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史上初の女性剣闘士を目指して、頑張ります!

戦士の傷痕

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 本日の対戦相手は予選会に参加してまだ間もない選手で経験が浅く、わたくしを相手にして初めての勝ち星が得られると張り切っていました。自分で言うのもなんですが、わたくしは思いのほか善戦しました。わたくしも半年の経験がありますので、勝てずとも、新人相手にはそれなりに打ち合えるようになってきたのかもしれません。

 躍起になって打ち込みすぎた相手は手を滑らせて、わたくしの右肩に深く刃を入れてしまいました。思いがけず、一国の姫の体に深い傷を入れてしまった。自分はどうなるのだろうと不安になったのか、泣きそうになっていました。わたくしが未熟なばかりにこのようなことになって、相手の心に傷をつけて、むしろこちらの方が申し訳ないくらいです……。

「その肩の傷、たぶん一生、痕が残るわね」

「そう……ですか」

「ふぅん……上出来ね」

「何がですか?」

「傷が残るの、気にしてそうな顔してないからよ」

「剣闘場で戦うと決めたのはわたくし自身なのですから、気にしていたらおかしいじゃないですか」

 わたくしも剣闘大臣として多くの剣闘士の方々のお話をうかがってきました。どんな強者であっても、体のどこかしらに戦いで負った傷痕を残していました。表現の違いはそれぞれあれど、どの方も共通しておっしゃいます。「この傷痕は、戦士として生きた自分の証であり、誇りだ」と

 人の心や立場は年齢によって変わるものですから、わたくしも将来、剣闘場の選手を諦めたり卒業したりする可能性があるでしょう。この傷痕は、わたくしが無謀とも思える挑戦をした証が、目に見える形として残ったもの。

 願わくば、後年のわたくしがこの傷痕を見た時に。「結果はどうあれ、挑戦してみてよかった」と思える心境にあればいいなぁと願ってやみません。


「剣闘場始まって以来、あんた以外にだぁ~れも女の志願者いなかったじゃない? 戦乱の時代にはね、女の戦士だっていっぱいいたのよ。あの頃は女が戦場で傷を負ったからって名誉と思いこそすれ誰も特別扱いなんかしてなかった。そんなの気にしてる余裕がなかったってのもあるけど。グランティスほどの武勇の国であってもいつの間にか、嫁入り前の女が体に傷をつけるなんて、みたいな軟弱な考えが普通になってきちゃったのよね。嘆かわしいったらないわ」

 そのお気持ちから、エリシア様はわたくしが予選会に出場したいと志願した時に、期待したのだそうです。わたくしが剣闘場でいっぱしの活躍を示すことが出来たなら、「やってみたいけど、他に女の参加者がいないから」と尻込みしている女性が参加を表明するのではなかろうかと。

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