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1 悪役令嬢の息子、故郷へ帰る

1―6 百鬼夜行

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  1ー6 百鬼夜行

 それは、まさしく百鬼夜行のように俺には思われた。
 といっても見たところ化け物の種類は2種類ぐらいしかいなかったが。
 小柄な少し猿に似た異形の生き物たちがランプのような明かりを手に持って先導していた。
 その後ろを中型のゴリラのような連中が歩いてくる。
 こいつらは、手に手に棒やらなんやらの武器らしいものを持っている。
 そして、最後にゴリラどもの担いだ輿に乗った巨大なイボ蛙のような奴が続く。
 蛙は、プカリと煙を吐いていた。
 水タバコのようなものを吸っていたそいつは、何かを甲高い声で叫び、それに耳を傾けていたゴリラが辺りを見回しながら足を止めると何やら怒鳴った。
 すべての化け物たちがそこで足を止めるとその場に座り込んだ。
 どうやら今夜は、ここで野営するらしい。
 まずいな。
 俺は、息を殺して奴らの様子を見守っていた。
 これは、俺史上最大のピンチだった。
 気付かれたらきっと殺される!
 俺は、そっと後ろずさった。
 一刻も早くここから離れなくては!
 ゆっくりと背後を振り向く。
 そして、俺は、悲鳴をあげた。
 「ぎやぁあああっ!!」
 そこには、黒光りする巨大なあの生き物がいた。
 そいつは、にたりと笑った。
 いや、ゴキブリが笑うのかどうかは知らない。
 ただ、俺がそう感じたのだ。
 俺は、慌てて方向転換すると走り出した。
 だが、当然のことだったが奴も追いかけてくる。
 しかも、俺たちに気付いた猿の群れもすぐに俺の後を追いかけ始めた。
 マジかっ!
 俺は、必死に走りながら声の限りに叫んだ。
 「誰か、助けてぇえっ!」
 真っ暗な夜の森をよろめきながら俺は、走り続けた。
 ヤバい!
 ヤバすぎる!
 このままだと、ホントに殺される!
 俺は、泣きながら走った。
 誰か!
 俺は、呼吸をあらげてはしりながら一心に祈った。
 なんでもするから誰か、助けてぇっ!
 俺は、小指の先に激痛が走るのを感じた。
 体が宙に投げ出され、俺は、地面に叩きつけられた。
 こんなときに!
 俺は、地面に顔から突っ込んで痛みに呻いた。
 ほんとに、俺、ついてねぇっ!
 俺は、悪態をつきながらも立ち上がると再び駆け出そうとした。
 その俺のことをいくつもの腕が捕らえた。
 後ろへと引き寄せられ俺は、目を閉じた。
 もう、ダメだ!
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