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史上初の女性剣闘士を目指して、頑張ります!

姫君の称賛

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「……うぅ……ッ」

 男性が全力で打ち込んでくるサーベルの重みを受け止め続けてきた右腕は痛みを訴え始めて、今度は感覚がなくなってきました。

 腕を休めたい一心で、わたくしはコーリィを見据えたまま、数歩後ろに下がりました。

「はぁっッ!」

 わたくしの逃げを許さず追ってきたコーリィは上段へ思いっきりサーベルを掲げて、渾身の力で魔法剣を目指して振り下ろします。腕に限界を感じているわたくしは、足の踏ん張りで堪えようと少し腰を落として右足を前に踏み出しました。どうにか、受け止めましたが……。

「きゃあッ!! ……しまっ……ッ」

 しまった、と思った時にはもう、魔法剣の刃が消失していました。使用者が集中を途切れさせてしまうと、魔法剣は存在を維持することが出来ません。そればかりか、強い斬撃を受けたわたくしは足を滑らせて、後ろへ尻餅をつくのを待つばかりの体勢に陥りました。


 その瞬間、コーリィの目の色が変わりました。そこには、これまでの人生で最も至上の美味を口にする寸前のような。積年の夢が叶うかもしれないという期待感に満ちて輝きを放っていました。

 コーリィはサーベルを両手から左手のみに持ち替えて、細長い腕を伸ばして、倒れ行くわたくしの腰を右手でしっかと受け止め。サーベルの刃先を、わたくしの首の防具へ向けました。

 まるで、舞踏会で手を取り合った男女が、最後に腰を抱き寄せられたかのような。そんな紳士的な振る舞いと同時に、わたくしの首元には鋭利な刃が向けられています。なんとも奇妙な味わい。それが、わたくしの最初の「敗北の味」となったのでした。

「か……、勝った……、やっ……たぁああっ!」

 相手が遥かな格下であろうと、念願の、最初の「勝利の味」をついに知ったコーリィは。両腕を高く伸ばして万歳しました。左手にはサーベルを持ったままで、湾曲した刃を空へ掲げます。

「はぁ……負けましたぁ……」

「あっ! すいません、自分勝手に喜んじゃって」

「勝利した選手が喜ぶのは当然じゃないですか。本日はありがとうございました。全力で、わたくしと戦ってくださって」

「レナさん、せっかく出たのに勝てなくて、落ち込みません?」

「落ち込まないとはもちろん申しませんよ。ですが……それ以上に、高揚しました。憧れていた世界に身を投じて……負けたのに、このように感じられるのなら。きっと、わたくしの選択は間違っていなかったのだと思えました」

 悔しくないわけじゃないけれど、わたくしはこの道を諦めません。歩き続けよう。予選会初戦を経験して、わたくしの抱いた素直な気持ちでした。
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