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3 おっさん、故郷へ帰る

3―4 父親ですか?

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 3ー4 父親ですか?

 「あなたは、今・・」
 うん?
 俺は、奥様の唇を見つめていた。
 この表すところに、俺は、混乱していた。
 奥様は、何を言っているんだ?
 俺は、気分が悪くって。
 その場で胃の中身を吐き出しそうになった。
 奥様は、優しく俺の額に触れた。
 「大丈夫」
 俺は、奥様の冷たい指先にぶるっと震えた。
 光がぽぅっと灯る。
 すぅっと染み込んでいくように優しい魔法が俺を包み込んだ。
 「大丈夫よ、ティル。私がついてるからね」
 俺は、そのまま眠りに落ちた。

 翌朝、俺は、いつものように起き出すと奥様の部屋へとお茶を運んだ。
 「失礼します」
 奥様は。
 すでに起きていた。 
 そして、奥様の部屋は、なぜか、ぬいぐるみやら木の積み木やらが散乱していた。
 「あぁっ!ティルったら!」
 奥様が俺に歩み寄ってくると俺の持っていた木のトレーを奪い取り、俺をソファに座らせると、奥様は、俺を叱りつけた。
 「だめじゃない、仕事なんてしちゃ。まだ、安静にしてないと!」
 「でも」
 口答えする俺に奥様は、熱いお茶の入ったカップを渡した。
 「でも、も、だってもない!」
 奥様がぴしゃりと俺に言った。
 「あなたは、人の子の親になるんだからね!しっかりしなきゃだめよ、ティル」
 うぅっ。
 俺は、呻いた。
 なんでこんなことに。
 「それで、その子の父親のこと、話してくれる気になった?」
 俺は、黙って頭を振った。
 「ほんとにわからないんです。ガイナスという名の魔王軍の幹部で、銀髪で四本の角があるってことしか」
 俺は、あの夜のことを思い出して体が震えるのを感じていた。
 あの男。
 俺を一昼夜の間、責め続けたあの男。
 俺を番と呼んでいた。
 そして、俺の体を作り替えてしまった男。
 「俺には、それぐらいしか記憶がなくって」
 「四本角、ね」
 奥様が頷いた。
 「アニタスに探りを入れさせるわ」
 奥様が眉をしかめた。
 「うちのかわいいティルをこんな目にあわせて、絶対にぶん殴ってやる!」
 「はぁ・・」
 奥様がこれほど俺を大切に思ってくれていたとは。
 俺は、少し感動していた。
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