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グランティスの未来のために

運命の共有

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 数百年も先の話とはいえ、圧倒的な闘神としてグランティスを導いてくださったエリシア様の存在を喪うことは我が国にとって一大事です。わたくしとシホは翌日にはさっそく、エリシア様に時間を作っていただいて月光竜の予言についてご相談しました。

 このお話はグランティスにとって最重要の機密となりえるので、剣闘場の事務室や王宮の応接間ですら、おいそれと口には出来ません。厳重に人払いをした上で、エリシア様は王宮の一角にあるエリシア様のための居宅と庭園に、わたくしとシホを招き入れてくださいました。

 エリシア様の居宅の隣には、グランティスではご神木とされているボーディーの大樹が佇んでおります。その木の根元には、七百年前にイルヒラ様の「人間の体」が朽ちた際に、埋葬されました。いえ、正しくは、イルヒラ様を埋葬した上に木を植えてご神木として育て、祀ってきたという方が正しいのかもしれません。

 その大樹の下でわたくし達は腰を下ろし、語り合うことにいたしました。

「な~るほ~ど、ねぇ~……また、なかなか。めんどくさげな情報投げてよこしてくれたじゃないのよ、月光竜の奴め」

 自分がいずれ、同胞の手にかかって殺される。そんな情報を得たというのに、エリシア様の反応は思いのほか、淡泊でした。まるで、「そうなることをある程度は予見されていて、覚悟の上であった」かのように。

「レナだってそれくらい知ってんでしょ~? はじまりの神竜戦争の対称で、おわりの神竜戦争とかいう伝承が元々からあるじゃないよ」

 はじまりの神竜戦争は、この世界に人類が誕生して間もなく。創世に関わった十一神竜が何らかの原因で争い合い、絶滅したと伝えられる神話です。傀儡竜の神殺しの罪も、この時に負わされたものです。

「おわりの神竜戦争の方だって、単なる伝承どまりってわけじゃなくってね。あたしら神竜からしたら、確かにそうなるんだろうって理由はわかってるのよ。機密だから話せないんだけどね」

「そうでしたか……」

「だから、まあ。あたし達(巨神竜)巨神竜が将来的に殺されないように、今のうちに太陽竜を殺しておきましょうってあんたの気持ち……助からないわけじゃないってのは事実、だけどさ……シホがそれを本気で目指すとしたら、傀儡竜になるまでの残り一年間の全て、そのために費やすことになるわよ? 剣闘場であたしと戦って倒すってのはどうするつもりよ」



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