下宿屋 東風荘 6

浅井 ことは

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再び

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祠かな?といいながらもやはり迷ってしまうが、ちゃんと話しておこうと思い、「前に祠見て僕気持ち悪くなったけど、あの洞窟においてあった祠と、この写真の祠の形が同じに見えるんだ。祠ってみんな同じ作りなの?」

「いえ、違うとおもいます。大体の形は同じですけど、そんなに似てます?」

「うん。だって、あの時いくつか見たのが同じ作りだったのと、ほら、ここの扉の上に何か書いてあるように見えるのわかる?」

拡大してもぼけてしまうのだが、ある程度わかるくらいにまで大きくしてみんなに見てもらう。

「彫り物は定番ですけど、ここにはしませんねぇ。ここには紋章が入りますけど、それも大きい社にあるものくらいですから。ここは観光地なのでそういったように見せるのに付けたのかは分かりませんけど」

「人魚っているの?」

「いる訳ねーだろ!」

「おお、流石に早かったの。婆さん、これを熱燗にしてくれ」

「どこまで行ってたの?」

「岩戸に行ったら酒渡されて、手紙も預かった。それから叔父上に言われたことを書いたものを、警備の役人に渡して……」

「頼んでおいたんじゃよ。酒はそろそろ届くと思うておったし、昴と京弥に手紙を出してもろうたんじゃ」

「で?人魚ってなんの話だ?」

さっきまで調べていたことを話すと、那智がそれで人魚なのかと納得していたが、行く日が祭りの後だというと、俺も残ると言いだした。

「てっきり行くというかと思ってましたが」

「男手はこっちも多いほうがいいだろ?それに、冬弥が行くなら俺はこっちだな。航平はついて行け」

「はい?」

「そういったのに詳しいじゃないか。役に立って来いってんだよ」

「言われなくても雪翔に着いてくよ!」

「全く仲がいいんだか悪いんだかわからない親子ですねぇ」

それからも調べれるだけ調べて、行き方は冬弥が少し考えると言ったので任せることにし、そろそろ夕飯の支度をと言い出したので、今夜は何かな?と思いながらも、先に翡翠を何とかしないとと祖母の元に行く。

「ひーちゃん大丈夫?」

「よく寝てるわよ?もうしばらくこのまま寝かせておいてあげましょうねぇ」

「お婆ちゃん、膝痛くない?重くなったでしょ?」

「軽いものよ?普段は花ちゃんの特等席なの」

「花ちゃんごめんね」

「いいです。元気になってくれたら」

夕飯は祖母が洋食がいいと言ったので、冬弥を手伝いにキッチンへ行くと、人数分アルミホイルを用意してくれと言われ、ホイル蒸しだと思って切っていき、そこにバターを塗っておいていく。

「雪翔も大分料理覚えましたよねぇ」

「毎日見てるもん」

「このまま料理人になります?」

「家でするだけがいいよ。毎日だと、自分で作ったの食べたくなくなっちゃうかも」

「それはあります。なので、私もつまみは栞さんに任せっきりですから」

「ねえ冬弥さん。航平ちゃんの術って、使い続けても大丈夫なのかな?」

「どちらかと言うと、あの袋の粉を媒介にしてる様ですし、普段は精霊もついてますから大丈夫でしょう。それに使い慣れてないとあんな感じになりますから、彼もこれから覚えていけばいいと思いますよ?」

「だからお爺ちゃん怒ったの?」

「あれは那智が悪いですねぇ。那智くらいになれば気の乱れなど分かるものなんですが……でも、お手柄ではあります」
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