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10 旅は道連れ、世は情けっ!

10―8 晩餐

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 10ー8 晩餐

 ワチさんが説明してくれたことによると、このロナウド領というところはあまりにも貧しく田舎のためにまともな宿屋などないのだという。
 そこで俺の従僕であるダイさんが交渉した結果、この地を治める魔王ロートナム・ロースさんのお宅に泊めていただくことになったのだという。
 いや。
 そこは、失礼になるし、普通の宿屋に泊まろうよ!
 だが、俺にワチさんが反論した。
 「この辺りにも宿屋らしいものはあるのですが、たいていは、売春宿を兼ねているようないかがわしいところが多いのです。とても、セツ様にお泊まりいただくわけにはまいりません」
 マジで?
 突然、部屋のドアがばん、と勢いよく開いて、まだ幼い子供が駆け込んできた。
 「セツしゃまぁ、ごはんでごじゃいましゅぅっ!」
 はい?
 それは、金色の巻き毛の、ふわふわした綿毛のような子供だった。
 かわいらしい真ん丸なキラキラした青い瞳で俺を見上げてその子供は、繰り返した。
 「セツしゃま、ごはん!」
 何?
 このかわいい生き物は?
 額に羊の角のようなものがはえている。
 獣人?
 その子供は、俺の手をとりひいた。
 「はやく、はやくぅっ!」
 俺は、ベッドから出ると、この金の綿毛にひかれるままに階下の食堂へと導かれた。
 そこは、特別なお屋敷とかではないごく普通の家のようだった。
 「セツしゃま、呼んできた!」
 綿毛は、食堂につくとそこに立っていた巨大な黒い熊の方へと駆け寄りもふん、と飛び付いた。
 「ラーズ!」
 巨大な熊は、愛おしそうに子供を抱き締めると、俺の方へと顔を向けた。
 「セツ様、お目覚めになりましたか」
 熊は、椅子をひいて俺をそこに座らせた。
 「少々お待ちください、すぐに夕げの準備をいたしますので」
 熊は、俺の前にスープの入った皿を置いた。
 すでに、アルバートおじさんたちは、テーブルについていた。
 のんびりと熊が他の椅子より一回り大きな椅子へと腰を下ろした。
 いや。
 訂正。
 熊ような魔人、だ。
 魔人は、全員を見回してから頷いた。
 「それでは、どうぞ、召し上がってください」
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