ぼっちな土魔道士の楽ちん国づくり〜僕を追放した同級生が不法入国してきて草〜

花野りら

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第一章 異世界転移

8  ガルルとノームって話せるのかよ

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「ふむふむ、この坊やが森の火事を消したくれたんだね……」

 そう言うのは、土の妖精ノーム。
 ガルルの毛並みを、よしよーしって感じでなでながら、僕を見つめているのだが……。
  
 ──僕のことを坊や? 落ち着け、ヒイロ、ここは異世界だから、何が起きても不思議じゃない。

 ニッコリと笑うノーム。その見た目は、完全に小学生の女の子。
 僕の心は、温もりを感じた。うわぁ、きゃわいい。

「森を助けてくれてありがとう……えっと、坊やの名前は?」
「……あ、僕の名前は、ヒイロです」
「ヒイロ、よき名前だね」
「ありがとう……あの、ちょっといいですか?」
「なに?」
「あなたは、土の妖精ノームですか?」
「え? なんであたしの名前を知っているの?」
「女神にもらった腕輪が教えてくれたんですが……」
「ほう、女神が……どうやら、坊やは気に入られたようだね」
「は、はあ……っていうか、僕は異世界からの転移者なんですが……」

 それを早く言え! そう叫んだノームは、いきなり僕に近づいた。
 顔が近い。
 すると、ニコッと笑って、僕のほっぺにキスをするではないか!

「しゅき! 転移者の土魔道士を待っておったぞぉぉぉ!」
「え? どういうこと?」
「ヒイロ、女神から説明を受けていないのか?」
「うん」
「あの、駄女神だめがみ……間違えて人間を転移させたな……」
「……?」
「いいヒイロ? よく聞けよ」
「うん」
「転移者はな、この世界の生き物よりも桁違いに強い。なぜなら、圧倒的なスピードで成長するんだ」
「……な、なぜ?」
「まずこの星の重力とヒイロがいた星の重力、それと空気の成分が、もうぜんぜん違うんだ。まあ、シンプルに言うと、こっちの異世界のほうが負荷が軽い」
「たしかに、身体が軽く感じる」
「だろ? よってヒイロは、この星の精力を使うことができる」
「それって魔法のこと?」
「正解! 水、火、風、土、光、無、の精力ね」
「うん、僕は土魔法が得意らしい」
「サイコー! ヒイロ、サイコー!」

 ノームは、いきなり僕に抱きついた。

「なに? なに?」
「ヒイロ! ここに国をつくってくれない?」
「ふえ?」
「国だよ、く、に!」

 ──国? 意味不明なんだが……。

「ノーム、説明してくれないか? なぜここに国を?」
「オホン、簡単に言うとね、このグランドツリーを切り倒そうとする悪者がいるんだ」
「ほほう、魔王とか?」
「ご名答! 察しがいいね。この木には永遠の命を宿すパワーがあるからね」
「なるほど。で、魔王はもう動き出しているのか?」
「いや、魔王もバカではない。いくつかの国を制圧しないといけない」
「え、制圧? 魔王は空を飛んでくるってことができないのか?」
「できない」
「なんで?」
「実は結界がはってある。すべての魔族はこの木には近づけない。遺伝子レベルでそうできている」
「じゃあ、安心じゃないか……いや、まてよ、人間は入れるってことか?」
「正解! 魔王は、人間を制圧し、人間にこの木を切らせるのつもりなのだ」
「なあ、ノーム、だったら、人間も結界で入れなくすればいいのでは?」
「無理無理、それをすると、この木が枯れてしまう」
「なんで?」
「複雑な結界を作ると、磁場が狂うの。本当は結界なんてはりたくないのが本音」
「……そっか」
「結界がなくなれば、もっともっと、星の精力が広がっていくのになぁ」

 わかった、と僕は言うと、ノームを抱っこして肩に乗せた。
 
「きゃー、高い!」
「まあ、僕にまかせてよ、ここに国をつくって、グランドツリーを守る!」
「おおお! 圧倒的感謝! ヒイロぉぉ、しゅき、しゅき、しゅき、大しゅきぃぃ!」
 
 ノームは、僕のほっぺに、またキスをした。

「わっ、なんでキスするの?」
「だって土魔道士だもん、あたしは土の精霊、相性抜群じゃん」
「たしかに……」

 ふと、ステータスを見てみる。

『 職業 土魔道士 レベル 28 』

 あ、あれ? レベルがあがってる。
 なんと、使える土魔法も増えているではないか!
 おそらく、先ほど大量にゴブリンを倒したからだろう。
 
 ──この異世界のレベル上げは、楽勝っぽい。
 
 それより問題は、国づくりほうだ。
 僕は、ノームに話しかけた。 

「で、どうやって国をつくるんだ? ノーム」
「……知らん」
「え?」
「あたしは妖精だよ? そんなの知らんよ……」
「あ、そっか」
「でもまあ、とにかく悪い人間からこの木を守るには、ここに城壁を築いたりしたほうがいいんじゃない? 知らんけど」
「だな、高い城壁で囲い、大砲や槍を設置したいな……兵士たちも育成しないと、強い武将も必要だな」
「うんうん」
「城壁のなかに食料も欲しいな、あと兵器をつくる工場も欲しい」
「そうそう! ヒイロすごいじゃんか! 天才軍師みたい!」
「えへへ、ストラテジーは得意なんだ」
「やったぁ! 土魔道士のヒイロなら、楽ちんに建築できるよっ! なあ、やってくれよぉ! いいだろ?」
「わかった。じゃあ、僕が考えた最強の国をつくってあげる」
「わーい、わーい、ありがとう!」
 
 うふふ、と僕は微笑んだ。
 たとえ異世界でも、僕の力が役に立てるなんて光栄だ。
 
「よーし! 国をつくるぞー!」
「おー!」

 僕に肩車されているノームは、大喜びで叫んだ。
 その瞳は、きらきらと誇らしげに、地平線を見つめていた。









 
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