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封筒に便箋をなおしていると、東屋にカイン王子が現れた。
深紅の薔薇の花束を抱えて。
彼は私の持っている手紙を気にしつつも、私を気遣っているのか見なかったふりをして、花束を渡してくれた。
「いつも お花をありがとう」
綺麗な薔薇を抱きしめる。
頬に触れた瑞々しい花びらの感触が気持ちいい。
「なんだか、清々しい表情をしてる」
カイン王子が小さくつぶやいた。
「私、わだかまりが消えたんです。いろいろと吹っ切れてスッキリしました」
心からの笑顔を向ける。
「そう」
彼はいつもの穏やかな笑顔をくれた。
「つらく悲しい出会いもあるけど、幸せで嬉しい出会いもあると知りました。カイン様に出会えて、励まされ、幸せを感じられ、寂しかった私の心に光を射してくださいました。感謝しかありません。不束者ですが、これからもよろしくお願いいたします」
深くお辞儀する私を彼は抱きしめて、
「僕も、あなたに出会えて幸せです。これからも、よろしくお願いしますね」
と耳元でささやいた。
カイン様の腕の中は、とても安心できる温かい場所。
深呼吸して、幸せをかみしめる。
私たちの結婚式には、母のように慕っていたアーロン王国のお妃様も来てくださる。
あの優しい方にまたお会いできる。
式では、王妃様にいただいた宝石を身に着けよう。喜んでくださるかしら。
悲しい縁もあるけど、幸せな縁もある。
優しく温かい人との幸せな縁を、大事にしてゆきたい。
「ルナリス。ずっと君を大切にするよ」
「私も、カイン様を大切にします」
差し出された大きな手を、そっと握り返す。
「じゃあ、行こうか」
「はい」
ふたりは手を繋いで、未来へと歩き出した。
魔物の森に捨てられた侯爵令嬢は、その後、幸せをつかみました。
end
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
しおりをはさんでくださる方や、お気に入り登録してくださる方がおられて、嬉しかったです。
深紅の薔薇の花束を抱えて。
彼は私の持っている手紙を気にしつつも、私を気遣っているのか見なかったふりをして、花束を渡してくれた。
「いつも お花をありがとう」
綺麗な薔薇を抱きしめる。
頬に触れた瑞々しい花びらの感触が気持ちいい。
「なんだか、清々しい表情をしてる」
カイン王子が小さくつぶやいた。
「私、わだかまりが消えたんです。いろいろと吹っ切れてスッキリしました」
心からの笑顔を向ける。
「そう」
彼はいつもの穏やかな笑顔をくれた。
「つらく悲しい出会いもあるけど、幸せで嬉しい出会いもあると知りました。カイン様に出会えて、励まされ、幸せを感じられ、寂しかった私の心に光を射してくださいました。感謝しかありません。不束者ですが、これからもよろしくお願いいたします」
深くお辞儀する私を彼は抱きしめて、
「僕も、あなたに出会えて幸せです。これからも、よろしくお願いしますね」
と耳元でささやいた。
カイン様の腕の中は、とても安心できる温かい場所。
深呼吸して、幸せをかみしめる。
私たちの結婚式には、母のように慕っていたアーロン王国のお妃様も来てくださる。
あの優しい方にまたお会いできる。
式では、王妃様にいただいた宝石を身に着けよう。喜んでくださるかしら。
悲しい縁もあるけど、幸せな縁もある。
優しく温かい人との幸せな縁を、大事にしてゆきたい。
「ルナリス。ずっと君を大切にするよ」
「私も、カイン様を大切にします」
差し出された大きな手を、そっと握り返す。
「じゃあ、行こうか」
「はい」
ふたりは手を繋いで、未来へと歩き出した。
魔物の森に捨てられた侯爵令嬢は、その後、幸せをつかみました。
end
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
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