ラドさんは苦笑しつつ、大きな籠に入った荷物を降ろした。中身は、鳥を燻製にしたものだった。
「あいつ『みんなのお腹が空かないように』って言って、こんなに鳥を射落としたんだ。重いったらありゃしないさ」
ラドさんは文句を言いつつも、どこか嬉しそうな顔をしていた。
「じゃあ、俺とラドさんが先導をするので、ウドさんとアラは後ろを、カラとイケが真ん中に入って進みましょう」
ロウさんが口火を切り、僕たちの山越えが始まった。
二ツ森までの道のりは一度、往復したことがあったので苦にはならないと思ったのだが、いくつか崖が崩れており、遠回りをしなくてはいけなかった。
「去年、ここでがけ崩れが起きたんだ。大風が吹いた時にな」
ラドさんが指を向け、切り立った崖を見下ろした。
「落ちたら、死んじゃうよね?」
イケが座りながら、恐々と崖下を見下ろしている。
「ここの岩肌は、ずいぶん脆いみたいですね」
僕が手頃な石を拾い、崖下の隆起している部分に投げると、投げた石と同時に隆起している部分も割れた。
「そうだな。カラの石器にも使えない石みたいだな」
お兄ちゃんがそう言って、ここを迂回する形で進むことになった。何よりも、安全が第一だからだ。
太陽が海に沈む寸前に、砂浜に辿り着いた。
「確かここって、潮の満ち引きで、朝になったら海になっていることがある場所ですよね?」
僕が思い出したように言うと、ウドさんは「ああ、初めて来た時は驚いたさ」と、言葉を濁した。
「朝起きたら、目の前に白波が立っていたんだ。あと少し目が覚めるのが遅かったら、鼻に海水が入っていたよ」
ウドさんはそう言って、砂浜からかなり離れた場所まで歩き、そこに荷物を降ろした。
「ウド、そこはカニの巣がある場所だぞ?」
ラドさんが言うと、ウドさんは飛び上がるようにして起き上がり、自分のお尻を撫でた。僕がウドさんのいる場所まで行くと、土にいくつかの穴が空いていた。
「ここに、カニが巣を造っているんですね」
僕は近くにあった木の枝で穴の中を突くと、中から小さなカニが現れた。
「おいおい、じゃあ何処で寝れば安全なんだよ?」
ウドさんが困惑したような顔で、ラドさんに尋ねた。
「いっそのこと、木の上で寝ますか?」
僕が冗談を言うと、コシさんが「それはいいかもしれない」と言い出した。
「木の枝でいかだを造るようにすれば、潮が満ちても濡れず、カニが襲って来ても大丈夫かもしれません」
コシさんの言葉に、ウドさんは「造る時間がもうないな」と、残念な口調で言いつつ、火を点けてカニのいない場所を探し始めた。
「ウドさんに、何かあったの?」
僕がお兄ちゃんに尋ねると、お兄ちゃんは「去年、ウドさんはカニに海まで運ばれそうになっていたんだ」と嘯いた。
イケはそれを聞いて、「カニに運ばれるようにですか?」とお兄ちゃんに尋ね、お兄ちゃんは首を縦に振った。
「おい、早く夕食の準備をするぞ」
少し機嫌の悪めなウドさんの言葉で、僕たちは夕飯の準備をし始めた。
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