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36話 王家の三兄弟
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第一王子様から5年前に亡くなった王妃の書いた物だと説明を受け、随分と古くなった遺書を見せてもらった。紙を手に取ると、魔力の流れを感知した。魔法が少し掛かっている様だったが、まあ気にすることはないだろう。
取り敢えず、俺が本当に王族なのか、どんな内容が記されているのかを確認する。
ルイ、レイ、ライ。
私の大切な息子達。
可愛い可愛い息子達。
大変な時期に産んでしまって、ごめんなさい。
夢を諦めさせてしまって、ごめんなさい。
成長を見届けられなくて、ごめんなさい。
私は貴方達が健やかに成長する事を陰ながら支えることしか出来ませんでした。
愛する夫は儚く散りゆく白百合を見て、ただ涙を流すばかり。私は幸せ者でした。
けれど私は、罪をこの世に残してしまいました。
今も尚、ライ・フォールとして生きている子は、レイフォンドと双子で産まれました。
けれど、この子は特別だった。高い魔力量と生まれながらにして知的な目を輝かせるこの子は、いつかきっと派閥争いに巻き込まれることでしょう。
そしていつの日か命を落としてしまう。
秘密にしていたのですが、私は、未来が少しだけ見えるのです。過去も、少しだけ。
小さい命を救うには、王族とは無関係の人に育ててもらう他ありませんでした。
私は、双子を産んだ直後、産母として来ていた女性に、この子を託しました。
あの子の本当の名は、ライヴィル・ラティス。私の可愛い可愛い末の息子。
どうか、困っていたら助けてあげて下さい。
守ってあげて下さい。
私の大切な・・・愛する家族達。
ローリエ・ラティス
信じられない気持ちで、何度も繰り返し文章を確認しながら読み終えた。
美しい文字で綴られている遺文には、確かに俺の名前が書かれていた。
育ててくれた父さんと母さんは、俺と血の繋がりは無かったってことか。顔が似なかったのはそのせいだったのか。そういえば確か王妃様は俺と同じ・・・黒髪黒目だった気がする。
それに、父さんと母さん、二人共ラブラブだし母さん女の子が欲しいってたまに言っているけれど、子供を授かる気配なかったな。・・・つまり、妊娠できない体だったんだろう。前世でも不妊に関してはよく耳にするので、産みの親が誰なのかは明白だ。
俺が王子だってこと、二人は知っていたんだろうな。それでも普通の子供と変わらない愛情を注いでくれるなんて、良い親に育ててもらったな。
「キミの方がしっかり者みたいだけど、ボクの弟なんだって。書いてあったでしょ?面白いよね。」
「いや、双子って書いてありますし、どちらかと言えば俺の方が体格いいですし!?」
それに前世を合わせたら実年齢は・・・いや、考えないでおこう。
「はぁっ!?生意気!!ボクはまだまだこれから成長期がきて筋肉ついてくるハズなんだけど!?なんてったってお兄ちゃんだからね!」
兄弟がいるなんて想像だにしなかった事態が起きている。それもよりによって末っ子。兄と急に言われてもな・・・弟って言うのならまだ分かるんだが。
「はいはい、そうですか王子様。」
「お前も王子だぞ。それと敬語は不要だ。」
つかさず第一王子様からツッコミが入る。
「気遣いありがとうございま・・・ありがとう。・・・でも今更王子とか言われても、違和感しかないんだが。」
「だろうな。」
「それに俺、今の母さんと父さんが好きだからな。産みの親を知れて良かったけど、俺は別に王子になるつもりは・・・」
「ああ、お前の両親は誰だとかは強要する気はない。だが、王子にはなってもらうぞ・・・後ろ盾があることを示す為にも、家柄を釣り合わせる為にも。婚約はもう、発表されているからな。」
「っ!取り消しは!」
「する必要ないだろう?お互い好きなんだろう?」
お互い、という言葉が引っかかる。俺が一方的にこんな感情を持っているだけで、ノアディアは俺をただの友人としか思っていない筈だ。告白なんてされたことないしな。俺に婚約を申し込んだのは・・・きっと誰かと間違えたとかだろ。
そもそも婚約出来るのが変じゃないか。アイツも俺も男なんだぞ。こんな婚約、無かったことにした方が絶対いい。
「・・・勘違いだ。ノアディアは別に俺の事、好きだとかそんなんじゃないんだよ。」
「は?」「ハア?」
二人の王子の声が重なる。
「だから、俺はこの国の王子にも婚約者にもならない。」
「ちょっと待ってよ!キミが婚約破棄なんてしでかしたらあの男の手によってボク達の国が壊滅するんだけど!?」
「そんなことする訳ないだろ。」
冷めた紅茶はまだ残っていたが、一言言い終えて俺は生徒会室から逃げ出してしまった。
これ以上二人と会話をしていると、ノアディアの好意が俺に向いているのではないかと誤想してしまいかねない。
俺はどうしても自分に自信が無い。もう少しだけ、この気持ちを整理する時間が欲しい。
────それから結論を出してもいいだろうと、俺は悠長に考え過ぎてしまっていた。・・・本当に、取り返しがつかない程に、呑気だったんだ。
自ら傷付けた動脈から血が噴き出す。
俺が幾つもある選択肢を間違わずに、全て最善の選択をしていれば、あんな惨ましい終幕は訪れなかったのだろう。
それでも、・・・は幸せになったのだと、そう信じたい。ノアディアの決断は間違っていなかったと、そう信じたい。
数日後、俺は息絶えたノアディアの胸の中で涙を流す。
────何だ、今のは。
断片的な映像と絶望の感情が頭に流れてきた。
生徒会室から出て・・・それから頭の中に、動画みたいなリアルな風景が目に飛び込んできて・・・まさか
未来が、見えたのか。
王妃の書いた遺書のせい・・・か。紙に残っていた魔力の正体は、未来視の魔法を俺に掛ける為のものだったのかもしれない。
何の為に・・・。
俺は、何を、間違えたんだ・・・。
取り敢えず、俺が本当に王族なのか、どんな内容が記されているのかを確認する。
ルイ、レイ、ライ。
私の大切な息子達。
可愛い可愛い息子達。
大変な時期に産んでしまって、ごめんなさい。
夢を諦めさせてしまって、ごめんなさい。
成長を見届けられなくて、ごめんなさい。
私は貴方達が健やかに成長する事を陰ながら支えることしか出来ませんでした。
愛する夫は儚く散りゆく白百合を見て、ただ涙を流すばかり。私は幸せ者でした。
けれど私は、罪をこの世に残してしまいました。
今も尚、ライ・フォールとして生きている子は、レイフォンドと双子で産まれました。
けれど、この子は特別だった。高い魔力量と生まれながらにして知的な目を輝かせるこの子は、いつかきっと派閥争いに巻き込まれることでしょう。
そしていつの日か命を落としてしまう。
秘密にしていたのですが、私は、未来が少しだけ見えるのです。過去も、少しだけ。
小さい命を救うには、王族とは無関係の人に育ててもらう他ありませんでした。
私は、双子を産んだ直後、産母として来ていた女性に、この子を託しました。
あの子の本当の名は、ライヴィル・ラティス。私の可愛い可愛い末の息子。
どうか、困っていたら助けてあげて下さい。
守ってあげて下さい。
私の大切な・・・愛する家族達。
ローリエ・ラティス
信じられない気持ちで、何度も繰り返し文章を確認しながら読み終えた。
美しい文字で綴られている遺文には、確かに俺の名前が書かれていた。
育ててくれた父さんと母さんは、俺と血の繋がりは無かったってことか。顔が似なかったのはそのせいだったのか。そういえば確か王妃様は俺と同じ・・・黒髪黒目だった気がする。
それに、父さんと母さん、二人共ラブラブだし母さん女の子が欲しいってたまに言っているけれど、子供を授かる気配なかったな。・・・つまり、妊娠できない体だったんだろう。前世でも不妊に関してはよく耳にするので、産みの親が誰なのかは明白だ。
俺が王子だってこと、二人は知っていたんだろうな。それでも普通の子供と変わらない愛情を注いでくれるなんて、良い親に育ててもらったな。
「キミの方がしっかり者みたいだけど、ボクの弟なんだって。書いてあったでしょ?面白いよね。」
「いや、双子って書いてありますし、どちらかと言えば俺の方が体格いいですし!?」
それに前世を合わせたら実年齢は・・・いや、考えないでおこう。
「はぁっ!?生意気!!ボクはまだまだこれから成長期がきて筋肉ついてくるハズなんだけど!?なんてったってお兄ちゃんだからね!」
兄弟がいるなんて想像だにしなかった事態が起きている。それもよりによって末っ子。兄と急に言われてもな・・・弟って言うのならまだ分かるんだが。
「はいはい、そうですか王子様。」
「お前も王子だぞ。それと敬語は不要だ。」
つかさず第一王子様からツッコミが入る。
「気遣いありがとうございま・・・ありがとう。・・・でも今更王子とか言われても、違和感しかないんだが。」
「だろうな。」
「それに俺、今の母さんと父さんが好きだからな。産みの親を知れて良かったけど、俺は別に王子になるつもりは・・・」
「ああ、お前の両親は誰だとかは強要する気はない。だが、王子にはなってもらうぞ・・・後ろ盾があることを示す為にも、家柄を釣り合わせる為にも。婚約はもう、発表されているからな。」
「っ!取り消しは!」
「する必要ないだろう?お互い好きなんだろう?」
お互い、という言葉が引っかかる。俺が一方的にこんな感情を持っているだけで、ノアディアは俺をただの友人としか思っていない筈だ。告白なんてされたことないしな。俺に婚約を申し込んだのは・・・きっと誰かと間違えたとかだろ。
そもそも婚約出来るのが変じゃないか。アイツも俺も男なんだぞ。こんな婚約、無かったことにした方が絶対いい。
「・・・勘違いだ。ノアディアは別に俺の事、好きだとかそんなんじゃないんだよ。」
「は?」「ハア?」
二人の王子の声が重なる。
「だから、俺はこの国の王子にも婚約者にもならない。」
「ちょっと待ってよ!キミが婚約破棄なんてしでかしたらあの男の手によってボク達の国が壊滅するんだけど!?」
「そんなことする訳ないだろ。」
冷めた紅茶はまだ残っていたが、一言言い終えて俺は生徒会室から逃げ出してしまった。
これ以上二人と会話をしていると、ノアディアの好意が俺に向いているのではないかと誤想してしまいかねない。
俺はどうしても自分に自信が無い。もう少しだけ、この気持ちを整理する時間が欲しい。
────それから結論を出してもいいだろうと、俺は悠長に考え過ぎてしまっていた。・・・本当に、取り返しがつかない程に、呑気だったんだ。
自ら傷付けた動脈から血が噴き出す。
俺が幾つもある選択肢を間違わずに、全て最善の選択をしていれば、あんな惨ましい終幕は訪れなかったのだろう。
それでも、・・・は幸せになったのだと、そう信じたい。ノアディアの決断は間違っていなかったと、そう信じたい。
数日後、俺は息絶えたノアディアの胸の中で涙を流す。
────何だ、今のは。
断片的な映像と絶望の感情が頭に流れてきた。
生徒会室から出て・・・それから頭の中に、動画みたいなリアルな風景が目に飛び込んできて・・・まさか
未来が、見えたのか。
王妃の書いた遺書のせい・・・か。紙に残っていた魔力の正体は、未来視の魔法を俺に掛ける為のものだったのかもしれない。
何の為に・・・。
俺は、何を、間違えたんだ・・・。
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