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グランティスの未来のために

女王の指導

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「本気で太陽竜と戦って殺す、そのための鍛錬なんかしてたら自然と強くなる。目標は同時並行でいけるだろ」

「そうね……」

 エリシア様はおもむろに立ち上がり、すぐ側にあるご自分の居宅に入り、すぐに戻ってこられました。右手にはご自慢の神器を携えています。
「太陽竜と本気でやり合うための鍛錬となったら、あたしがあんたを相手するほかにありえない。あたし以外の誰にも、あいつの模擬をするシミュレートなんて不可能だもの。そのあたしにだって、あいつの全てを模倣するのは無理なんだから」

 エリシア様は左手でシホを手招きします。とりあえず、かかってこい、という合図とシホは判断し、分解した状態で持ち歩いていた十文字槍を組み立て始めました。

「……いや、やっぱり、これじゃダメね。太陽竜の神器と形が違いすぎる。レナ。急ぎで剣闘場からサーベルを持ってきて」

「待った。オレの、今はもう使ってないグラディウスをここに持ってくる」

「確かに、形状だけだったら太陽竜の神器はいたって単純だから、サーベルよりグラディウスの方が近い。でもあんた、なんで太陽竜の神器の情報なんか持ってんの?」

「グラディウスみてえな特に捻った要素のねえ幅広の両刀は、元々は太陽竜の神器が始祖みてえなもんで、参考にして作られたんだって。生まれ故郷フィラディノートでオレにグラディウスを仕込んでくれた師匠が言ってたんでな」


 今となっては懐かしく思えますが、シホは剣闘場で勝ち進むために、「技術より先に、武器の知識を吸収すること」に重きを置いていました。グランティスに来るより以前から、あらゆる武器に対して調べ尽くしているのかもしれません。

 彼の故郷であるフィラディノート自体が、研究者の支える都市でもあります。故郷で育まれた感性が自然と彼をそういう気質にしたのでしょうし……結果として、彼は故郷を捨ててわが国で剣闘士として生きる道を選びましたけれど。故郷で研究者として生きる道を選んでいたら、それはそれで何らかの成果を残した可能性もあるのではないでしょうか。わたくしはそんな風に想像して、そして少し、切ない気持ちになってしまいました。


 シホの暮らす家までグラディウスを取りに行き、こちらに戻ってくるとなると相応の時間がかかります。日を改めるか? と、シホはエリシア様に問いかけます。

「本気で太陽竜とやり合おうっていうなら、一日だって無駄には出来ない。あたしはここで待ってるから、ゆっくり歩いて取りに行って、戻ってきなさい」

 駆け足でなくていいというのは、エリシア様のご指導を前に体力を浪費するなという意味でしょう。
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