下宿屋 東風荘 6

浅井 ことは

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再び

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「あれは物や場所探しの術なんだけど、大雑把な位置確認までしかしたことがなくって、でも集中したら細かい場所まで特定できると思ってしたんだ」

「一つ聞きますが、今までにもこれをして、同じように体の具合が悪くなったりしました?」

「いえ、ありません。ただ、普通のもの探しならこんな風になったことは無いんですけど、なにかに守られているものなどはかなり集中力がいるので」

「航平、お主は二・三日は術を使ってはならんぞ?」と那智を解放した祖父が言い、那智に至っては、足が痺れたと四つん這いでソファまで来て座り、「航平痛かったのを我慢した俺を褒めろ」などと馬鹿なことを言っている。

「那智よ、もう一度一から話を聞くのが良いのか?」

「も、もういいです。叔父上の仰ることはごもっともで……」

「ならば大人しくしておれ。あ、そうじゃ。那智よちょっと使いに行ってきてくれ」

「まだ足が……」

「軟弱ものが!」

結局、祖父に軟弱ものと言われて、軟弱じゃないと痺れた足で立ち上がり、メモを持って窓から出ていってしまった。

「お爺ちゃん、何頼んだの?」

「ん?儂の好きな日本酒の買い出しと、岩戸や方々に伝言をな」

「うちの近くのは閉まってるよ?」

「少し遠いがの。那智は移動に関してはかなりの速さを持っておるし、窓から抜けてくる技にも長けておるからこれでも頼っておるんじゃよ?」

「飴と鞭ってやつ?」

「そう言うことにしておこうかの?それに、このあたりの社狐が行く方が、岩戸の門番も顔を知っておるから話も早いと思うし……うん、まぁそういう事じゃ」

他に何を頼んだんだろう?と思いながらも、冷たいお茶を栞が持ってきてくれたので、航平に渡す。

「坊ちゃん、御館様の見られていた地図なのですが、前の洞窟と繋がっているのではないでしょうか?前に見た時にはあれ以上道はなかったように見えましたが」

「でも、町の名前しか分からないし」

「ほれ、ここが洞窟じゃろ?で、ここが海。航平が指した場所は海の側じゃ。儂も同じことを考えておったのじゃが、ここには何かあったかと思うてな」

「父上、そこは行ってませんから何があるのかわからないですよ?」

「あ、そうだ!三郎さん、僕の部屋のノートパソコン持ってきてくれる?」

三郎に頼んで持ってきてもらい、大体の住所と観光地・名所などを入力して検索すると、いくつかの神社や祠、資料館などが出てきたので、そこからさらに海の近くを調べていく。

「便利なものじゃの」

「雪翔、ちゃんと名物のお土産も調べてね?」

「う、うん……」

「雪翔、もう一つ旅行ガイドみたいなところから探してみろよ。隠れた名所なんてのも載ってるから」

「わかった」

いくつかのサイトなどを見て周り、洞窟と海、それに町の名前が一致するところで絞れたのは二つ。

「神社ですか?」

「跡地って書いてあるよ?えっと、昔に建てられて地震で幾つかの建造物が崩壊したあと、小さな入口が見つかり、洞窟と判明。現在調査中のため封鎖。本殿の修復は済んでるから見れるみたいだよ?もう一つは人魚伝説の祠だって」

「航平、その探し物の術をしているときに、頭にイメージとか浮かびませんでした?」

「そう言うのは今までもほとんどなくって。たまに近くならば分かることもあるんですけど」

「そうですか。雪翔は気になるところあります?」
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