ぼっちな土魔道士の楽ちん国づくり〜僕を追放した同級生が不法入国してきて草〜

花野りら

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第一章 異世界転移

3  超能力に目覚めて暴走するやつ……

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「あはは、俺たちは勇者パーティだ!」

 そう言ってはしゃぐミツルは、どんどん森のなかを進んでいく。
 
 ──嫌な予感しかしない。
 
 とはいえ、異世界は歩いているだけで楽しい。
 見たこともない植物や虫がいるからだ。
 綺麗な花かと思って触れたら、蝶だった。
 カブトムシかと思って捕まえたら、植物だった。
 
「ヒイロくん、よくさわれるね! わたし虫は苦手なの、すごーい」

 と横からアイリちゃんが言う。
 上目使いの彼女は、本当にかわいい。

「あ、あわわ、アイリちゃ……ん」
「ヒイロくん? どうしたの?」
「あ、あの、あの……僕、小学生の頃、昆虫や植物の採集をしてたんです」
「……そ、そうなんだぁ」

 アイリちゃんの顔が引きつっている。
 あちゃあ、やってしまった。
 女の子と話したことがない僕は、どうしてもあがってしまう。
 
「キモ……」

 と、ミツルに言われ、僕は顔を下に向けた。
 さらに、チクチクと言葉の暴力は続く。
 
「ってか、なんでついてきてんの? こいつ」

 するとオオタが、僕のことを指さした。
 
「もしかして、ヒイロくんもパーティに入りたいんじゃないか?」

 すると、アイリが飛び跳ねて喜んだ。
 
「いいね! みんなでパーティしよ!」
「……でも、ミツルがいいって言うかな?」
「大丈夫だよ! だってここは異世界でしょ? みんなで協力しなきゃ、ね?」
「どうするミツル? ヒイロくんもパーティに入れてあげようよ」

 はあ? と言って怪訝な顔をするミツル。
 拳をつくり、近くにあった木を殴った。
 ガン、と音が響き、あたりにいた小動物が慌てて逃げていく。 
 ん? いや、彼らは動物と言っていいのだろうか? 魔物?
 うさぎのような、ネズミのような姿をしている。
 この異世界は、変わった生き物の、オンパレードだ。
 
「おい、アイリと話してんじゃねぇよ」
「ふぇ?」

 ミツルの声に、思わず僕は、変な声が出てしまった。
 ガンッと、また木を殴るミツル。
 無属性魔法を使って、筋力がアップされているようだ。
 本人に自覚があるかどうかは、わからないけど。
 
「ふぇ? じゃねえよ。おまえ、パーティに入れてやってもいいが、アイリと話すな」
「……は、はい」
「話したら、即、追放だかんな!」
「あ、あわ、あわ……わかりました」
「んだよ、キモいな……いちいち、どもってんじゃねぇよ」
「す、すいません、久しぶりに人と話したから……えっへへ」

 ほんとキモいなこいつ、とミツルは言って吐き捨てた。
 それにしても、なぜミツルは、アイリちゃんと僕が話すことが嫌なのだろう。
 
 ──さっぱり、わからない……。
 
 それにしても、僕は生まれて初めて、パーティと呼ばれるものに加入した。
 なんだか、誇らしい気持ちになる。
 みんなと友達になれたら、楽しいだろうなぁ、よし……。
 
 ──みんなを守ろう、全力で守ろう!
 
 そう思いながら、森のなかを歩いた。
 チラチラと、アイリちゃんが僕のことを見つめてくる。
 だけど、僕は目を合わせない。
 だって話したくなるし、アイリちゃんだって僕と話すなんて嫌だろう。
 ミツルに怒られるから。
 しかし僕は、パーティに入った以上、誰も死なせない、と思った。
 なんせここは異世界だ。いつ凶悪な魔物が出てもおかしくない。
 僕は、神経を研ぎ澄ませ、地表の振動を調べてみる。
 
 土魔法──フィールドワーク現地調査
 
 この魔法は周辺にいる生き物を調査することができる。
 しかしどうやら、その範囲は魔力に比例するらしい。
 僕のレベルは18。
 調査できる範囲は、ざっと半径100メートルほどだろう。
 おや? わりと近くに二足歩行の魔物がいるな。
 なんとなく、土が揺れる振動でわかることであった。
 
「どうした? ヒイロくん」

 そう聞くのは、オオタだ。
 その大きな手で拳をつくって殴れば、弱い魔物などイチコロだろう。
 
「あ、あの、その……魔物がいるかもしれません。早くこの森から抜けましょう」

 なんだとぉ? とミツルは言って、こちらをにらむ。
 本当に、なんで僕はこんなに嫌われているのだろう。
 まじで意味不明なのだが。
 ミツルは、木々の間から見える空を指さした。

「あそこに塔が見えるだろ?」
「あ、はい……」
「俺たちはあそこに向かう」
「え? 大丈夫でしょうか?」
「ああん? 俺に意見するのか?」
「いや、あの、その……優しい人間がつくった建物じゃないかもしれないですよ?」
「誰だよ? ヤクザだと言うのか?」
「わかりませんけど、むやみに建物に近づくのは得策ではないです」
「じゃあ、どうするんだよ」
「まずは平原に出て、野営するための準備をしたいです。できたら、川の近くがいい……」
「は? 野営ってなんだよ?」
「……キャンプのことです」
「おまえはバカか! どこにテントがあるんだよ。カレーを作る材料だってないぜ」
「……?」
 
 僕は、開いた口が塞がらなかった。
 ミツルという人間の知能指数は、低いと思った。つまり、バカだ。
 
「おい、おまえ、俺をバカにした目で見たな!」
「見てません……」

 僕はすぐに下を向いた。
 すると、ミツルは僕の胸ぐらを、グイッとつかむ。

「あの塔はきっと街なんだよ。俺はそこで泊まる。うまい食事と快適なベッドが欲しいからな」
「……あの、お金もないのに?」
「はあ? バカかおまえは、俺は勇者だぞ?」
「え?」
「街にはきっと王様みたいなやつがいて、会えば金をくれるんだよ」
「……はぁ?」
「それに、家のタンスや壺を調べれば、金なんていくらでも手に入る。知らないのかおまえ?」
「あの、それってゲームの話ですよね、本当にやったら犯罪ですよ?」
「ああん? 犯罪なわけあるか、そもそもゲームに警察はいないだろ?」
「……それに近い組織はあると思いますが」
「なんだそれ?」
「騎士団とか?」
「あはは、氣志團ってヤンキーかよ? ん、違うのか?」
「……えっと、ちょっと違うと思いますけど」
「とにかく、ここは魔法が使えるゲームの世界なんだから、何をしたっていいんだよ」

 するとアイリが、ニコッと笑いながら割って入ってきた。
 
「わーい、ゲームゲーム! だから仲良くしよ、ね?」

 か、可愛くて天使なのだが。
 
 ──アイリちゃんと一緒に冒険できるなら、死んでもいい。

 急に大人しくなったミツルは、チッと舌打ちをする。
 
「アイリ……こいつと話すなよ」
「えー! なんでよ?」
「こいつはみんなから嫌われてるんだ」
「ねぇ、嫌ってるのはミツルだけだよ?」
「違う、違う、クラスみんな言ってるよ、こいつはキモいって」
「ミツル、ここ学校じゃないよ。異世界なの、わかる? い、せ、か、い!」
「ああん、うるさい! とにかくこいつと話すな! わかったな」

 サッと踵を返したミツル。
 彼の背中に向かって、ベーと小さな舌を出すアイリちゃん。きゃわいい!
 
「ミツルのやつ、なんでヒイロくんのことになると嫌なやつになるんだろ……」
「……」

 僕は、アイリちゃんから話しかけられている。
 だけど、僕は黙っておいた。
 ミツルに見つかったら、何を言われるかわからない。
 ムッとするアイリちゃん、怒った顔もかわいい。
 僕は、黙々と歩いた。
 だが、その静寂を自分から破ってしまう。
 
「土が動いた!」
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