魔物の森に捨てられた侯爵令嬢の、その後。

松石 愛弓

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 私とカイン王子が婚約したことを知ったネイル王子から、実家のエルミナ侯爵家へ私宛の手紙が届いたので、侯爵家の者がエドワーナ王国王宮にいる私に手紙を届けに来てくれた。

 白い封筒には、見覚えのあるネイル王子の癖のある字が並んでいた。

 今となっては懐かしい、読みにくい文字。

 誰も居ない王宮庭園の東屋あずまやで座っていると、爽やかな風が通り抜けていく。

 封筒を開けるのがなんだか怖くて、5分くらい封筒を凝視してしまった。

 差出人は、あのネイル王子だし。封筒の中に何か入ってるなんてことはあるのかしら?

 とりあえず、封筒をシャカシャカ上下に振ってみる。

 太陽光に透かしてみる。

 でも、封筒に異常があるかどうか分からなかった。

「そんなに人を疑ってはダメよね」

 そう自分に言い聞かせると、封筒をペーパーナイフで切り、開封した。

 パラリ、と便箋を開く。



『ルナリス。あれから私は、王妃の命令で毎日、救護院の手伝いをしている。治癒魔法が使える私は、病人や怪我人の治療にひっぱりだこだ。手があいた時は雑用でも何でもしている。自分が王子だと思えないくらい、こき使われている。

 救護院では、重傷で助けられない命もある。その命が消えた時、親兄弟、妻、子供たち、友人たちが号泣するんだ。なぜ助けられないんだと私に掴みかかってくるんだ。そんな時、無力な自分を申し訳なく思ったり、命の大切さが身に沁みる。赤ん坊が生まれた時は、皆で感動する。毎日、命の尊さ、眩しさに触れている。

 最近、思うんだ。私はなぜ君に、あんなに酷い事をしてしまったのかと。

 ルナリス。悪かった。心から反省している。
 これからもずっと、たくさんの命を救って改心していくから、いつか私を許してほしい。

 君の幸せを祈っている

 ネイル・フォン・アーロン』



 便箋にはさまれていたのは、小さな押し花。

 私の好きな花を覚えていてくれた。

 押し花なんて作る人じゃなかったのに……。

 ネイル王子の手紙を読み終えて、ほっと息をついた。

 彼は変わろうとしている。

 私も、過去に囚われず、心を切り替えよう。
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