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そして約束の日。僕は持ってきてはいたけど、ほとんど着たことのない服を着て待ち合わせ場所にいた。

お爺ちゃまがくれた服、ここで役に立つとは思わなかったなぁ。


僕が学園を休んだ事、ハミッシュ様もノーマン様もすごく心配してくれていた。

そしてハミッシュ様は、僕とアーネスト様が出かける事を知っていた。

「アシェル~、これってデートじゃない~?」

「え!? デート!?」

え、デート!? デートなの?違う違う!お礼だって言ってたし!

「だよなぁ。デートだよデート!…アシェル、服何持ってる?」

「え!? 服!? なんで??」

服がなんの関係が?? それにデートじゃないってば!

「なんでって。そんなのデートなんだからおしゃれしなきゃだろ?」

「え!? オシャレ!? え、え、え??」

「あはは!アシェル、真っ赤になってる~!可愛い~!」

「よし!今日アシェルの部屋いくぞ!服見せろ!」

「は?え?なんで!?」

だからデートじゃないしぃ!

「僕の友達に器用な子がいるんだ~。髪の毛も綺麗にセットしちゃおうか~。」

「お!ノーマン、ナイス!それいい!アーネストのやつ驚かせようぜ!」

さんせーい!って2人は勝手に盛り上がってる!ちょっと待って!だからデートじゃないってばっ!

……え、デートなの?コレ、デートになるの?? 本当に!? うわぁ!僕どうしたらいいの!?


そして本当に2人は僕の部屋に来て、持ってる服を全部見た。そして、あーでもないこーでもないって2人で相談して、僕が着る服が決まった。


しかも、今日ノーマン様の友達が来て僕の髪をセットしてしまった。僕の髪は肩を少し越すくらいの長さがあって、上半分を少し編み込んで纏めてくれた。

「さらっさらの綺麗な銀髪!僕、こんな綺麗な髪触るの初めて!『魔法科の銀の天使』のヘアセットが出来るなんて夢みたい!」

「目一杯可愛くしてあげて~!」

「任せて!うわぁ!滾る~!!」

そう言って、なんかよくわかんないけど楽しんでやってくれた。


こんな髪型初めてしたし、似合ってなかったらどうしよう。ドキドキする…。アーネスト様、なんて言ってくれるかな。

うぅぅ…。心臓が口から飛び出しそう…。

「アシェル、すまない待たせたか?」

アーネスト様の声が聞こえて、びくっと飛び上がった。

「あ、アーネスト様! だ、大丈夫です!えっと…全然、待ってません!」

も~、皆がデートだって言うから緊張して上手く話せない~!

「そうか、良かった。…じゃあ早速行こう。」


え?うそ…なんで!? 僕…アーネスト様と手、繋いでる。えー!? なんでー!? 待って待って!嬉しすぎて、心臓が止まりそう!!

僕、落ち着いて!! アーネスト様に変に思われちゃうから!

僕が1人でパニックになってるなんて知らないアーネスト様は、僕の手を握ったまま街へと繰り出した。

街はギルドに行くばっかりで、ほとんどゆっくり見たことなんてない。

「…よく似合ってる。普段も綺麗だけど、今日はいつもよりもっと、綺麗だ。」

「えっ!?…あ、あのっ……ありがとう、ございます…。」

ひぇぇ!綺麗だって言われたぁ!僕、大丈夫?息してる?ちゃんと生きてる?ふわぁぁぁ!!

その笑顔反則ぅ!かっこよすぎて顔見れないぃ!もう僕をどうしたいのぉ!死んじゃうよぉ!

「…耐えろ、耐えろ。」

…? アーネスト様、どうしたんだろ?僕が挙動不審で気持ち悪かったかな?…こんなの冷静でいろなんて無理だから。ごめんなさい。


恥ずかしくて嬉しくて、1人で焦ってたらいつの間にか街の中だった。…いつの間に着いたの。

「アシェル、ここの店に入ろう。」

え?ここって…宝石店!?

「いらっしゃいませ。ご来店ありがとうございます。何かお探しでしょうか?」

「ああ、ネックレスを見せてくれ。」

こんな高級なお店、僕初めて入った。お爺ちゃまがくれた服着て来て良かった…。皆ありがとう。

凄く煌びやかで物珍しくてキョロキョロしてしまった。

アーネスト様、やっぱり貴族だからこういう所に来るのも慣れてるんだ。凄いなぁ。

「アシェル、これを付けてみて。」

え?そう言われて首にネックレスをかけられる。

「うん、似合ってる。これなら服の下にも隠せるし普段から使っても可笑しくないデザインだ。…これをもらおう。」

え?ちょっと待って!? アーネスト様のネックレスを買うんじゃなかったの!?

「え!? ちょっと、ちょっと待ってください!僕、こんな高価な物いただくなんてっ!」

「気にしないでくれ。…俺が贈りたいんだ。受け取ってくれ。…よく似合っているだろう?」

「ええ、とても。お美しいお連れ様によくお似合いですよ。」

……うそ。僕、宝石買ってもらっちゃった…。宝石はお爺ちゃま達から貰ったことあるけど、家族以外の人から貰ったのなんて初めて…。

あ。この宝石の色。アーネスト様の瞳の色?

アーネスト様はくすんだ金の髪に、若草色の瞳をしている。…そしてチェーンが金色…。

え、これ全部アーネスト様の色!? え!? 待って待って待って!違うよね!?たまたまだよね!?

僕自意識過剰だから!! 違うから!!


「あの…ありがとう、ございます。すごく嬉しいです。……大切に、しますね。」

「うぐっ!………ああ、気にしないでくれ…。」

「……お客様。お気を確かに。」



それから僕の頭はふわふわしたまま街を散策した。もちろん手は繋いだまま。

…アーネスト様、どういうつもりなんだろう。これじゃあ本当にデートみたい。でもアーネスト様にはパーキンス様がいるのに…。ダメなのに…。でもその手を振り解きたくなくて…。


ちらちらとお店を見ながら2人で歩く。魔道具のお店とか魔法薬のお店とか僕が好きなお店ばっかりだ。

「アーネスト様って、街の中詳しいんですね。」

「あ、ああ…。まぁ。何度か王都には来ていたからな。」

やっぱり貴族だから、ちょくちょく来ることもあるんだなぁ。

そろそろ食事にしよう。と言われて、お洒落なレストランに入った。

…こんなお店、すごくすごく久しぶりだ。ずっと前にお爺ちゃま達とこんなお店に来たことあるけど、普段は来ないもんね。母さんも父さんも料理が得意で美味しいし。


席に座る時、アーネスト様が椅子を引いてくれた。なんかすごく大切にされてる感じがしてドキドキする。……なんだか勘違いしそう。

注文なんかも全部アーネスト様がしてくれた。…僕はよく分からないからお任せだ。

何もかもスマートにこなしちゃうからカッコ良すぎる。……僕最後まで息していられるかな。


食事が運ばれてきて楽しくお話ししながら食べ進める。どれもこれも美味しくって、お話もとても楽しくてすごく幸せだった。


そしてレストランを出てからしばらくして、僕たちは声をかけられた。

「あ!アシェルにアーネスト様!ちょうど良かった!」

ここのギルドのおじさんだ。どうしたんだろう?

「ここで会えるなんて運が良い!…おいアシェル、お前はソルズの街の出身だったよな?」

「? はい、そうですけど。」

「ソルズの街が大変なことになってるぞ!今からギルドに来てくれ!」

「え…?何…何が起こったの?」

大変なこと?大変なことって何?街は?皆は?…僕の家族は大丈夫なの…?

体がカタカタ震えてる。どうしよう…。父さん!母さん!ライリー!

「アシェル、とりあえずギルドに行こう!」

アーネスト様に手を取られ、走ってギルドへと向かった。



* * * * * * *

~デートの約束を取り付けた後のアーネスト達の会話~


「アーネスト、お前デートに誘ったの!?」

「ああ。来週一緒に街へ出かける。…それで、街にどういう店があるか教えて欲しいんだが…。」

「あー、なるほどね。俺たち普段街でわざわざ買い物しないもんな。普通は家に呼ぶし。」

「それで、アシェルを案内するのに良い場所はないかと思って。」

「ふーん。へー。ほー。」

「……ニヤニヤするな!その顔やめろ。」

「あはは!悪い悪い!」

「俺、良い場所知ってるよ?…もちろん贈り物するんだよね?」

「そうだな。何か宝石を贈ろうと思っている。…フィリップは宝石店に心当たりが?」

「うん。僕王都に住んでるからある程度はわかってるよ。」

「さっすがフィリップ!よし、じゃあ俺はアシェルの服を見てやるかな。…とびっきり可愛くしてやるよ!楽しみにしてろよ!」

「…なんだか遊ばれてる気がしないでもないが。助かる、よろしく頼む。」
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