10 / 16
第一章 異世界転移
8 ガルルとノームって話せるのかよ
しおりを挟む「ふむふむ、この坊やが森の火事を消したくれたんだね……」
そう言うのは、土の妖精ノーム。
ガルルの毛並みを、よしよーしって感じでなでながら、僕を見つめているのだが……。
──僕のことを坊や? 落ち着け、ヒイロ、ここは異世界だから、何が起きても不思議じゃない。
ニッコリと笑うノーム。その見た目は、完全に小学生の女の子。
僕の心は、温もりを感じた。うわぁ、きゃわいい。
「森を助けてくれてありがとう……えっと、坊やの名前は?」
「……あ、僕の名前は、ヒイロです」
「ヒイロ、よき名前だね」
「ありがとう……あの、ちょっといいですか?」
「なに?」
「あなたは、土の妖精ノームですか?」
「え? なんであたしの名前を知っているの?」
「女神にもらった腕輪が教えてくれたんですが……」
「ほう、女神が……どうやら、坊やは気に入られたようだね」
「は、はあ……っていうか、僕は異世界からの転移者なんですが……」
それを早く言え! そう叫んだノームは、いきなり僕に近づいた。
顔が近い。
すると、ニコッと笑って、僕のほっぺにキスをするではないか!
「しゅき! 転移者の土魔道士を待っておったぞぉぉぉ!」
「え? どういうこと?」
「ヒイロ、女神から説明を受けていないのか?」
「うん」
「あの、駄女神……間違えて人間を転移させたな……」
「……?」
「いいヒイロ? よく聞けよ」
「うん」
「転移者はな、この世界の生き物よりも桁違いに強い。なぜなら、圧倒的なスピードで成長するんだ」
「……な、なぜ?」
「まずこの星の重力とヒイロがいた星の重力、それと空気の成分が、もうぜんぜん違うんだ。まあ、シンプルに言うと、こっちの異世界のほうが負荷が軽い」
「たしかに、身体が軽く感じる」
「だろ? よってヒイロは、この星の精力を使うことができる」
「それって魔法のこと?」
「正解! 水、火、風、土、光、無、の精力ね」
「うん、僕は土魔法が得意らしい」
「サイコー! ヒイロ、サイコー!」
ノームは、いきなり僕に抱きついた。
「なに? なに?」
「ヒイロ! ここに国をつくってくれない?」
「ふえ?」
「国だよ、く、に!」
──国? 意味不明なんだが……。
「ノーム、説明してくれないか? なぜここに国を?」
「オホン、簡単に言うとね、このグランドツリーを切り倒そうとする悪者がいるんだ」
「ほほう、魔王とか?」
「ご名答! 察しがいいね。この木には永遠の命を宿すパワーがあるからね」
「なるほど。で、魔王はもう動き出しているのか?」
「いや、魔王もバカではない。いくつかの国を制圧しないといけない」
「え、制圧? 魔王は空を飛んでくるってことができないのか?」
「できない」
「なんで?」
「実は結界がはってある。すべての魔族はこの木には近づけない。遺伝子レベルでそうできている」
「じゃあ、安心じゃないか……いや、まてよ、人間は入れるってことか?」
「正解! 魔王は、人間を制圧し、人間にこの木を切らせるのつもりなのだ」
「なあ、ノーム、だったら、人間も結界で入れなくすればいいのでは?」
「無理無理、それをすると、この木が枯れてしまう」
「なんで?」
「複雑な結界を作ると、磁場が狂うの。本当は結界なんてはりたくないのが本音」
「……そっか」
「結界がなくなれば、もっともっと、星の精力が広がっていくのになぁ」
わかった、と僕は言うと、ノームを抱っこして肩に乗せた。
「きゃー、高い!」
「まあ、僕にまかせてよ、ここに国をつくって、グランドツリーを守る!」
「おおお! 圧倒的感謝! ヒイロぉぉ、しゅき、しゅき、しゅき、大しゅきぃぃ!」
ノームは、僕のほっぺに、またキスをした。
「わっ、なんでキスするの?」
「だって土魔道士だもん、あたしは土の精霊、相性抜群じゃん」
「たしかに……」
ふと、ステータスを見てみる。
『 職業 土魔道士 レベル 28 』
あ、あれ? レベルがあがってる。
なんと、使える土魔法も増えているではないか!
おそらく、先ほど大量にゴブリンを倒したからだろう。
──この異世界のレベル上げは、楽勝っぽい。
それより問題は、国づくりほうだ。
僕は、ノームに話しかけた。
「で、どうやって国をつくるんだ? ノーム」
「……知らん」
「え?」
「あたしは妖精だよ? そんなの知らんよ……」
「あ、そっか」
「でもまあ、とにかく悪い人間からこの木を守るには、ここに城壁を築いたりしたほうがいいんじゃない? 知らんけど」
「だな、高い城壁で囲い、大砲や槍を設置したいな……兵士たちも育成しないと、強い武将も必要だな」
「うんうん」
「城壁のなかに食料も欲しいな、あと兵器をつくる工場も欲しい」
「そうそう! ヒイロすごいじゃんか! 天才軍師みたい!」
「えへへ、ストラテジーは得意なんだ」
「やったぁ! 土魔道士のヒイロなら、楽ちんに建築できるよっ! なあ、やってくれよぉ! いいだろ?」
「わかった。じゃあ、僕が考えた最強の国をつくってあげる」
「わーい、わーい、ありがとう!」
うふふ、と僕は微笑んだ。
たとえ異世界でも、僕の力が役に立てるなんて光栄だ。
「よーし! 国をつくるぞー!」
「おー!」
僕に肩車されているノームは、大喜びで叫んだ。
その瞳は、きらきらと誇らしげに、地平線を見つめていた。
0
お気に入りに追加
30
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる