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しおりを挟む「ルナリス。君は男爵令嬢カトリーヌを虐めていたそうだな」
私の婚約者 アーロン王国第一王子ネイル様は、人気の無い校舎裏に私を呼び出し、冷酷な視線を向けて言い放った。
金髪碧眼の完璧な美貌に均整のとれた肢体は怒っていてもとても美しいが、私には全く身に覚えが……。
「侯爵令嬢だからと驕り高ぶり、か弱い乙女に辛く当たるとは。そなたの心根には心底がっかりした」
「ネイル様ぁ、カトリーヌ、怖かったのぉ~」
「よしよし、もう大丈夫だ、カトリーヌ。私がずっと守ってやるからな。ルナリスとの婚約は破棄することにする」
薄ピンク色のゴージャスな縦巻きロールヘアーにレースふりふりの可愛いドレス姿で、ネイル王子の腕にしなだれかかるカトリーヌ嬢。
あっ、今、意地悪な顔でニヤリ笑いしましたわね!
ネイル様もデレデレと鼻の下を伸ばして、カトリーヌ嬢の腰に回した手つきが馴れ馴れしい感じで……。
あぁ、そういうことですか。ふたりはもう、お付き合いされていますのね。
別に。ネイル様との婚約は、王家からの命令に従っていただけですし。
ネイル様は眉目秀麗ですけど、私に対して優しい方ではなかったですし。
婚約破棄と言われても、目の前でイチャつかれても構いませんが、無実の罪を着せられるのは心外ですわね。
「ネイル様。私、カトリーヌ嬢を虐めたりしていませんわ。本日が初対面ですのに」
呆れた表情で言うと、
「見苦しいぞ、ルナリス! 私に婚約破棄されたくないからと、今更縋り付いても遅いわ! それに……そなたが本当にカトリーヌ嬢を虐めていたかどうかなど、どうでもいいことなのだよ。私はカトリーヌ嬢を気に入っている。女らしく愛嬌があり、可愛い。手も握らせない堅物の読書好きなそなたと一緒に居るより、よっぽど楽しいからな」
嘲るように笑うネイル王子。悪魔のような表情ですわね。
「わかりました。婚約破棄、お受け致します」
この人と、これ以上話をしても無駄。私はお辞儀をし、婚約破棄を受け入れた。
「物分かりが良いな。しかし……それだけでは満足できない」
「は?」
底冷えのする悪魔のような低い声で囁くと、ネイル王子はニヤリと歪んだ笑みを浮かべた。
「そなたには、消えてもらう」
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