魔物の森に捨てられた侯爵令嬢の、その後。

松石 愛弓

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「は?」

 私は耳を疑った。

 ネイル王子の浮気が原因で婚約破棄されるというのに、謝罪の言葉も無く、けなされた挙句、消えろと?

 唖然とする私に、ネイル王子はドヤ顔で話し始めた。

「そなたは王妃のお気に入り。私の都合で婚約破棄などすれば、私は母にお叱りを受けることになるだろう。そしてカトリーヌも、そなたから私を奪った女と噂されるかもしれない。それって、かわいそうだろう?
 そこでだ! そなたが自分の意志で突然、家出したとしよう。
 世間は『将来の王太子妃としての自覚が無い。無責任だ』とそなたを批判し、私には同情が集まるだろう。そして、婚約者に逃げられた傷心の王子を慰めた女性としてカトリーヌは賞賛される。
 というわけで、そなたが居なくなってくれると、とても都合が良いのだ」

 ふんぞり返って偉そうにのたまうネイル王子に、心底、愛想が尽きる。

「……私が王太子妃になる約束を守らず家出などすれば、王家を侮辱したとされ、我が侯爵家は王家から厳しい処分を受けますよね?」

 キッ、と睨みつけても、ネイル王子は嘲るように笑っているだけだ。

「愛する私の役に立てるのだ。嬉しいだろう?」

 なぜ、そういう解釈に……? ナルシストバカ?

「ネイル様の都合の為に、我が伯爵家に犠牲になれと?」

「犠牲というか……忠義心と言ってほしいな」

「そこまでしなくても、普通に婚約破棄できませんか?」

 真剣に話す私を、まるで聞き分けのない子供を見るような目で見ながら、やれやれと溜息をつきながらネイル王子は答えた。

「私は誰からも責められたくないし、誰からも良く思われていたい。だから……愛する私の為に、消えてくれ」

「あなたを愛してなど、おりませんっ!」

 あっ。つい本音が。

「ははは。強がるな。私のために、そなたは魔物の森に消えるのだ」

 ネイル王子は残酷な笑みを浮かべると、すっと人差し指を私に向けた。
 まるで、銃口を向けられているようで恐ろしくなる。

 王子の指先から眩い光の魔法が放たれ、私を拘束してゆく。

「……いやっ!」

 無数の光の帯が体に巻き付き、身じろぎさえ出来ない。

 美しすぎる悪魔は、冷たい声で呟いた。

「さらば……ルナリス。もう二度と、そなたに会うことは無い」


 鬼畜クズ王子~~~っ!!

 心の叫びも空しく、私は巨大な光の渦に飲み込まれ、瞬間移動で魔物の森へと捨てられた。

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