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第5章 フィガロは広場に行く3 ニコラス・コレーリャ

幕間のことば

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☆☆☆

 そして私たちは真っ黒な林を通りぬけてさっきの柏の疎林を通り、古いポラーノの広場につきました。
 そこにはいつものはんのきが風にもまれるたびに青くひかっていました。
 わたくしどもの影はアセチレンの灯に黒く長くみだれる草の波のなかに落ちてまるでわたくしどもは一人ずつ巨きな川を行く汽船のような気がしました。

 いつものところへ来てわたくしどもは別れました。
 そこにほんの小さなつめくさのあかりがまた一つともっていました。
 わたくしはそれを摘んでえりにはさみました。

「それではさよなら。また行きますよ。」ファゼーロは云いながらみんなといっしょに帽子を振りました。
 みんなも何か叫んだようでしたがそれはもう風にもって行かれてきこえませんでした。
 そしてわたくしもあるきみんなも向こうへ行ってその青い風のなかのアセチレンの火と黒い影がだんだん小さくなったのです。

☆☆☆

引用 「ポラーノの広場」<表題も「ポラーノの広場」>宮沢賢治(新潮文庫)

※改行を入れています。

 宮澤賢治さんのお話は他に似たもののないファンタジーだと思います。
 ここで引用した、『ポラーノの広場』は表題をはじめ、ミーロ、ファゼーロなどイタリアを少し感じさせるものが多いことから使わせていただきました。ミケーレ、ファルネーゼ(パウルス3世の俗名の苗字)などを思い起こすことができます。特に、『ポラーノ』という言葉はイタリア語の『ポポロ』(市民)と通じるように私には思えます。
 3章から5章を通じて、ベースになった色彩はこのお話の「色」だったと思います。その色を感じることができて、書けて嬉しい。

 宮澤賢治さん、たいへんな力をいただきました。
 ありがとうございます。

 おがたさわ

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