9 / 20
第2章 恐怖のラビリンス
8.悪霊退散
しおりを挟む
「悪霊退散!! 悪霊退散っっ!!」
『落ち着くのじゃ! カズキ!!』
オレは、かっこいいものが好きだ。可愛いものも、キライではない。
――けど、こわいものは大ッッキライだ!!
今、オレは夜の墓地に居た。いや。正確に言えば、夜の墓地の見た目をしたラビリンスの中に居る。
そして、ラビリンスの中でオレは顔がない人形の大群に囲まれていた!
顔がない人形の群れが、カタカタと音を鳴らしてオレに迫ってくる! だからオレは刀に変身したシバをひたすらに振った!
刀から放たれた炎の柱が、人形の群れを包み込む!
『考えなしに鳴力を使うのはやめるんじゃ! このままだと体力が尽きるぞい!』
しまった、と思った時にはもう遅い。オレの体がカタカタと震え、力が抜けていく。
大量の顔なし人形を燃やし尽くしたが、それを上回る勢いで顔なし人形は増えている。
どうにかしないといけないけど、鳴力を使いすぎて刀を握るのも厳しくなってきた。
――ああ。どうして、こんなことになったんだっけ。
§
四月九日。火曜日の放課後。オレは、校舎の二階にある園芸部の部室に居た。
「園芸部の部長であるひふみんの救出。そして、バグスピ関連事件を引き起こしている可能性がある仮面の女子の正体をあばく。とりあえず、それが今のワイらの目標やな」
そう言いながら、シロー先輩がホワイトボードに文字を書いていく。どうやら、シロー先輩は園芸部の部長をひふみんというあだ名で呼んでいるらしい。
「で、その目標を達成するためにはカズキくんとシバくんの力が必要不可欠なんや」
シロー先輩がオレにペン先を突きつけてきた。急に話を振られたオレはつい慌ててしまう。
「何でですか?」
「昨日、分かったやろ。ワイもニナちゃんも、戦闘向きの鳴力を持ってないんや。もし、昨日カズキくんが戦闘向きの鳴力に目覚めなかったらやばかったなあ」
「それと、お花が大好きなカズキさんは花言葉とかにも詳しいみたいなので、バグスピの正体をあばくためにも必要な存在ですね」
シロー先輩と二宮がうんうんと頷きながらそう言った。
「いいか。オレは花が好きとは言ってない。キライではないだけだ。あと、昨日も思ったけど、二人ともオレに丸投げしすぎじゃないか? 今まではどうしてたんだよ」
「私の姉さんが戦闘向きの鳴力を持ってて、お花にも詳しかったんですよ。なので、バグスピの攻撃をしのいだり正体をあばく係は姉さんでした」
「なるほど……」
昨日、ラビリンスの中でオレがやったようなことを二宮のお姉さんがやっていたわけか。大変だっただろうなあ。
「ちなみにワイらの鳴力は戦闘向きではないけどラビリンスの外でも大活躍やで。条件はあるけど、ラビリンスの気配を現実で察知することができるんや」
「条件って?」
「それはな、夕方にしかラビリンスの気配を察知できないということや。そもそも、ラビリンスの入口が夕方にしか出現しないもんやからなあ」
ラビリンスの入口が夕方にしか出現しない? それは、一体どうしてだろう。
「ラビリンスの入口が夕方にしか出現しないのは、一体どうしてだろうって顔をしてますね。カズキさん」
「お前はエスパーか何かか?」
「違います。ただのアイドルです」
このアイドル、怖い。どうしてオレが考えていることが分かったんだ。ひょっとしてオレ、表情に考えてることが出やすいのか?
「なあカズキくん。逢魔が時って言葉を、知ってるか?」
「おーまがとき……。聞いたことがあるような、無いような……」
「簡単に言えば、不吉なことが起こりそうな時間ってことや。詳しい理屈は分からんが、バグスピは逢魔が時――つまり、夕方に活動が活発になる。そして、ラビリンスの入口が出現することがある。まさに、不吉なことが起こりやすいわけや」
不吉なことが起こりやすい時間。それが、逢魔が時か。バグスピやラビリンスが出現しやすいなんて、確かに不吉な時間だな。
「むむっ! 大変なの~!」
部室のすみっこに居たベラが、突然そう叫んだ。急にどうしたんだろう。
「ラビリンスの気配を感じるの~!」
「なんやて!? 噂をすればなんとやらってヤツやな! 二日続けてラビリンスが現れるなんて、きついわぁ……。で、場所は?」
「花守駅方面なの~」
「よし、早速向かうで!」
シロー先輩はオレの肩をバシッと叩いた後、ベラを抱き抱え、駆け足で部室を飛び出した。恐らく、花守駅に向かうのだろう。
「さあ、行きましょう! カズキさん!」
「あのなあ。まだ入部すらしてないし協力するとも言ってないんだけど。オレ」
「行かないんですか?」
二宮がちょっと悲しそうな顔をした。思わず、オレの口から「うっ」と声が漏れる。
「……はあ。行くよ。困ってる人やバグスピが居るのに見て見ぬふりするなんて、カッコ悪いことはできないからな」
「そうこなくっちゃです!」
「うむ! それでこそカズキじゃ! さあ、行くぞい!」
シバがオレの背中に飛び乗ってそう叫んだ。ひょっとして、背負ったまま走れということか? まあ、シバは軽いからいいけどさ。
「あ。ベラに駅まで乗せてもらうのはダメかな」
廊下をやや早足で進む途中、オレは二宮にそう聞いてみた。すると二宮は首を横に振りながら、
「忘れたんですか? 一般の人はフラスピを見ることができません。つまり、巨大化したベラさんに乗って移動したら、私たちは空中に浮いたまま高速で移動する変な集団としてニュースに出ちゃいますよ」
「うっ。嫌すぎる……」
「でしょう? だから自転車で駅まで行きますよ!」
花守駅は、ここから自転車で十分程走った場所にある。近くには色んな食べ物屋さんがあったりして、田舎の中の都会と言った感じの場所なんだよな。こんな状況でなければ買い食いしたい。
……って、そんなことを考えてる場合じゃないな! 急ごう!
『落ち着くのじゃ! カズキ!!』
オレは、かっこいいものが好きだ。可愛いものも、キライではない。
――けど、こわいものは大ッッキライだ!!
今、オレは夜の墓地に居た。いや。正確に言えば、夜の墓地の見た目をしたラビリンスの中に居る。
そして、ラビリンスの中でオレは顔がない人形の大群に囲まれていた!
顔がない人形の群れが、カタカタと音を鳴らしてオレに迫ってくる! だからオレは刀に変身したシバをひたすらに振った!
刀から放たれた炎の柱が、人形の群れを包み込む!
『考えなしに鳴力を使うのはやめるんじゃ! このままだと体力が尽きるぞい!』
しまった、と思った時にはもう遅い。オレの体がカタカタと震え、力が抜けていく。
大量の顔なし人形を燃やし尽くしたが、それを上回る勢いで顔なし人形は増えている。
どうにかしないといけないけど、鳴力を使いすぎて刀を握るのも厳しくなってきた。
――ああ。どうして、こんなことになったんだっけ。
§
四月九日。火曜日の放課後。オレは、校舎の二階にある園芸部の部室に居た。
「園芸部の部長であるひふみんの救出。そして、バグスピ関連事件を引き起こしている可能性がある仮面の女子の正体をあばく。とりあえず、それが今のワイらの目標やな」
そう言いながら、シロー先輩がホワイトボードに文字を書いていく。どうやら、シロー先輩は園芸部の部長をひふみんというあだ名で呼んでいるらしい。
「で、その目標を達成するためにはカズキくんとシバくんの力が必要不可欠なんや」
シロー先輩がオレにペン先を突きつけてきた。急に話を振られたオレはつい慌ててしまう。
「何でですか?」
「昨日、分かったやろ。ワイもニナちゃんも、戦闘向きの鳴力を持ってないんや。もし、昨日カズキくんが戦闘向きの鳴力に目覚めなかったらやばかったなあ」
「それと、お花が大好きなカズキさんは花言葉とかにも詳しいみたいなので、バグスピの正体をあばくためにも必要な存在ですね」
シロー先輩と二宮がうんうんと頷きながらそう言った。
「いいか。オレは花が好きとは言ってない。キライではないだけだ。あと、昨日も思ったけど、二人ともオレに丸投げしすぎじゃないか? 今まではどうしてたんだよ」
「私の姉さんが戦闘向きの鳴力を持ってて、お花にも詳しかったんですよ。なので、バグスピの攻撃をしのいだり正体をあばく係は姉さんでした」
「なるほど……」
昨日、ラビリンスの中でオレがやったようなことを二宮のお姉さんがやっていたわけか。大変だっただろうなあ。
「ちなみにワイらの鳴力は戦闘向きではないけどラビリンスの外でも大活躍やで。条件はあるけど、ラビリンスの気配を現実で察知することができるんや」
「条件って?」
「それはな、夕方にしかラビリンスの気配を察知できないということや。そもそも、ラビリンスの入口が夕方にしか出現しないもんやからなあ」
ラビリンスの入口が夕方にしか出現しない? それは、一体どうしてだろう。
「ラビリンスの入口が夕方にしか出現しないのは、一体どうしてだろうって顔をしてますね。カズキさん」
「お前はエスパーか何かか?」
「違います。ただのアイドルです」
このアイドル、怖い。どうしてオレが考えていることが分かったんだ。ひょっとしてオレ、表情に考えてることが出やすいのか?
「なあカズキくん。逢魔が時って言葉を、知ってるか?」
「おーまがとき……。聞いたことがあるような、無いような……」
「簡単に言えば、不吉なことが起こりそうな時間ってことや。詳しい理屈は分からんが、バグスピは逢魔が時――つまり、夕方に活動が活発になる。そして、ラビリンスの入口が出現することがある。まさに、不吉なことが起こりやすいわけや」
不吉なことが起こりやすい時間。それが、逢魔が時か。バグスピやラビリンスが出現しやすいなんて、確かに不吉な時間だな。
「むむっ! 大変なの~!」
部室のすみっこに居たベラが、突然そう叫んだ。急にどうしたんだろう。
「ラビリンスの気配を感じるの~!」
「なんやて!? 噂をすればなんとやらってヤツやな! 二日続けてラビリンスが現れるなんて、きついわぁ……。で、場所は?」
「花守駅方面なの~」
「よし、早速向かうで!」
シロー先輩はオレの肩をバシッと叩いた後、ベラを抱き抱え、駆け足で部室を飛び出した。恐らく、花守駅に向かうのだろう。
「さあ、行きましょう! カズキさん!」
「あのなあ。まだ入部すらしてないし協力するとも言ってないんだけど。オレ」
「行かないんですか?」
二宮がちょっと悲しそうな顔をした。思わず、オレの口から「うっ」と声が漏れる。
「……はあ。行くよ。困ってる人やバグスピが居るのに見て見ぬふりするなんて、カッコ悪いことはできないからな」
「そうこなくっちゃです!」
「うむ! それでこそカズキじゃ! さあ、行くぞい!」
シバがオレの背中に飛び乗ってそう叫んだ。ひょっとして、背負ったまま走れということか? まあ、シバは軽いからいいけどさ。
「あ。ベラに駅まで乗せてもらうのはダメかな」
廊下をやや早足で進む途中、オレは二宮にそう聞いてみた。すると二宮は首を横に振りながら、
「忘れたんですか? 一般の人はフラスピを見ることができません。つまり、巨大化したベラさんに乗って移動したら、私たちは空中に浮いたまま高速で移動する変な集団としてニュースに出ちゃいますよ」
「うっ。嫌すぎる……」
「でしょう? だから自転車で駅まで行きますよ!」
花守駅は、ここから自転車で十分程走った場所にある。近くには色んな食べ物屋さんがあったりして、田舎の中の都会と言った感じの場所なんだよな。こんな状況でなければ買い食いしたい。
……って、そんなことを考えてる場合じゃないな! 急ごう!
0
あなたにおすすめの小説
夢の中で人狼ゲーム~負けたら存在消滅するし勝ってもなんかヤバそうなんですが~
世津路 章
児童書・童話
《蒲帆フウキ》は通信簿にも“オオカミ少年”と書かれるほどウソつきな小学生男子。
友達の《東間ホマレ》・《印路ミア》と一緒に、時々担任のこわーい本間先生に怒られつつも、おもしろおかしく暮らしていた。
ある日、駅前で配られていた不思議なカードをもらったフウキたち。それは、夢の中で行われる《バグストマック・ゲーム》への招待状だった。ルールは人狼ゲームだが、勝者はなんでも願いが叶うと聞き、フウキ・ホマレ・ミアは他の参加者と対決することに。
だが、彼らはまだ知らなかった。
ゲームの敗者は、現実から存在が跡形もなく消滅すること――そして勝者ですら、ゲームに潜む呪いから逃れられないことを。
敗退し、この世から消滅した友達を取り戻すため、フウキはゲームマスターに立ち向かう。
果たしてウソつきオオカミ少年は、勝っても負けても詰んでいる人狼ゲームに勝利することができるのだろうか?
8月中、ほぼ毎日更新予定です。
(※他小説サイトに別タイトルで投稿してます)
はるのものがたり
柏木みのり
児童書・童話
春樹(はるき)が突然逝ってしまって一ヶ月。いつも自分を守ってくれていた最愛の兄を亡くした中学二年生の春花(はるか)と親友を亡くした中学三年生の俊(しゅん)は、隣の世界から春樹に来た招待状を受け取る。頼り切っていた兄がいなくなり少しずつ変わっていく春花とそれを見守る俊。学校の日常と『お隣』での様々な出来事の中、二人は気持ちを寄せ合い、春樹を失った悲しみを乗り越えようとする。
「9日間」「春の音が聴こえる」「魔法使いたちへ」と関連してくる物語。
(also @ なろう)
せかいのこどもたち
hosimure
絵本
さくらはにほんのしょうがっこうにかよっているおんなのこ。
あるひ、【せかいのこどもたち】があつまるパーティのしょうたいじょうがとどきます。
さくらはパーティかいじょうにいくと……。
☆使用しているイラストは「かわいいフリー素材集いらすとや」様のをお借りしています。
無断で転載することはお止めください。
かつて聖女は悪女と呼ばれていた
朔雲みう (さくもみう)
児童書・童話
「別に計算していたわけではないのよ」
この聖女、悪女よりもタチが悪い!?
悪魔の力で聖女に成り代わった悪女は、思い知ることになる。聖女がいかに優秀であったのかを――!!
聖女が華麗にざまぁします♪
※ エブリスタさんの妄コン『変身』にて、大賞をいただきました……!!✨
※ 悪女視点と聖女視点があります。
※ 表紙絵は親友の朝美智晴さまに描いていただきました♪
宇宙人は恋をする!
山碕田鶴
児童書・童話
【第2回きずな児童書大賞/奨励賞を受賞しました。ありがとうございました。】
私が呼んでいると勘違いして現れて、部屋でアイスを食べている宇宙人・銀太郎(仮名)。
全身銀色でツルツルなのがキモチワルイ。どうせなら、大大大好きなアイドルの滝川蓮君そっくりだったら良かったのに。……え? 変身できるの?
中学一年生・川上葵とナゾの宇宙人との、家族ぐるみのおつきあい。これは、国家機密です⁉
(表紙絵:山碕田鶴/人物色塗りして下さった「ごんざぶろ」様に感謝)
本の冒険者たち~はじまりの色彩~
月影 朔
児童書・童話
夏休み、退屈と無気力に沈む小学6年生のクウトは、世界の色彩が失われていることに気づく。
ある日、秘密の図書室で本の精霊リーフと賢者フクロウのオウルに出会い、人々から感情の色が失われている世界の危機を知らされる。失われた「怒り」を取り戻すため、クウトは『オズの魔法使い』の世界へ飛び込むが――。
いじめ、劣等感、孤独。誰もが抱える複雑な感情と向き合い、友情、勇気、信頼の「きずな」を紡ぎながら、自分と世界の色を取り戻す、感動の冒険ファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる