下宿屋 東風荘 6

浅井 ことは

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再び

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「周太郎さん、バレバレだよ?出てきてよ」

「すいません。やはり気になったもので……風の一族のようにやはりうまく身を隠すことはできませんでした」

「平気だって言ったのに。それに、周太郎さん体が大きいからすぐ分かったよ?」

「早く声をかけてくださったら良かったのに」

「面白かったんだもん」

「はい?」

「僕が振り返ろうとすると、すごく焦って物陰に隠れるのに、全身隠れてなかったりとか、足だけ見えてたりとか」

「ちゃんと隠れたつもりなんですが」

「心配性なんだから。お爺ちゃんも居るよねー?」

バレておったか!と笑いながら祖父も出てきて、周太郎はさらに驚き、「御館様も?」とキョトンとしていた。

「まさか雪翔に気づかれるとはの。いつから知っておった?」

「バス降りてからずっと。なんとなく分かるようになったんだよ僕。いつからかは分からないんだけど、檪が来てからは得に」

「相当相性が良いようじゃの。折角じゃし、秋彪の神社でも見て帰るか?」

「いいの?」

「昼に戻ればいいじゃろう」

バスに乗って、いつも降りる所から四つ先のバス停で降りて秋風神社に行くと、通りにはもう屋台ができていて、いつ始まってもおかしくない位人で溢れていた。

「神輿も大きいのかな?」

「これだけ大掛かりじゃからのぅ。ここは豊作じゃったかの?あ奴もちゃんと社狐をしておるようじゃな」

「してますよ。って、なんで来てんだよ!危ないだろ?」

「週末来るよ?でも、お爺ちゃんも一緒だから見に来たの」

「気づいたからいいものの、祭になると流石にみんなの気までは探せないから余計に気をつけてもらわないと……じっちゃんも不用心すぎだって」

「じ、じっちゃん?」

「あ、俺と兄貴はさそんなに丁寧な言葉とか使わないから呼びにくくて、この間いいって言われたからじっちゃん」

「そうだったんだ」

「此奴らも良くくるでの。もう家族みたいなものじゃ」

「うん。ねえ、上はお神輿置いてあるの?」

「今やっと修復とか終わったから、綺麗になってるぞ?そこの通りを歩くとか言ってたな」

「早く見たいなぁ」

「今年は十年に一度の大きな祭りだから、去年より人が増えると思う。近くの社狐も手伝いに来てくれるから会えるかもしれないぞ?」

「沢山くるの?」

「社五つ。俺が見てるところの狐が来る……っと、もう戻らないと。そこの脇道から公園に行けるから行ってみるといいよ。池にいっぱい鳥が来てるから」

秋彪に言われた道を行くと池があり、ボートの貸出も行っているようで、何種類かの鳥が水浴びに来ていた。

「魚がいるのかな?」

「結構な大きさじゃからおるんじゃろう。鯉も亀もおるし、なかなか栄えておるな」

「そこ基準なの?」

「そうではないが、野鳥などがこうして集まってくるところは、大体栄えておるところが多い。最近はめったに見んがのぅ」

「観光地だし、お祭りすごそうだね」

「一番心配なのは雪翔がはぐれない事じゃの」

はぐれないもん!と言いながらも、近くにおいてあったお祭りのスケジュールの書いてある紙を貰い、バスに乗って家まで帰る。
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