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第6章 海の巡礼路(東洋編) フランシスコ・ザビエル
幕間の詩
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◆ ◆
わたしはふたたび、ふりかえることを願わないが
わたしは願わないが、
わたしはふりかえることを願わないが
利益と損失のあいだをゆれながら
さまざまな夢がゆきかうこのみじかなかよい路で
生と死のあいだの、この夢のゆきかううす暗がりで
(父よ、わたしを祝福して下さい)わたしはこうしたものを持ちたいとは思わないが
広い窓からみかげ石の岸辺のほうへ
白い帆はなおも海を目指して飛び、海を目指して走る
こわれない翼
失われたライラックと失われた海の声に
失われた心は高まり、喜ぶ
弱い心ははずみ、うなだれたアキノキリン草や
失われた海の臭いをもとめて立ちあがり
ウズラの叫びや輪をえがく千鳥を
生き返らそうと心ははずむ
そして、冥い眼は象牙の門のあいだに
うつろな形をつくり
砂地の塩の香りをあらたにする
これは死と生のあいだの緊張のひととき
三つの夢が、青い岩のあいだをゆきかう
寂寥の場である
しかし、イチイの木から振り落とされた声が流れさるとき
ほかのイチイをゆりうごかして、答えをもとめよう。
祝福された修道女、清らかな母、泉の精、園の心よ、
われらがいつわりで自分たちをあざけるのを許し給うな
思うて、しかも思わないすべを教えたまえ、
これらの岩のあいだにあって、しかも
静かにすわるすべを教えたまえ
主の御心のなかにわれらの安らぎを
これらの岩のなかに座すとも
修道女よ、母よ
河の精よ、海の心よ、
わたしを手放したもうな
わが叫びを主のもとへとどかしめたまえ。
「聖灰水曜日」第6部 T.S エリオット
「エリオット詩集」上田保、鍵谷幸信訳(思潮社)
Ash-Wednesday VI by Thomas Stearns Eliot
published in 1930, London and New York
※現代の表記上の関係で一部言葉を入れ替えています。ご了承ください。
わたしはふたたび、ふりかえることを願わないが
わたしは願わないが、
わたしはふりかえることを願わないが
利益と損失のあいだをゆれながら
さまざまな夢がゆきかうこのみじかなかよい路で
生と死のあいだの、この夢のゆきかううす暗がりで
(父よ、わたしを祝福して下さい)わたしはこうしたものを持ちたいとは思わないが
広い窓からみかげ石の岸辺のほうへ
白い帆はなおも海を目指して飛び、海を目指して走る
こわれない翼
失われたライラックと失われた海の声に
失われた心は高まり、喜ぶ
弱い心ははずみ、うなだれたアキノキリン草や
失われた海の臭いをもとめて立ちあがり
ウズラの叫びや輪をえがく千鳥を
生き返らそうと心ははずむ
そして、冥い眼は象牙の門のあいだに
うつろな形をつくり
砂地の塩の香りをあらたにする
これは死と生のあいだの緊張のひととき
三つの夢が、青い岩のあいだをゆきかう
寂寥の場である
しかし、イチイの木から振り落とされた声が流れさるとき
ほかのイチイをゆりうごかして、答えをもとめよう。
祝福された修道女、清らかな母、泉の精、園の心よ、
われらがいつわりで自分たちをあざけるのを許し給うな
思うて、しかも思わないすべを教えたまえ、
これらの岩のあいだにあって、しかも
静かにすわるすべを教えたまえ
主の御心のなかにわれらの安らぎを
これらの岩のなかに座すとも
修道女よ、母よ
河の精よ、海の心よ、
わたしを手放したもうな
わが叫びを主のもとへとどかしめたまえ。
「聖灰水曜日」第6部 T.S エリオット
「エリオット詩集」上田保、鍵谷幸信訳(思潮社)
Ash-Wednesday VI by Thomas Stearns Eliot
published in 1930, London and New York
※現代の表記上の関係で一部言葉を入れ替えています。ご了承ください。
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