追放された悪役令嬢の息子、辺境で魔王候補生になる～男ばかりの領地でなぜかハーレムフラグが立ってます～

5 魔王候補生と愉快な仲間たち

5―7 ３人目の男

　５ー７　3人目の男

　俺は、そっとガザックたちの方をうかがったけど、誰も気づいてはいなかった。
　「お前！」
　「話しは、後です、セツさん」
　ガザックは、次の男の説明を始めていた。俺は、ガザックが嬉しげにそのたくましい男の胸元を撫でまわしているのを見て、心の中でひいていた。
　「これは、東の果て、黄華国出身の戦士です。どうですか、このたくましい胸板。素晴らしい働きをすること間違いなしですよ」
　「こいつは、国で何人もの人を殺して逃げてきているような罪人です。セツさんには、とてもとても、相応しくありません」
　フローディアが囁いた。
　マジかよ。
　俺は、最後の１人を見た。
　その男は、長く伸びた白髪混じりの黒髪の男だった。
　なんだか、懐かしいような気のする雰囲気を持っていて、俺は、じっと男を凝視していた。
　ふと、顔をあげた男と目があった。
　その青い瞳は、誰かのことを思い出させるような気がした。
　「この男は」
　ガザックがうんざりした様子で説明を始めた。
　「元は、貴族でかなり有名な剣士でもあったとのことですが、わけあって奴隷となっております。少し、問題はありますが、腕の方は保証します。しかも、今なら破格の10,000ジーズとなっております」　
　うん？
　俺は、ガザックの態度にこの男がここで厄介者扱いされていることを感じていた。
　このおっさん、何者なんだ？
　なんか、この奴隷からピリピリするような感覚を感じて、俺は、じっと男を見ていた。
　男はというと、なんと、欠伸をしている。
　こんなときにか？
　「だめです、セツさん。この男は酒毒にやられています。この奴隷商に言ってください。他の奴隷を見せるようにって」
　うん？
　俺は、女神の言葉に納得できかねた。
　なぜか、俺には、このやる気なさげな男のことが妙に気になっていた。
　なんだろう。
　誰かを思い出させるこの雰囲気。
　なんだか、遠い昔に出会ったことがあるかのような。
　俺は、悩んでいた。
　このスマホ女神の言う通りにはしたくなかった。
　ただの天の邪鬼ではない。
　この男には、何かがあるような気がする。