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あれから僕は、アーネスト様と会わないようにしていた。

でも食堂で会ってしまうから、その時はアーネスト様に話しかけられてしまう。でも僕はごめんなさいと一言言って逃げるように立ち去っている。

本当はアーネスト様に話しかけられて嬉しいし、側に居たいと思ってる。
でもダメなんだ。僕が悪いから…。僕は平民だから…。


「アシェル、どうしたんだよ。アーネストの事避けてるよな?何があった?」

「…………。」

「僕達にも言えない事~?…よく分かんないけど、僕達はアシェルのこと大好きだし味方だからね~!」

「……ごめんなさい。ありがとうございます。」

ハミッシュ様もノーマン様も、僕の事心配してくれてる。心配かけさせてしまってる。僕って、なんてダメなんだろう。


「ふん。平民のくせに図に乗るからだ。パーキンス伯爵令息に殺してやると言われたのもそのせいだ。お前なんかこの学園に相応しくない事が、これで分かっただろう。」

「おい!セイルズ!お前またそんな事言って!」

「お前達のような友達ごっこを見せられて反吐が出る!貴族は平民と違い尊い存在だ。…お前達もいい加減目を覚ました方が良い。」

「……………。」


そうだよね。ノーマン様もハミッシュ様も貴族だ。僕とは違う。一緒にいたら迷惑をかけてしまう。

僕はなんてダメな人間なんだろう…。


その日授業が終わって寮の部屋へ戻ると、引き篭もるようにして外へ出る事はしなかった。お腹も空かないから夕食も食べてない。…もうこのまま寝てしまおう。



……初めて授業休んじゃった…。これサボりっていうんだっけ。

ただただベッドの上でぼーっとして過ごす。

アーネスト様、ハミッシュ様、ノーマン様、それから、僕を助けてくれた貴族の人達皆。

皆僕に優しくてしてくれた。すごく嬉しかった。だけど…。

パーキンス様やセイルズ様の言うように、僕は優しくしてくれた事に図にのってたのかも知れない。

やっぱり学園に入った事は間違いだったのかな。平民として慎ましくいるつもりだったのに、僕はそれが出来なかったんだ…。

ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…。


「アシェル?部屋にいるの?開けて。僕だよローレンスだ!」

…ローレンス兄上?どうしたんだろう?

扉を開けると悲しい顔のローレンス兄上がいた。あ…僕はローレンス兄上まで悲しい顔させてしまってる…。

「アシェル良かった。部屋にいてくれて。…昨日からご飯食べてないでしょ?夜ご飯持ってきたから部屋、入るね。」

そう言ってローレンス兄上は部屋へと入ってきた。
…もう夜になってたんだ。気がつかなかった。

「ねぇアシェル。何があったの?どうしたの?僕に話してくれないかな?」

「……兄上。」

「すっかり落ち込んじゃって…。こんなアシェル見たのは初めてだよ。いつもにこにこ可愛い顔が今はどこに行っちゃったの?」

そう言って僕の頭を撫でてくれた。その手が父さんや母さんを思い出して僕は泣いてしまった。

「…ひっく…兄上ぇ……ひっく…ふぇぇぇ…。」

兄上は、しばらく僕が落ち着くまで優しく抱きしめてくれた。

落ち着いてから、ポツポツと今までのことを兄上に話した。
僕が平民だから皆を不幸にさせてしまうと思っていることも。

「…アシェル。あのね、それは違うよ。アシェルは周りが貴族ばっかりの所にいるのは初めてだから、わからなくなったんだね。」

「…でも僕…。パーキンス様を追い詰めてしまって…。それにアーネスト様の事好きになってしまって…。僕は平民なのに…こんな事、しちゃダメなのに…。」

「……ねぇ、アーネスト君もノーマン君もハミッシュ君もデリックも親衛隊の皆も、そして僕も。アシェルの事を平民のくせにとかそんな事言ったことある?」

皆、僕に優しくしてくれてる。そんな事言われたことなんてない。

「確かに貴族至上主義の人達がいるのは事実だよ。だけどね、貴族皆そうじゃない。それはアシェルもわかってるよね?僕達はね、皆アシェルが大好きだよ。貴族だとか平民だとか関係なくて、アシェル自身が好きなんだ。…アシェルは皆の事好き?」

「…はい。皆、皆大好きです。」

「それは貴族だから?貴族だから好きなの?」

「違います!貴族なんて関係なくてっ!」

「うん、そうだよね。皆も同じだよ。」

…皆も僕と同じ?

「アシェルって思い込むとこうなっちゃうんだね。僕知らなかったなぁ。…あのねアシェル。平民だから悪いなんて思わないで。人の良し悪しに身分なんて関係ないよ。アシェルにも嫌いな人や苦手な人、居るでしょ?それと同じで、アシェルの事を好きな人も嫌いな人もいる。だけどアシェルの事を嫌いな人の話ばっかり聞いて、好きな人の話を聞かないなんてそんな悲しい事しないで。僕達の事信じて。……アシェル、大好きだよ。」

「兄上…。ごめんなさい。」

「うん。アシェルはいい子だね。……あとパーキンス伯爵令息の事だけど、アシェルが追い詰めたんじゃないよ。どうも伯爵家が出してる薬の影響らしいんだ。僕もそこまで詳しくないけど、それは間違いないみたいだよ。だからアシェルのせいじゃない。安心して。」

え…薬の影響?僕が追い詰めたんじゃないの?薬のせいなの?…そっか。そうなんだ…。


じゃあ僕、また皆と一緒にいていいの?皆の事避けてたのに、一緒にいてもいいの?

「もちろん!きっと皆もまたアシェルと一緒にいたいと思ってくれてるよ。……よし。少し元気になったかな?じゃあ持ってきた食事、食べてくれる?冷めちゃったけど。」

あははって兄上が笑ってる。兄上が笑ってくれて僕の心はまたあったかくなった。

それから兄上が持ってきてくれたご飯を食べて、食器を返しに行って、そのまま兄上の部屋に行った。

そしたらデリック様も来て「明日学園は休みだから朝まで喋るぞ!」って言って3人で騒いだ。僕はいつの間にか寝ちゃったけど。


翌日、3人でいつものように寮の食堂へ行った。そこで食事をしていたらアーネスト様に声をかけられた。

あ…どうしよう。アーネスト様、怒ってないのかな。

「…じゃあ僕とデリックは席を外すね。」

そう言って、僕とアーネスト様が残された。

「…アシェル、昨日は学園を休んだと聞いた。大丈夫か?」

「はい、大丈夫です。ご心配をおかけしました。すみません。……あと、避けてしまってごめんなさい。」

「いや、大丈夫だ。気にしないでくれ。……そうだ、来週の休みに街へ一緒に行こう。」

「え?…ギルドですか?」

「違う。冒険者の師になってくれたお礼。まだしてなかっただろう?」

あ、そんな事言ってたっけ。そんな事気にしなくてもいいのに…。

「じゃあ、来週いつもの時間に。」


そう言うとアーネスト様は席を立った。

来週、アーネスト様と一緒に街へ行ける。うわぁ…どうしよう。嬉しい…。アーネスト様、怒ってなかった。どうしよう、ドキドキしてる。うわぁ。




* * * * * *

~食堂でアシェルを見守っていたローレンスとデリックの会話~

「ローレンス、あいつと2人にして大丈夫なのか?」

「大丈夫だよ。………あ、アーネスト君、デートに誘った。」

「うわ、本当だ。おい、本当に大丈夫か?」

「ふふ。大丈夫。…見てアシェルの顔。真っ赤になっちゃって可愛い。」

「……なぁ、もしかしてアシェルって。」

「ふふ。そうみたい。…相思相愛だね。羨ましいなぁ。僕も恋したいなぁ。」

「………意外と近くにいるかもよ。」

「ん?なんか言った?」

「…何も。」
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