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42 モテ期到来…?

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「ヒカル様、レオナルドと少し席を外します」

「あ、はい。わかりました」

「夕食までまだ時間がありますからね。久しぶりにアナと王宮の庭園を歩いてまいります」

 レオナルドさんはウキウキでブレアナさんの手を取ると、2人仲良く部屋を出ていった。本当にお似合いの2人だなぁ。

 今日はこの後、夕食を王宮で取ることになっている。王族の皆さんと俺達だけのささやかな晩餐らしい。王族がいる時点でささやかとは? と考えたが深く考えちゃいけない。折角だからお言葉に甘えることにした。

 ルーファスさんに「折角だから王宮内を案内しましょうか」とそう声を掛けられたが俺はそれを断った。

「もし可能であればなんですが、王妃様に会わせていただくことは出来ますか?」

「え? 王妃にですか?」

 俺の治癒魔法は病気も怪我も何でも治せる。ヘインズ家に設置する予定の召喚陣のことを納得してもらったお礼とでも言えばいいのか。王妃様の病気を治そうと思ってそれを提案した。
 俺が治癒魔法を使えることを分かっていても、王様を始め誰一人王妃様の病気を治して欲しいなんて言ってこなかった。この国の王様たちは良い人だろうし、俺の火傷の跡を見ても嫌悪感を抱くこともなかったしそれが嬉しかったのもある。
 ブレアナさん達に聞いても王妃様の人柄も問題ないってお墨付きも貰ってるしね。

「神子様……何とお礼を言えばいいのか。本当にありがとうございます」

 ルーファスさんが言うには、王妃様はかなりの大病を患っていて薬でなんとか延命している状態だったそうだ。それなのに俺に一言も言わなかったのは、なんて言うかただただ凄いなと思った。俺だったら必死にお願いしていたかもしれない。

 王様たちと一緒に部屋を出て王妃様の寝室へと向かう。ランドルとオーサはそのまま部屋に残ることになった。流石に王族の居住スペースへは入れないらしい。
 
 長い長い廊下をくねくねと曲がり歩いていると、もう今どこにいるのかさっぱりわからなくなった。まるで迷路だ。
 王宮の中でも王族の居住スペースへの道は、わざとわかりにくくしているらしい。そうしないと色々危険もあるからだそう。王族って大変だ。

 そしてやっと王妃様の部屋へと到着する。中へ入ると部屋は少し薄暗く、ベッドには天涯が引かれていた。それを王様がそっと開けると王妃様が眠っていた。
 王妃様の顔はかなり痩せこけていて、顔色も随分と悪かった。そんな王妃様は今はもう、こうやって寝ている時間の方が長いらしい。

 王様がそっと王妃様の頬を撫でると「神子様がいらしてくださったぞ」と優しい声を掛ける。そしてそっと体をずらし俺を呼んだ。

「王妃のカタリナです。ここ最近特に調子が悪くて、もう長くはないだろうと言われておりました」

「……そうだったんですね。間に合って良かったです」

 王妃様の手をそっと握り治癒魔法を流し込む。王妃様の体がふわりと優しい光に包まれた。治癒魔法は弱った体の隅々にまで行き渡り、体に巣くった病を消し去っていく。なんの病気かわからないが、体全体が蝕まれていて今生きているのが不思議なくらいの状態だった。
 体の中の病がすべて消えたのを確認し、治癒魔法を止める。王妃様を覆っていた光が収束すると、王妃様の顔色はかなり良くなっていた。

「これでもう王妃様の体の中に巣くっていた病は無くなりました。後はゆっくり休んで、食事を取れば回復すると思います」

「ああ……神子様っ……! 本当にありがとうございましたっ……!」

 王様は静かに涙を流しながら、王妃様の頭を撫でている。王子様達皆からぐすっと鼻をすする音が聞こえる。それだけで、仲の良い家族だったんだなってわかった。
 減っていた体力も回復しているからもしかしたら時期目が覚めるかもしれない。そう伝えると王様だけがここに残り、王子様達と王妃様の寝室を後にした。


「そう言えば神子様。オースティンとはどこまで進んだんですか?」

「ん? どこまで……??」

 王妃様の部屋を出てしばらくすると、ふいにルーファスさんからそんなことを聞かれた。ただ俺は何が言いたいのかさっぱりわからなくて首を傾げてしまう。

「2人は恋人なのでしょう? この国へ来る道中も仲睦まじくていらっしゃいましたが、オースティンは抜けてるところがありますからね。キスくらいはちゃんとしました?」

「ふあっ!?」

 キスだと!? 一体いきなり何を聞いて来るんだこの人は!?
 魔力譲渡の時にめっちゃ舌を絡めるやつをやらかしてるし、それ以上の事もしてるけども!? でもあれは治療みたいなものでそんなのとは意味が違うし!!

「い、いや……してない、ケド……」

「え? してないんですか!?」

「だ、だって……恋人とか、そんなんじゃ、ないし……」

「恋人じゃ、ない……?」

 皆がもうそういう風に見てることは分かってるけど、オーサからは別に返事を聞かせてくれとも言われてないし、あれからキ、キスなんてのもしていない。まぁ熱烈な愛の言葉は囁かれてはいるけども……。
 
「……神子様、じゃあ私にもチャンスはありますか?」

「はい?」

 ルーファスさんの言葉に思わず足を止める。一緒にいるハロルドさん達は「おい! 神子様に何をっ……!」と慌ててルーファスさんを止めている。

「だって神子様はとても可愛らしいじゃないですか。あの国を出てからの数日間、ずっと一緒にいましたけど神子様は本当に優しい方ですし、使用人にだって分け隔てなく接していました。オースティン達の事も自分の事のように怒っていらして。そんな神子様を好きにならずにはいられなかったんです」

 優しく微笑むルーファスさんは俺の目の前まで来ると、俺の頬を優しい手つきで撫でて来た。いきなりこんなことを言われて俺はどうしていいかわからず動けないままだ。

「だから私にもチャンスがあるって思っても、いいんですよね?」

 そう言ってルーファスさんは俺の頬にちゅっと軽くキスをした。
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