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第3章 レッドフェイスを止めろ!
18.校内巡り
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§
「疲れた!!」
会議はとーっても長かった! 終わる頃には、身体中がバキバキになってしまったよ!
会議が終わると、レンさんと校長を含む先生たちはホールから出て行った。早速、明日に向けて準備をするのだろう。今、ホールに残っているのはシルティアのメンバーと警備員のおじさんだけだ。
「少し休憩したら、警備員どのと一緒に校内巡りでござるな」
「その前に会議のおさらいをしておくのです」
チトセちゃんは、お茶を一口飲んだ後に会議のおさらいを始めた。
「明日、先生方とレンさんは学校周囲の見回り。警備員さんは校門の見張り。チトセたちシルティアは校舎の内外の見回りなのです」
「おじさん、しっかり見張るからね。泥舟に乗ったつもりで任せなさい」
「泥舟だと沈むだろうが……」
おじさんの発言に、カヤトくんがツッコミを入れる。このおじさん、ちょっと抜けていそうで心配だなあ。
「警備員さんは明日やることをしっかりと覚えているのです?」
「基本的に明日は部外者の立ち入りを禁止。普段お世話になっている業者が来た時は背中を確認する、だよね」
背中に銃創があれば、その人はレッドフェイスである可能性が高い。だから、どうしても学校に入る必要がある業者の人が来た時は背中を確認することになったんだ。私の情報……そして、五年前のパパの頑張りが役立って良かった。
「とにかく、侵入さえさせなければ学校の爆破は阻止できるのです」
「オレとしては、直接レッドフェイスを叩きのめしたいとこなんだがな……」
「あくまで、チトセたちに課せられたミッションは学校の防衛なのです」
「レッドフェイスを捕まえられたらそれに越したことはないでござる。しかし、相手は五年もの間捕まっていない犯罪者……」
「捕まえることより、爆破を防ぐことのみに集中した方が良いとチトセは思うのです」
チトセちゃんが言うように、MCCアカデミーの爆破を阻止するのが私たちシルティアの役割だ。捕まえるのが目的じゃない。
「ヒナはそれでいいのかよ」
「……うん。爆破を許したら、私たちの負けだと思う。レッドフェイスを捕まえたいって気持ちはもちろんあるけど……」
「そもそも遭遇しなければ捕まえようがないのです。チトセたちは、学校周囲を見回るメンバーよりも遭遇する可能性は低いと思うのですよ。ですが、もし遭遇したら、その時は捕まえることを考えてもよいのではないかと」
カヤトくんは、少し不満げな表情を浮かべながらもチトセちゃんの言葉に頷いた。
カヤトくんは、本当は学校周囲の見回りをやりたかったみたい。会議の途中でもそう言ったけど、ギアガル校長に却下されていた。
校長は、危険な目に遭う可能性が低い役割をシルティアのメンバーに割り当てたんだろう。そう、レンさんは言っていた。その後、危険なミッションであることには変わりないから気を引き締めようねという言葉も付け足していたっけ。
「……とにかく、万が一に備えることは大事なのです。だから、しっかりと校内巡りをしてMCCアカデミーの構造を頭に叩き込んでおく必要があるのです」
「そうだね。ということで、案内お願いします! おじさん!」
「りょーかい。それじゃ、一通り校舎を見て回ろうか」
私たちはおじさんに案内してもらいながら、校内巡りを開始した。
§
一階は一年生、二年生、三年生の教室と職員室。二階は大量の空き教室。三階は体育館を兼ねた大きなホール。四階は大量の本棚が並んだ図書室。
MCCアカデミーの校舎は、そんな構造になっていた。
「一通り見て回ったけど、何か質問はあるかい?」
「はい! 二階が空き教室だらけなのは何でですか?」
私は手を上げて、警備員のおじさんにそう質問した。使わない教室が沢山あるのは勿体ないよね。
「学校を初めて最初の数年は少人数の生徒を育成する方針みたいだけど、いずれはもっと生徒を増やしたいと校長は思っているみたい。その内、二階の教室も埋まるくらい生徒を入学させるつもりなんじゃないかな」
「へー。そうなったら賑やかで楽しそう」
二階の教室に生徒が入ってくるのはいつ頃かなあ。今すぐにでも生徒が増えたら嬉しいけど、それはないか。
「チトセも質問なのです。四階の階段の先は、何があるのです?」
図書室がある四階の奥。そこには一際大きな階段があった。チトセちゃんはそれが気になったようだ。
「屋上。そして、時計台に繋がっているね。ただ、屋上に続く扉は閉鎖されているよ。重要な場所だからね」
「重要な場所? 何でだ?」
「時計塔の中には『結界石』があるからでござる」
カヤトくんの疑問に、ウィガルくんがそう答えた。すると、警備員のおじさんが驚いた表情を浮かべる。
「その通りだけど、何で知っているんだい? もう先生方から聞いたのかい?」
「父上から聞いたでござるよ」
「ウィガルの親父は学校に詳しいのか?」
「詳しいも何も……。ギアガル校長はオイラの父上でござるから」
「ええっ!?」
小さくて可愛いウィガルくんと、大きくて怖いギアガル校長が親子!? 言われてみれば、毛皮の色が同じ緑色だけど……それでも信じられない。
「毛の色以外似てねえな」
「オイラもそう思うでござる。父上は強くて勇敢でござるが、オイラはよわよわな弱虫ゆえ……」
「いや。似てねえけど、弱虫ではないだろ。弱虫だったら、入学試験の時に逃げ出してんだろ」
カヤトくんがそう言うと、ウィガルくんははにかむように笑いながら尻尾をぶんぶんと振った。カヤトくんの言葉が嬉しかったみたい。
私も、カヤトくんと同じ意見。ウィガルくんは弱虫なんかじゃないよね。
「……そんで、結界石って何だよ」
「私も聞きたかった。何それ?」
「その名の通り、結界を作る効果がある特殊な石なのですよ」
私たちの疑問に答えてくれたのは、物知りなチトセちゃんだった。
「結界とは、モンスターを封じる見えない壁を作り出すものと思えば良いのです。モンスターが出現する地域の近くには結界石が置かれていることが多いのですよ」
「チトセどのの言う通りでござる。この結界石が、学園と試練の森の周りを囲む結界を生み出しているのでござるよ。それで、モンスターが出てこないように閉じ込めているのでござる」
「なるほどな。確かに、疑問には思ってた。モンスターがうろつくような森が近くにあるのに、それを野放しにするのは変じゃねえかってな」
私は、疑問にすら思っていなかった……。確かに、モンスターが野放しなのは危ないよね。
「しかし、結界を生み出すためには莫大な魔力を持つ魔法使いが結界石に魔力を注ぎ込む必要があるはずなのです」
「じゃあ、この学園にある結界石にも誰かが魔力を注ぎ込んでいるってことなの?」
「オイラの父上でござるよ。オイラの家は魔法の名門で、生まれながらにして莫大な魔力を持つ者が生まれやすいでござる。だから、莫大な魔力を持つ父上が結界石に魔力を毎日注ぎ込んでいるのでござるよ」
「へえーそうなんだ! じゃあ、ウィガルくんもすっごい魔力を持っていたりするの?」
私がそう言った瞬間、ウィガルくんの尻尾が力なく垂れてしまった。どうやら、まずいことを言ってしまったみたい。
「父上と違って、何故かオイラの魔力は平凡でござる……」
「ご、ごめん。でも、落ち込む必要はないと思うよ!」
「そうなのです。魔法を使えば使うほど、魔力は高まっていくのですよ。鍛え続ければ、莫大な魔力を手にする可能性はゼロではないのです」
「お二人とも、気をつかわせてすまないでござる……。実はオイラも、少しでも魔力を高めたいと思ってここに居るのでござる。そしていつか父上に認めてもらいたい。そう思っているのでござるよ。……それはそれとして、何故尻尾をもむでござるか? しかもヒナコどのまで……」
「そこに尻尾があるからだよね」
「なのです」
チトセちゃんと一緒に、私もウィガルくんの尻尾をもんでみた。
……うわっ! すごくふわふわ! 手触りが良すぎる! これはチトセちゃんが夢中になるのもわかるなあ。
「えーっと……他に質問はないかい?」
あっ、おじさんが私たちを見てちょっと引いている。調子に乗りすぎちゃった。反省。
「あー……屋上の見回りはしねえのか? 話を聞いた感じ、その結界石ってのが狙われたらやばそうだが」
結界石が壊れたら、多分モンスターを閉じ込める結界が破れるんだろうなあ。そうなるとモンスターが野放しになって、大変なことになる。
「屋上は校長以外立ち入り禁止になっているよ。屋上に続く扉は、基本的に鍵をかけっぱなし。一応、何かあった時のために職員室の金庫の中に予備のカギはあるんだけどね」
「ふむ。予備のカギは職員室の金庫の中でござるか……」
「まあ、生徒に貸し出されることは絶対にないと思うし、屋上は見回らなくていいと思うな。知らない人か魔族が校舎に入ろうとしたら、止める。それだけ考えればいいんじゃないかい?」
おじさんの言う通りかも。レッドフェイスが校舎に入る前に止めてしまえばいいだけの話だもんね。
「……他に質問がなければ、おじさんは持ち場に戻るね」
「ありがとう、おじさん!」
「どういたしまして。検討を祈るよ」
おじさんは左手をひらひらと振りながら、この場から去っていった。
「私たちはどうしよっか」
「学校巡りが終わったら、後は自由時間にしていいとトガラム先生は言っていたでござるな。明日に備えて寮で休息を取るか、もう一度校舎の中を見て回るか……」
「この図書室で魔法の勉強をするという選択肢もあるのですよ」
チトセちゃんが目をキラキラと輝かせている。今、私たちが居るこの四階の図書室は、勉強が好きなチトセちゃんにとって宝の山に見えるのかも。
「そうだね。もし、レッドフェイスと遭遇した時に役立つ魔法とかあれば覚えておきたいかも」
「ヒナにしてはいい心がけじゃねえか」
私にしてはという言葉が引っ掛かるけど、カヤトくんが褒めてくれて嬉しい。勉強はあまり得意じゃないけど、やる気が出てくる!
「では、図書室で各々勉強を始めるということでよろしいでござるか?」
ウィガルくんの言葉に、私たちは頷いた。
……さて、何の魔法の勉強をしようかな。
「疲れた!!」
会議はとーっても長かった! 終わる頃には、身体中がバキバキになってしまったよ!
会議が終わると、レンさんと校長を含む先生たちはホールから出て行った。早速、明日に向けて準備をするのだろう。今、ホールに残っているのはシルティアのメンバーと警備員のおじさんだけだ。
「少し休憩したら、警備員どのと一緒に校内巡りでござるな」
「その前に会議のおさらいをしておくのです」
チトセちゃんは、お茶を一口飲んだ後に会議のおさらいを始めた。
「明日、先生方とレンさんは学校周囲の見回り。警備員さんは校門の見張り。チトセたちシルティアは校舎の内外の見回りなのです」
「おじさん、しっかり見張るからね。泥舟に乗ったつもりで任せなさい」
「泥舟だと沈むだろうが……」
おじさんの発言に、カヤトくんがツッコミを入れる。このおじさん、ちょっと抜けていそうで心配だなあ。
「警備員さんは明日やることをしっかりと覚えているのです?」
「基本的に明日は部外者の立ち入りを禁止。普段お世話になっている業者が来た時は背中を確認する、だよね」
背中に銃創があれば、その人はレッドフェイスである可能性が高い。だから、どうしても学校に入る必要がある業者の人が来た時は背中を確認することになったんだ。私の情報……そして、五年前のパパの頑張りが役立って良かった。
「とにかく、侵入さえさせなければ学校の爆破は阻止できるのです」
「オレとしては、直接レッドフェイスを叩きのめしたいとこなんだがな……」
「あくまで、チトセたちに課せられたミッションは学校の防衛なのです」
「レッドフェイスを捕まえられたらそれに越したことはないでござる。しかし、相手は五年もの間捕まっていない犯罪者……」
「捕まえることより、爆破を防ぐことのみに集中した方が良いとチトセは思うのです」
チトセちゃんが言うように、MCCアカデミーの爆破を阻止するのが私たちシルティアの役割だ。捕まえるのが目的じゃない。
「ヒナはそれでいいのかよ」
「……うん。爆破を許したら、私たちの負けだと思う。レッドフェイスを捕まえたいって気持ちはもちろんあるけど……」
「そもそも遭遇しなければ捕まえようがないのです。チトセたちは、学校周囲を見回るメンバーよりも遭遇する可能性は低いと思うのですよ。ですが、もし遭遇したら、その時は捕まえることを考えてもよいのではないかと」
カヤトくんは、少し不満げな表情を浮かべながらもチトセちゃんの言葉に頷いた。
カヤトくんは、本当は学校周囲の見回りをやりたかったみたい。会議の途中でもそう言ったけど、ギアガル校長に却下されていた。
校長は、危険な目に遭う可能性が低い役割をシルティアのメンバーに割り当てたんだろう。そう、レンさんは言っていた。その後、危険なミッションであることには変わりないから気を引き締めようねという言葉も付け足していたっけ。
「……とにかく、万が一に備えることは大事なのです。だから、しっかりと校内巡りをしてMCCアカデミーの構造を頭に叩き込んでおく必要があるのです」
「そうだね。ということで、案内お願いします! おじさん!」
「りょーかい。それじゃ、一通り校舎を見て回ろうか」
私たちはおじさんに案内してもらいながら、校内巡りを開始した。
§
一階は一年生、二年生、三年生の教室と職員室。二階は大量の空き教室。三階は体育館を兼ねた大きなホール。四階は大量の本棚が並んだ図書室。
MCCアカデミーの校舎は、そんな構造になっていた。
「一通り見て回ったけど、何か質問はあるかい?」
「はい! 二階が空き教室だらけなのは何でですか?」
私は手を上げて、警備員のおじさんにそう質問した。使わない教室が沢山あるのは勿体ないよね。
「学校を初めて最初の数年は少人数の生徒を育成する方針みたいだけど、いずれはもっと生徒を増やしたいと校長は思っているみたい。その内、二階の教室も埋まるくらい生徒を入学させるつもりなんじゃないかな」
「へー。そうなったら賑やかで楽しそう」
二階の教室に生徒が入ってくるのはいつ頃かなあ。今すぐにでも生徒が増えたら嬉しいけど、それはないか。
「チトセも質問なのです。四階の階段の先は、何があるのです?」
図書室がある四階の奥。そこには一際大きな階段があった。チトセちゃんはそれが気になったようだ。
「屋上。そして、時計台に繋がっているね。ただ、屋上に続く扉は閉鎖されているよ。重要な場所だからね」
「重要な場所? 何でだ?」
「時計塔の中には『結界石』があるからでござる」
カヤトくんの疑問に、ウィガルくんがそう答えた。すると、警備員のおじさんが驚いた表情を浮かべる。
「その通りだけど、何で知っているんだい? もう先生方から聞いたのかい?」
「父上から聞いたでござるよ」
「ウィガルの親父は学校に詳しいのか?」
「詳しいも何も……。ギアガル校長はオイラの父上でござるから」
「ええっ!?」
小さくて可愛いウィガルくんと、大きくて怖いギアガル校長が親子!? 言われてみれば、毛皮の色が同じ緑色だけど……それでも信じられない。
「毛の色以外似てねえな」
「オイラもそう思うでござる。父上は強くて勇敢でござるが、オイラはよわよわな弱虫ゆえ……」
「いや。似てねえけど、弱虫ではないだろ。弱虫だったら、入学試験の時に逃げ出してんだろ」
カヤトくんがそう言うと、ウィガルくんははにかむように笑いながら尻尾をぶんぶんと振った。カヤトくんの言葉が嬉しかったみたい。
私も、カヤトくんと同じ意見。ウィガルくんは弱虫なんかじゃないよね。
「……そんで、結界石って何だよ」
「私も聞きたかった。何それ?」
「その名の通り、結界を作る効果がある特殊な石なのですよ」
私たちの疑問に答えてくれたのは、物知りなチトセちゃんだった。
「結界とは、モンスターを封じる見えない壁を作り出すものと思えば良いのです。モンスターが出現する地域の近くには結界石が置かれていることが多いのですよ」
「チトセどのの言う通りでござる。この結界石が、学園と試練の森の周りを囲む結界を生み出しているのでござるよ。それで、モンスターが出てこないように閉じ込めているのでござる」
「なるほどな。確かに、疑問には思ってた。モンスターがうろつくような森が近くにあるのに、それを野放しにするのは変じゃねえかってな」
私は、疑問にすら思っていなかった……。確かに、モンスターが野放しなのは危ないよね。
「しかし、結界を生み出すためには莫大な魔力を持つ魔法使いが結界石に魔力を注ぎ込む必要があるはずなのです」
「じゃあ、この学園にある結界石にも誰かが魔力を注ぎ込んでいるってことなの?」
「オイラの父上でござるよ。オイラの家は魔法の名門で、生まれながらにして莫大な魔力を持つ者が生まれやすいでござる。だから、莫大な魔力を持つ父上が結界石に魔力を毎日注ぎ込んでいるのでござるよ」
「へえーそうなんだ! じゃあ、ウィガルくんもすっごい魔力を持っていたりするの?」
私がそう言った瞬間、ウィガルくんの尻尾が力なく垂れてしまった。どうやら、まずいことを言ってしまったみたい。
「父上と違って、何故かオイラの魔力は平凡でござる……」
「ご、ごめん。でも、落ち込む必要はないと思うよ!」
「そうなのです。魔法を使えば使うほど、魔力は高まっていくのですよ。鍛え続ければ、莫大な魔力を手にする可能性はゼロではないのです」
「お二人とも、気をつかわせてすまないでござる……。実はオイラも、少しでも魔力を高めたいと思ってここに居るのでござる。そしていつか父上に認めてもらいたい。そう思っているのでござるよ。……それはそれとして、何故尻尾をもむでござるか? しかもヒナコどのまで……」
「そこに尻尾があるからだよね」
「なのです」
チトセちゃんと一緒に、私もウィガルくんの尻尾をもんでみた。
……うわっ! すごくふわふわ! 手触りが良すぎる! これはチトセちゃんが夢中になるのもわかるなあ。
「えーっと……他に質問はないかい?」
あっ、おじさんが私たちを見てちょっと引いている。調子に乗りすぎちゃった。反省。
「あー……屋上の見回りはしねえのか? 話を聞いた感じ、その結界石ってのが狙われたらやばそうだが」
結界石が壊れたら、多分モンスターを閉じ込める結界が破れるんだろうなあ。そうなるとモンスターが野放しになって、大変なことになる。
「屋上は校長以外立ち入り禁止になっているよ。屋上に続く扉は、基本的に鍵をかけっぱなし。一応、何かあった時のために職員室の金庫の中に予備のカギはあるんだけどね」
「ふむ。予備のカギは職員室の金庫の中でござるか……」
「まあ、生徒に貸し出されることは絶対にないと思うし、屋上は見回らなくていいと思うな。知らない人か魔族が校舎に入ろうとしたら、止める。それだけ考えればいいんじゃないかい?」
おじさんの言う通りかも。レッドフェイスが校舎に入る前に止めてしまえばいいだけの話だもんね。
「……他に質問がなければ、おじさんは持ち場に戻るね」
「ありがとう、おじさん!」
「どういたしまして。検討を祈るよ」
おじさんは左手をひらひらと振りながら、この場から去っていった。
「私たちはどうしよっか」
「学校巡りが終わったら、後は自由時間にしていいとトガラム先生は言っていたでござるな。明日に備えて寮で休息を取るか、もう一度校舎の中を見て回るか……」
「この図書室で魔法の勉強をするという選択肢もあるのですよ」
チトセちゃんが目をキラキラと輝かせている。今、私たちが居るこの四階の図書室は、勉強が好きなチトセちゃんにとって宝の山に見えるのかも。
「そうだね。もし、レッドフェイスと遭遇した時に役立つ魔法とかあれば覚えておきたいかも」
「ヒナにしてはいい心がけじゃねえか」
私にしてはという言葉が引っ掛かるけど、カヤトくんが褒めてくれて嬉しい。勉強はあまり得意じゃないけど、やる気が出てくる!
「では、図書室で各々勉強を始めるということでよろしいでござるか?」
ウィガルくんの言葉に、私たちは頷いた。
……さて、何の魔法の勉強をしようかな。
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