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10話 ピンクの少女と乙女ゲーム②

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と、長々と瓶底メガネ少女は俺に説明をし終えた。

この話を聞いた時、青ざめそうになる顔を誤魔化すのに苦労した。俺が死ぬなんてことや、ノアディアの最期はどうだったかなんて知りたくなかったし、例えゲームの内容だとしても胸糞悪過ぎる。笑えない冗談だ。





ちなみに何故こんな状況になっているのかといえば、俺は今日、珍しく食堂で朝食を摂ってしまったからだ。本当についてない。

昨日のことキスのせいで眠りにつくのが遅くなり、早起きできず料理する時間がなかったので、食堂を使うことにしたのだ。

今度また新しい魔法でも編み出そうかと考えながら、一人でゆっくり朝食を食べていたところ、瓶底メガネ少女がいきなり隣の席を陣取り、「唐突だが、私には前世の記憶が残っている。」と言い始め、長々と乙女ゲームについてをレクチャーし始めてきた時は正気を疑った。唐突すぎるぞ、おい。

最初はスルーしようと思っていたが、何やら真剣そうな表情をしていたのでやめた。

一通り話し終えてスッキリした表情の彼女は、ニコニコと気味悪くこちらを伺ってくる。何だよ、感想は?みたいな顔するのやめろよ。

「色々とツッコミたい部分はあるが・・・取り敢えず、お前の目的は何なんだ?」

「私はどうしても、この世界が好きだから。だから、幸せにしたいの。私の守れる範囲の人達くらいは。そしてあわよくば薔薇薔薇して頂いたり攻略対象者同士で美しい恋愛を────」

今度はおかしな方面で話を進めるつもりらしいので、話を区切るように思い出したことを伝えた。

「あ、そういえばストーリに出てくる怪しい魔法陣を操る人にこの前会ったかもな。一人は小さな女の子だったけど。」

「そ、その人達のことだよライ君!大丈夫だったの!?本来のストーリーだとそこで命を落としてこの国もろともバッドエンドだったんだよ!?」

「興味深い人達ではあったけど・・・別に邪悪な意志はなかったような気がするんだけどな・・・。」

「騙されちゃダメだよ、あの二人は・・・なんだっけ・・・大切な事を忘れている気がするけど、なんか、頭のネジが外れている人の手下なんだよ!」

「お、おう。じゃあ気を付けるよ。忠告どうも。」

「ガンガンいこうぜは危険だからね!?命を大事にだよ!?」

本気で俺を懸念けねんしてくれているのか、大声で叫んできた。俺と違って朝から元気過ぎないか。どこから湧き出てくるんだよそのパワー・・・。

「声のボリューム下げてくれ。それよりも・・・その、あまり聞きたくはないんだけどさ・・・。」

「どうしたの?」

深くは聞きたくはないが・・・瓶底メガネ少女の妄想であって欲しいのだが・・・。

「俺がノアディアの運命の番ってギャグ、あんま面白くなかったぞ?」

「ギャグじゃないよ!実際ライ君はノアディア様にとっても愛されてるでしょ?」

「目でも腐っているのか?」

いや、ある意味腐ってはいるんだが・・・俺がノアディアの番・・・つまり恋人ってことか?と解釈するのはやめて頂きたい。そんな仲ではないし、俺はむしろ昨日のあの一件から今まで以上に嫌われているんだぞ。

「違うよ!事実だよ。ノアディア様がお婿さんでライ君はお嫁さん。オッケー?」

「は!?番って恋人とかって意味じゃないのかよ!?しかも俺が嫁なのか!?・・・笑わせようとするならもっと他の話題にしてくれ。」

「誰が誰のお嫁さんなのですか?」

俺が驚いて大騒ぎしていると、胡散臭い笑顔をしたノアディアが隣の席に座ってきた。
威圧感が凄まじいせいか、瓶底メガネ少女はプルプルと震え出した。恐怖したからか鼻血まで出してやがる。大丈夫かコイツ。

「い、いえっ!失礼しましたっ。私は食べ終わったので後はごゆっくりぃぃいいい!」

と騒ぎながら食堂から出ていく。って、お、おい待て!見捨てる気だな!
俺も急いで席を立とうとしたが、呆気なくノアディアに捕まってしまった。

「まだ、残っていますよ?」

「うぐ・・・はい。」

食べ物に罪はない・・・確かにこのまま部屋に戻れないな。
観念して席に座り直し、残りの朝食を食べる。どうしてこんな時に限ってご飯大盛りにしちゃったかなぁ、俺。

「それで、誰が誰のお嫁さんになるんですか?」

「あー、いや、その。」

どう説明すればいいのか分からず、はぐらかそうとするが上手いこと言葉が出てこない。

「ライ・・・婚約者でもできたのですか?」

「いや、そんなものはいなくて。」

「では先程の発言は何だったのですか?」

「だ、だから、その。」

「ちゃんと教えて下さいね?」

引き攣る笑顔でこちらを見ている。俺が答えるまで意地でも居座り何度も質問してくる。鬼かよ。
ありのままを離すしかないかと意を決して口を開く。

「だから、あのメガネ女の冗談なんだけどさ、俺がノアディアのお嫁さんだとか言ってきて・・・。」

つい言葉尻が小さくなってしまう。新手の羞恥プレイをされている気分でいたたまれない。
顔に熱が集まり、視線をつい逸らしてしまう。

「?」

ノアディアは不思議そうに見つめてくる。
は?もしかして今の聞こえなかったのか!?

「だ、か、ら!!俺はお前のお嫁さん!!!」

あ、間違えた。

「!!??」

「違う!そうさっきの女が勝手に言ってただけだから!俺もう部屋に戻るからな!」

残った朝食を瞬時に完食し、急いで自室に戻る。
やっぱりノアディアは俺のことを弄ぶくらい嫌っているのだろう。そうに違いない・・・。
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